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追記:北野武の修正癖?

なんだか前項は『映画崩壊前夜』本体とはあまり関係ない話ばかりして終わってしまいましたが、考えたら映画についての雑多な文章を集めた蓮實重彦の映画本について、新刊とはいえ今さら大して言うべきこともない気もします。

さて、蓮實重彦がたけし映画評価について小細工じみた歴史修正を加えていたという話をしましたが、そういえばたけし=北野武も、映画についての言説ではかつてそれらとどこか似たような修正を施しておりました。そのことが、どこか自分がたけし映画への信頼を曇らせていったことの一因ともなっていた、と感じられます。その例を2つほど以下にあげようと思います。
(ただし以下の話は、原典が古い週刊誌だったりするため手元に資料がなく、自分の記憶に依るものなので資料性や引用というか言い回しなどはアイマイ。気になるかたは国会図書館等で確かめていただきたいと思います。)

今はなき『週刊テーミス』誌に90年7月18日号~91年7月17日号まで映画カントク・たけしによる映画評が連載されていました。北野武的には、第2作『3ー4x 10月』~第3作『あの夏、いちばん静かな海。』というイケイケな時期にあたる。これは『仁義なき映画論』(単行本奥付は91年12月)としてのちに一冊にまとめられましたが(この有りがちな映画本は、平易な語り口で精緻かつ正確な評価を下してゆくなかなかに侮れないもので、松本人志のアホみたいな映画批評などは比較にならない類のもの。中野翠あたりがウカウカできないレベル?)、連載時はたしか違ったタイトルだったと思うが今は思い出せません。

で、単行本化にあたって、当初は別々の記事だった『八月の狂詩曲』や『真夏の地球』が他記事と統合されてスリム化していたのは別にいいとして、問題なのは載録が見送られた回が幾つかあるということで、そのセレクトから漏れたというのがアキ・カウリスマキ監督『コントラクト・キラー』やセルゲイ・パラジャーノフ監督『ざくろの色』といった優れた作品群で、しかしこの連載では前者は確かギャグが冴えねえとかセンスが悪いとか、後者がセゾンのCMみたいなもんで大したもんじゃないとか、貶しというか掃いて捨てていたように記憶しています。

それを単行本化するさいに、『!(アイ・オー)』などのマルでもバツでもどうでもいいような作品をとりあげた、それこそどーでもいいような回は収録しているのに、パラジャーノフやカウリスマキの回はヤメる、という判断に至ったのは、おそらく誰か周囲のブレーンで映画に詳しい者が、「たけしさん、スコセッシならともかく、パラジャーノフやカウリスマキの価値を見定められなかった文章を単行本として後世に残すと、のちのち末永く嘲笑の対象になりますよ、載せるのはおやめなさい」的なことを進言し、たけしのほうも彼の言うことを信頼していて従う。そのような背景があったのではないか。それが『HANAーBI』あたりで「二人目の(実質的)監督」とも言われたりした森プロデューサーなのか、それとも「スコセッシはともかく、パラジャーノフやカウリスマキがダメっていうのはちょっと」といかにも言いそうなあの人なのか‥。しかし、それが誰であろうとも、そういうチンケな隠蔽を経て「映画的教養はないが映画が本質的にワカッてる映画監督」像をつくりあげようとしているかに見える北野武監督の周囲に漂う空気には、“実”より“名”をとるような、俗物的な処世術を思わせるものがあって、なんだかな~と失望感がなくもなかった。たけしほどの表現者が、己の審美眼や倫理観を世間や特定の文化圏の評判に迎合してどうするんだと憤るのは、青い意見なのだろうか。

もしかしてたけしは抜きん出た才能をもつ表現者として単純に勝負するよりも、自己アピールが巧みで世渡り上手な計算君として、映画に携わっていこうというスタンスに移行してゆくんじゃないか。そんなかすかに芽生えた不信感が確信にかわったのは、次のような矛盾する2つの発言によってでした。共にたぶん週刊誌あたりでの発言だったと思いますが、確証はありません。

ひとつは『ソナチネ』(93)が公開され、ひとしきり(概ね高評価な)批評やら評判が出揃ったあとでの発言で、(批評家ってもんは何もわかっちゃいないね。みんな『ソナチネ』を最高傑作だの何だのと持ち上げるけど、オイラに言わせりゃ『ソナチネ』は全然ダメ、半分くらいしか上手くいってない。それを全肯定で持ち上げられてもなぁ)というふうなかんじに、批評や反応に対して侮蔑的な気分をぶつけていたし、『ソナチネ』の出来上がりにもガッカリして幾分恥じているようでもあった。この時のたけしにとって、自分のなかでいちばん良かった『3ー4x 10月』(90)の沖縄パートのイメージに『ソナチネ』は全然及ばなかった、という認識であったよう。

それが、『HANAーBI』(98)でヴェネチア国際映画祭グランプリという栄冠を得、国内外でそれこそ〈名〉を成したときの発言(週刊誌か何かでの、北野武成功ヒストリー的な記事?)では、何だかその時言っていた認識が無かったものとなっていて、愕然とした。それは大体(オイラは『ソナチネ』を世に問うたとき、この映画で世界の映画の最先端に並んだ、そう思った。けど『HANAーBI』を撮って&発表してみて、まだまだ(自分の表現の高みの)先はあったんだって分かった)というふうな内容で、『ソナチネ』は上手くいかなかったし後退してしまったなという当時の自己認識が、国内外の高い『ソナチネ』評価に引っ張られるようにして消えていってしまった。
映画監督の仕事とは「OK」か「NG」かを決めることだ、という言葉がありますが、この「行け」と「待て」の峻別を、感性や論理や倫理や人間性、それこそ才能としかいいようのないものによって決断する能力(とは、要するに「魅力」のことでもある)を有するのが映画監督という存在のもつスキルであるなら、『ソナチネ』の価値判断をいつの間にやら外部に委託してしまい、『HANAーBI』のゼロ号試写あたりでは煮え切らない印象をもっていたらしい筈のたけしが、グランプリを得た途端に上記のような言葉を発することで、「映画監督業」の主体を世間的/映画祭文化圏的評価に躊躇なく委託していると示すのは、ある種の職務放棄のあらわれと言えなくもない。『HANAーBI』の段階でのたけしは自分のなかの映画的倫理によって「OK」「NG」を峻別することを止めていて、外部の評価がそれを最終的に決める、というごく通俗的で社会的存在であるような方式を選んでいると言えそうです。「世界的映画作家になる(する)」というたけし・プロジェクトは、孤高で唯一無二な存在として豊かに突出する、という方法ではなく、傾向と対策により予備校的にス
ノッブにおもねったやり方をもって完遂された。


関連記事:蓮實重彦の捏造癖?ーー蓮實重彦『映画崩壊前夜』
       映画『TAKESHIS'』

theme : 映画関連ネタ
genre : 映画

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北野武のこと

読みごたえのあるエントリー、楽しく拝見しました。北野武の映画は僕も好きなので、興味深かったです。個人的に思ったのですが、自らの映画に対する評価は、創っているときと、創り終えたときとでは、違うものだと僕は思います。創っているときの北野武とインタビューを受けている武は別もので、何もそれは、芸術家であれば、誰でも当然のことで、創作時の自分は、消えていってしまうが、かろうじてフィルムに残っている。表現するということは、言葉で語れないから表現しているのであって、芸術家が後から、作品について語っているものは、ひとりの鑑賞者の一意見と思わなければなりませんし、そもそもあてになりません。芸術作品は、常に本人を超えたところがあり、本人にも意識しえないものが出なければ、作品にならないからです。「ソナチネ」はあまりに心象的ですから、(告白ととられないように)ガードとして作品の優劣について語りもしますが、「ソナチネ」の底流にあるものを直感的、感覚的に掴んでいて、表現した人間にとって、全てのインタビューや映画のことなんて、どうでもいい世間話でしかないというところもある。創作者としては、常に自分の表現に葛藤を持っているのは当然のことで、かといって公の場で自分の作品への葛藤を率直に表明するのは、アマチュアのすることであり、それは、もう卒業したのではないでしょうか。
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