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『岡山の娘』へ

20081205230910
岡山ミニみやげ


12月2日(火)

『岡山の娘』を観るために、上映館・ポレポレ東中野のある東中野駅で降りる。『岡山の娘』で福間健二がある種の下敷きにしたという増村保造監督『青空娘』(しかし、増村作品でも、よりによって『青空娘』にインスパイアされるというのがまずスゴいが‥)でも、確か若尾文子が慕う恩師の先生・菅原謙二が下宿していた場所として東中野が登場してたという奇妙な符合がありますが、『青空娘』で映る東中野駅の外観の構造は、現在のものそのままに、しかし露骨な木造建築物かつ赤茶けたトタン屋根だった、ということが、50年の歳月があるとはいえ何だか信じられない。

増村監督第二作『青空娘』(57)は、増村保造と若尾文子との記念すべき初コンビ作であるとともに、天才脚本家・白坂依志夫との初コンビ作でもあった。白坂氏は、大映の新進監督であった増村保造のこの第二作を手がけるのとほぼ平行するようにして、(『映画芸術』最新号では追悼特集のあった)金子正且がプロデューサーを担当した東宝のやはり新進監督であった岡本喜八監督のデビュー作『結婚のすべて』(58)の脚本も担当していました。で、桂千穂による『シナリオ』誌インタビューで、白坂氏は当時の状況を以下のように回想していました。白坂氏は文章も面白いですけど(『人間万華鏡』!前述『映画芸術』最新号で、新連載として『続・人間万華鏡』が始まった!)、喋りもイイですね。

〈桂 (略)増村保造さんとは、岡本喜八さんとどっちが先だったんですか。
白坂 喜八ちゃんとダブッて『青空娘』(57年)をやったんです。『青空娘』も最初は田中(重雄)さんかなんかが撮るんだろうと思って、いい加減に書いてたら、『くちづけ』(57年・増村保造監督・舟橋和郎脚本)という映画がもの凄いという批評が出て、藤井(浩明プロデューサー)さんから電話がかかってきて「大変だよ君、ちゃんと書いてくれなきゃ」って(笑)。増村さんが監督するというので、その晩泡くって『くちづけ』を見に行ったんですが、たまげましたね。これはほんとに大変だ、全部書き直さないといけないって(笑)。(略)増村さん、原作が源氏鶏太なんてバカにしてますからね。ただベタベタ泣かせるのは止めよう、とにかく三百五十枚書いてくれって言うんですよ。『くちづけ』は二百三十枚で、六千フィートしかない、あとで足りないって大騒ぎしたんで、どうしても三百五十枚ぐらいないと一時間四十分にならないって言うんです。しょうがないと思って書きましたけど(笑)。(略)出来ると増村さんは、意見を聞きに行きましょうって市川コンさんの所に行くんです。市川さんの家で市川さんはワァワァと言ってくれて。「白坂くん、こんな(芸術的な)いいの書いてもアカンで、お客はやっぱり泣きたいんだから」って(略)おっしゃるんですよ。まず普通にオーソドックスに撮って、お客を入れて、それからキバをむいて勝負するもんだって、親切に。
嫌だな、じゃまたこれを直すのかと思って帰りに、(市川監督のアドバイスを)みんな入れるんですかって増村さんに聞いたら、「ひとつも入れません、全部あの逆を行きましょう」って。なるほど、タダのネズミじゃないと思いましたね。〉

この後、つづく『暖流』(57)でも同じように市川宅に行き、お伺いしては、また「全部無視しましょう」と増村。なんというか、やっぱりタダ者じゃない神経の太さ‥。

で、そのように毅然とアドバイスを容れなかったらしいのだけれど、本編のラストシーンでの海辺における若尾文子と川崎敬三のやりとり、よしじゃあ青空にサヨナラだ!さよ~~なら~~!サヨ~~ナラ~~!というアホっぽいくだりが、予告編では、よしじゃあ青空さんコンニチワだ!青空さ~~ん、コ~ンニ~チ~ワ~~!‥という、こちらも更にアホっぽいが、間逆のバージョンの台詞となっていましたが、意外とふわふわしてたんだろうか?どっちが脚本通りなんだろう?

山根貞男の増村保造論とかが頭にあって、増村映画といえば海の広がりや水平線や空が画面から駆逐されているというイメージに支配されていましたが、実際に『青空娘』をみなおしてみると、まあ題材やテイストもあるのでしょうが、画面いっぱいにひろがる空や壮大な水平線や広大な海がバンバン平気で出てくるので虚を突かれます。
同じように空や海や水平線がその映画からは排除されがちで、垂直方向に設計された演出や俯瞰撮影が印象的な映画作家といえばすぐフランソワ・トリュフォーが思い出されますし、『恋のエチュード』や『アデルの恋の物語』なんかはまるで増村保造の映画みたいだとおもう。その増村映画『青空娘』では、生き別れた母との再会が、若尾文子が高く高くのぼってゆく階段の先に用意されていたり、ラストシーン、海に臨む急な斜面における年齢差によって振り分けられた高低差のある人物配置など、増村保造のこの初期作品もトリュフォー映画との親和性を感じさせなくもない。『くちづけ』の瑞々しさなんかも、まさに初期ヌーヴェルヴァーグっぽい‥。

‥とつらつら連想してくると、また増村/トリュフォーのどうでもいいかすかな符合を思いだす、『くちづけ』をはじめとして、『暖流』、『氷壁』(58)『巨人と玩具』(58)『不敵な男』(58)『親不孝通り』(58)と、増村映画の最初期を彩った大映スターの野添ひとみがカンヌ映画祭に出席したとき、あのジャン=ピエール・レオーが彼女に一目惚れしてしまって、〈何処へ行くにも付いてまわり、いよいよ彼女が日本に帰る日になると、飛行場に薔薇の花束を持って見送りに来て眼にいっぱい涙を溜めていた〉という微笑ましいゴシップが当時あったらしい。

今日は体が重く、頭が痛く精神がドンヨリ濁ってる。電車の座席でずっと頭や首をマッサージしていたけど頭痛は去らない。正直、映画を観る体調じゃないけど他の日はもうノーチャンス。眠気防止にとコンビニで飴とコーヒー牛乳を買う。

観るまえの情報は極力シャットアウトしているので、『映画芸術』425号『シナリオ』12月号『キネマ旬報』11月下旬号は買ったがまだ『岡山の娘』関連の記事は読んでいなくて、情報は『岡山の娘』公式ブログからのみ得ている。ブログで福間氏がマイリー・サイラスのPVに言及していて、趣味あうなあ~とおもう。映画雑誌の他の記事をパラパラ読んでいて、目につくのは、キネ旬に載る映画批評群の質のヒドさ。「読者の映画評」のレベルの低さも犯罪的。『シナリオ』巻末の座談会での〈今の人はずるくて、映画評論家とは名乗らないで、映画ライターとか、ナビゲーターとかいろんな言い方をする〉という荒井発言ともシンクロする、逃げてる発言や記事ばっかりでウンザリさせられる。

ポレポレ東中野、地下2階の劇場にむかう階段をおりる。〈毎日先着15名様に「岡山ミニみやげ」プレゼント〉という話で、どうせ行くなら是非ゲットしたいと思っていたが、中野で中央線から総武線じゃなくて東西線に間違えて乗りかえてしまい痛いタイムロス。もうムリだなと緊張の糸が切れた状態だったのが、階段をおりてみると案外人はまばらで、これならもしかしてと先に整理券もらいにカウンターに並ぶとギリギリ整理番号14番で無事〈岡山ミニみやげ〉ゲット。紙製の、お手玉みたいな小箱にはいった〈備前名物・大手まんぢゅう〉なる小さなお饅頭で、キビダンゴじゃなかった。

無事整理番号とミニみやげを得て、チラシのある階段/踊場ゾーンへ引き返しチラシ漁り。園子温監督『愛のむきだし』、無事に4時間バージョンでの公開となるようで、よかったよかった。
このゾーンは喫煙所でもあって、チラシ漁りするのもけっこう煙くて、体調悪い今は地味にキツい。
と、ゾーンの中間地点、地下1階部分の小さなスペースで、福間監督が瀬々監督(今日のトークゲスト)と再会の挨拶をしているのが目にはいる。福間氏は瀬々監督にそばにいた『岡山の娘』関係者らしき若い(?)のを紹介していた。瀬々敬久の顔ってなんかいつも忘れていて、いざ見るといつもああそうだったと思いだす。

開場、いつも通り最前列に陣取る。入りは30人程度で、多いんだか少ないんだか‥感覚としては少ないなと感じる。『キネ旬』『シナリオ』『映芸』の三大(?)メジャー誌(?)にけっこうちゃんと、小特集的にはとりあげられていてのこの入りは寂しい。映画のウリが“福間健二”しかないので、福間健二を知らないひとにはぜんぜんピンと来ないのだろうか。
年齢層は30代、40代、50代が中心といったところで、男女比は8:2から9:1で、圧倒的に男性が多い。スタッフや関係者が紛れている可能性もあるから、ヘタしたら純粋な女性観客は1人いるかいないかくらいかも知れない。
観客の全体の印象は、華やかさもないが、生活や仕事に埋没しているわけでもなく、オタク的な老いかた(老いなさ?)もしておらず、マッチョにも、スノッブなインテリ然とした自己愛にも埋没できない、微妙な年齢の重ねかたをしてきた人々という感じ。このなかでは自分はだいぶ若いほうになりそうで、学生風がぜんぜんいないのが予想外だ。若いの世代にむけて作っているはずの映画なのにこの客層だと、軽い絶望感がある。

壇上に椅子がふたつ。21時ジャスト、スタッフに呼び込まれて福間健二と瀬々敬久がステージにあがる。瀬々監督はふんぞり返った座り方。

トークショーのあらかたの詳細は『岡山の娘』公式ブログにアップされています。無くなっちゃわないとも限らないので以下に引用しておきます。

福間監督の「映画に引き寄せられては引き離されてきた」ここまでの人生で、90年代初めに強烈に「引き寄せられた」監督である。95年の『急にたどりついてしまう』では、瀬々監督がプロデューサーを務めた。
「『岡山の娘』は前作より若返ってる。むちゃしてるというか……。ああ、福間さんはこういう映画を撮りたかったんだなあと思いましたよ」
と瀬々監督はまず感想を語った。
そして「いちおう家族をテーマにしてるわけだけど、何かあったんですか。いま、黒沢清も是枝裕和も橋口亮輔も家族を撮るわけで、福間さんもブームに乗ったのかなって」と笑わせた。
「そんなことはなくて、キアロスタミ的に自分の分身をつくって、岡山に帰ってゆくことを考えたんだ。結果的に、親子の話になってよかったと思ってる」と福間監督。
具体的には、かつて福間監督が5年間暮らした岡山に、もし自分の娘がいたらどうしただろう、と考えるところから『岡山の娘』の大筋が出来ていったという話は、いろんな場面で語られている。
つきあいの長い福間監督と瀬々監督だが、どういうわけか、このふたりの会話は交わりそうで、実はちっとも成立していないようにもみえる……。
『急にたどりついてしまう』の製作過程はどんなだったのだろうと、余計なことを想像していると、瀬々監督の唐突な大声。
「福間さんのプラス思考は、13年たっても変わらないですねえ」
「えー!」
「僕なんか、撮るたびに絶望的になるのに、ほんと前向きですねー。ポジティブ・シンキング!」
福間監督、少々うろたえながら、瀬々監督に新作の宣伝をうながして、トークを終えた。


で、そこで書かれていない発言等は以下のようなものでした。

○トークの始まり方の毎回のパターンとして、ゲストとの関わりを述べて、助けられたり導かれたりしたことへの感謝を述べるというパターンが出来上がりつつあります。瀬々監督とは(『ピンク・ヌーヴェルヴァーグ』&『急にたどりついてしまう』制作による接近の経緯)で、ありがとうとの弁。

○自分で映画を撮るとなったとき、瀬々さんも先行世代をある種の仮想敵にしたように、いまおか(しんじ)や女池(充)は瀬々さんがいて、その影響下でどうとっていくのかと道を模索したと思うが、自分も瀬々映画に強い影響を受けて(『急に~』時)そのうえでどう撮るべきか考えた。

○(『急に~』はけっこうかっちりしてたけど今回は壊れてて、若返ってるといわれて)『急に~』は初めてだからちゃんとしたものをやろう、まずは映画をしっかりやろうという意識があった

○『急に~』の現場も大変だった。ちょうどオウムの例の事件があって、スタッフキャストがなかなか集合出来ず、撮影に支障をきたしそうだった。

○『急に~』を撮っていた頃様々な事件が起きたが、結局それはそれとして映画制作ではその時代性には接続しなかった、そのことがこの映画が時代を生きていないものにしてしまったんじゃないかと未だに気がかり。それらの事件を無視するなら無視するで、はっきりした態度を持って制作するべきだったんじゃないか。ラッシュをみて絶望的なきぶんになったが、自分もラッシュをみたときはそうだよというセンパイの言葉に救われた。

○荒井晴彦が『身も心も』を撮るまえに福間さんの(『急に~』の)現場を訪れ観察、これならオレにも出来るかなと勇気づけられたと言ってたというイヤミな言いっぷりの瀬々に、そうなんですひとに勇気を与えられたらいいな~とおもって作ってますからとかテキトーな返しをする福間。

○『急に~』を撮ったあと、いろいろなことにまぎれて撮るということから後退していってしまったのは、撮るべき、信じるべき、語るべき物語を見つけられなかったから。僕はそれまでキアロスタミはあんまり好きじゃなかったんだけれども、授業でキアロスタミの映画を学生にみせて、自分らしき主人公の映画監督を役者にやらせて実話らしい話を撮る。これを、岡山時代に娘が生まれていたことにしたら出来るんじゃないかと、そこに縋った。

○『岡山の娘』は童貞的な映画、裸も絡みもないがその制約のなかで童貞的に撮った、自分も女の子をみたらエロい気持ちが湧くわけだし

○(客席を見回して)みたところ、これがどんな映画か、(福間がどんな人間か)、あらかじめ用意してきたようなひとが多そうですね。
いままでにない映画を撮りたいとおもって撮った。今撮る映画ならどこか今の時代と接続していないといけない。そう考えて撮った。だから若いひとに観てもらいたいし、映画を志す若い映画作家の卵にみてもらいたい‥(客席を見回して)若いひとは来てないみたいだけど‥(ゼゼ、僕が観たときは5人位しかいなかったとフォロー(?)、やりとりの結果それは9人の日だったと判明)

‥メイケだトシキだ七福神だいう固有名詞の説明がなく話がすすんでゆくが、それでいいのかな?『感染列島』と(性格の悪い)僕(ゼゼ)は別人格ですので、と『感染~』を弁護兼宣伝してトークは終了。両監督が退場して上映開始。

(つづく)

関連記事:近況?
       映画『岡山の娘』その1
関連リンク:『岡山の娘』公式ブログ

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