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選出理由①城定秀夫


デコトラギャル3
『デコトラ☆ギャル奈美』

今さらですが、前々項2008年日本映画ベストテン、のつづきから、急ぎ足で再開します。

去年、2008年は、自分が物心ついてから映画をそれなりに観つづけてきた人生の時間のなかで、最も“日本映画”への愛情が薄れてしまっている、そう感じられた一年でした。
日本映画イコール観るに値しないモノ、という(80年代後半から90年代にかけての)風潮のなかで青春期というか観客としての人格形成期を過ごしてきた自分にとって、ここ数年の、邦高洋低というある種の「日本映画の活況」、「日本映画」が無益な抵抗感を持たれることなくごくスムーズに一般観客と遭遇する環境、その作品群がノーマルな市民権を獲得するという状況は、見果てぬ夢として漠然と夢見ていた世界でした。しかしいざ、じっさいにその世界が訪れてみたとき、現実のあまりの荒涼とした有様に、白々しい気分、絶望感を抱かずにはいられませんでした。
こんな貧しい風景が、ありうるかもしれない希望の未来ではなかった、これがゴールや活況だというならば、そのまま滅んでくれた方がよかった、そんな気分。

その荒涼とおもう内実についていちいちあげつらう気力は今ありませんが、結局のところ、テレビ局の広告収入の大幅減少に伴う映画会社化や都市計画の変転によるシネコンの隆盛といった外部的環境的な変化、あるいはいわゆる「J回帰」的な社会的な潮流によって押し上げられるようにして「活況」化したに過ぎない「日本映画」は、私たちがこれまで知っていた「現代の日本に存在するしかない、みっともなさを、否応なしに引き受けた日本映画」とは異なり、滑らかな表皮を纏い退屈を隠蔽し、「経験」を疎外することで反射的な「消費」を推奨しているかのように映る。そこではあらかじめ、パターン化されたバリエーションの感情換気作用(涙する、笑う、共感する等)や定型化された感想素や批評素が周到にあるいは短絡的に前もって用意され、観客はそのいずれかを選択する作業だけで各々の望む自分のキャラ設定への見せカード(感受性の豊かな自分、冴えてる自分、‥)を入手することが出来る。その経緯を「感じること」「考えること」等の「経験」を通過したと錯覚できるという安価でストレスの少ない「消費」コンテンツとしての商品=「日本映画」。
(そこでの消費のされかたの貧困ぶりに苛立つ高橋洋は、「観客が求める審美」「現代映画において観客に支配的になりつつある画面や音のもっともらしい審美眼」を仮想敵としているようです。)

その圧倒的な現前ぶりに、「みっともなく」、「貧しい」“日本映画”は、マスを支配する観客層にはそもそも「視えないもの」でしかなく、カウンターとしての存在意義すら失い、かつての氷河期以上に作品的交通を断たれた絶望的な状況に追い込まれているうえに、もう二度と打順もまわってこないだろうとも感じられます。

なるほど、たとえば、『デトロイト・メタル・シティ』は比較的面白いし、たしかに、『おくりびと』は比較的恥ずかしくない作品的クオリティーを有している、でしょう。しかし、この程度の「面白さ」や「素晴らしさ」は、ある一定量のボリュームをもつ人格類型や文化圏にじゅうぶんに依拠し、誰もが「事前イメージの追認作業」を人格への脅威にさらされることなく享受できるものであって、ここでの「映画」は、たんに文化的なコンテンツのひとつに過ぎないのではないでしょうか。

アカデミー賞受賞と某誌ワーストワン選出などによって、様々な話題を周囲に提供した『おくりびと』は、否定派にさえ「確かに優れた映画だが、しかし問題がある」といった論調で論難されてたわけですが、自分の端的な感想をいえば、あまりの図式性に、たんに2時間くらいのまとまりのいい映像コンテンツ、くらいにしか思えなかった。
死/生、都会/田舎、死/セックス、父の死/子の誕生、芸術に奉仕する仕事/食うための仕事、といった眼をむくほどに図式的な要素がこれ以上ないくらいに露骨に(しかし品よく抑制されたうえで)分かりやすく列挙され、いいぐあいにバランスよく配分される。そして、そこであらわれる「人生の断片」は、長い人生の一瞬を切り取ったものではなく、この2時間の上映時間のなかだけに用意された、物語に奉仕するために存在を与えられただけの人間の時間。『おくりびと』の登場人物たちは、この2時間のためだけにそれらしく“生きているふうに装わされている”。ラストの石ころの扱いがその最も顕著な一例ですが、あるいはまた、本木雅弘の新たな職業に対する周囲の画一的な否定的反応がやがてこれまた画一的に肯定されてゆくのを、寒々しさを感じずに観つづけることは残念ながら困難でした。
この映画が、ミニシアターでやるようなヨーロッパ小国の無名監督の映画か何かだったとしたら、悪くはないけど、ちょっと図式的すぎるネ、というのが、ごくふつうの反応なんじゃないかと思うのですが‥。

『おくりびと』での、死に接したあとのモックンが広末に性的な衝動をぶつける展開のあまりの図式性に白々しく感じる気持ちを禁じえずに、薄ら笑いまで浮かべてしまっていたのですが、しかし、同じような、①『デコトラ☆ギャル奈美』での葬式後のセックス場面には白けずにグッときた、というのは、そこにいかなる違いがあるというのでしょうか。

城定秀夫作品は、高橋洋のいう「もっともらしい審美」などに与しない。なんとなくそうおもえる「リアル」などに頼ろうとしない。『デコトラ☆ギャル奈美』は“ふうを装う”ことなどせず、たかだか75分でしかない人生の時間も、嘘でしかない物語の設定も、エモーションを作動させるには図式的たらざずを得ないということも隠蔽せずに(かといってサブカル的エクスキューズのもつ自閉的定形化にも逃げず)、積極的にフィクションであることに(「あえて」と斜に構えることさえなく)大まじめに相対してゆく。そうしてそこでは、演技力の乏しさも、撮影環境の貧困さも、「みっともなさ」を引き受けたことからくる清々しい「豊かさ」に反転する。武装解除された。泣いた。吉沢明歩の、大声で叫んでいるがぜんぜん声が出ていないさまやムリヤリな荒くれ者ぶりも、その不器用な必死さが、「漠然と信じられているリアルな表現」よりもかえってエモーションを沸き立たせる。そうして「たかだか」な貧しい世界での「必死さ」が、“さびしさ”として、セックスの「必然」を招き寄せる。「貧しい世界で夢見られる、ささやかな願い」を、きちんと、切なさを伴って飛躍的に召喚する。
吉沢明歩をめぐる、吉岡睦雄(ジョージョー映画の吉岡睦雄はいつも好きだ)や今野梨乃らの愚かな人物像は、山下敦弘の諸作品や入江悠監督『SRサイタマノラッパー』(これらの作品は「現在支配的なもっともらしい審美」のサブカル文化圏版を体現しています)の愚かな人物像が依拠する「もっともらしいリアリズム」が「あるある」的共感に帰着する(最終的には「事前イメージの追認」に帰結する)のに対して、「愚かさ」「まっすぐさ」をフィクショナルに“つよく”体現する。このエモーションの強度は、特定の文化圏の審美/リアルを通過せずにもたらされるため、中途でのガジェット化/見せカード化への変質を被らずに、「カルト」として所を得るという自己実現ゲームにも堕ちないという表現上の誠実さと引き換えに、“冴えない”“ストレートな”印象をもたらします。そのことからくる“不幸”を、ことさら感じてもいないようなのが城定映画の楽天性でしょうか。(『ホームレスが中学生』も、いまどきな「審美/リアル」からの視線では、今作でのホームレスの扱いなど、まるで理解できないでしょう。)
『デコトラ☆ギャル奈美』は勿論、『ガチバン』(続編の元木隆史版は描写のクオリティーは上がったがまるで面白くない)や『ホームレスが中学生』にもみられた、クライマックスの祝祭ぶりに接すると、あんなに待っていた筈の女池充の映画を、もうそんなに待望していない自分に気付く。毎度おなじみの、たて笛や安いオルガンみたいな音楽も、洗練された「審美」ではなく、「情動」を発動させる。「周到さ」からくる説得的表現ではなく、感情の“ほんとう”と“ほんとう”とを綻びながらも繋いでゆくエモーションの強度へ。そのために「バカっぽく」、「みっともなく」、「貧しく」みえることを恐れない。そのようにして、類い稀なほどの清潔さが生じる。

しかしそれだけに、肝心の新東宝作品、『妖女伝説セイレーンX 魔性の誘惑』が今ひとつだったことは、たいへん残念でした。『どれいちゃんとごしゅじんさまくん』などにも見られる、ジョージョー映画の主要イメージのひとつである“むっちりした太股と、チラチラとのぞく白い下着からにおいたつようなエロへの偏愛”についても、色々好意的に言いたい気持ちもありますが、今はここで終わります。

(つづく)
次項予定:『実録・連合赤軍』『岡山の娘』など

(→②柳下毅一郎1につづく)

関連記事:2008年日本映画ベストテン
      ②柳下毅一郎1
      ②柳下毅一郎2

theme : 日本映画
genre : 映画

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