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追記:『チー子とカモメ』

チー子とカモメ1
『チー子とカモメ』



(以下、ドラマ『週刊真木よう子』追記→)

⑫『チー子とカモメ』
監督・脚本:三木聡
共演:永作博美、山崎一

最終話、大トリは三木聡作品。どの作品も同じようでいて実は出来不出来の激しい三木聡、今回はどうでしょうか。

スーパー内をねり歩く真木よう子、頭の重さが後ろにかかったヒョコヒョコした妙でみっともない歩き方。近づいたら安く粉っぽい化粧品にむせそう、そんな空気を発散している。「ねるねるねるね」を万引きし、呼び止められる真木、最終話の冒頭が第1話の冒頭と同じシチュエーションでキレイにサンドイッチというのは気が利いてていいかんじ。
その窮地を救うのが、元・お水仲間の永作博美。ふたりとも偶然(?)“愛人”をクビになったばかり、成りゆきから真木の元・愛人に二人して直談判にゆくことになる。そのどーでもいいような小さな小さな珍道中に、どーでもいいような小ネタが散りばめられている格好。
冴えないピーナっぽいというか某モレノにも一瞬みえる真木、永作とコンビだとカツゼツの悪さが目立ち、かつキャラで完全に食われてる。最近好調の永作博美、周囲や環境と微妙にズレてどこか空回りするキャラが十八番になりつつありますが、そのマイペースさの速度感が独特だ。空回りというかマイペースのさじ加減によって、高嶺の花になったり必要以上に虐げられる存在になったりする永作さん、今回はなんとも言えない微妙なハズし方で、それはそれでまた滋味溢れるかんじ。

『週刊真木よう子』においてここまで何話もあったサブカル小ネタ系の短編ですが、この⑫とそれらはどこか違ってるように感じられる。小ネタに対するツッコミの感触がやわらかくて温かいというのもあるのだけれど、そもそも小ネタの噴出してくる源泉がデータベース的にサブカル系アーカイブから召喚されるのではなく、路上、日々の生活、人生の細部からやってくる。たとえバンテリンやねるねるねるねという固有名詞でのくすぐりがあったとしても、生活感情や人生の時間の思い出がそこにはこびりついている。お勉強ともサブカル的文化圏での戯れとも無縁の“生”の感覚が、そのネタにはいつでもつきまとっているのだ。

たとえば『恋泥棒ヨーコ』の小ネタは、結局のところ作り手のセンスや世界観に起因するし、『トラトラトラ』の小ネタは登場人物とは別にあり、そこにあるのは各ネタの優劣だけだ。これらの映像作品では、作品の外側にネタやセンスがあり、それをナイスにデコレーションすることに力が注がれている。
それに対して『チー子とカモメ』でのネタは、登場人物の肌に接するように在り、また、登場人物たちの内側から発信されてくる。彼ら彼女らは、それを言ったりしたりすることで人物像の厚みや温もりや特性を獲得してゆき、また、それらの小ネタに反応することで人間的感情や人間性を提示してゆく。小ネタを通過することで各キャラに人間としてのありようが付加されてゆき、他者や世界との関係性や距離のとりかたも示されてゆく。ここでは小ネタが単なる意匠でもガジェットでもなく、作品を有機的に組織しているのだ。
そうしたなかから、ものごとを深く考えず、中途半端にポジティブに生きる人たちの、冴えないがどこか温かい人生の時間が切り取られて提示される。『時効警察』や『転々』の主人公たちが、作品世界内のヘンな異物や、他者のヘンな発言行動に対して、困惑したり受け入れたり軽く流したりするさまを見続けていくうちに、私たち視聴者や観客は、いつの間にか彼ら彼女らに愛着や愛情を抱いているようになるという作用が、三木聡の作劇には備わっているのだった。(『図鑑に載ってない虫』のいつにないスベり方は、ネタが人物の肌やハートに遂に接触せず、作品の外に留まったことに起因してみえます。)

無意味な会話、あんまり考えてないテキトーな発言が、柔らかい可笑しさを発散するとともにある種の人間性の表現へと結晶する。何かを期待し求めていても、そこまで本気で貪欲にもなれず、人生を闘争しサバイブするにも意志が散漫で弱々しい、そんなたそがれた半端者の「やさしさ」が作品そのものの「やさしさ」にもなっている。愛人契約の切れた真木から山崎一を盗っちゃおうと小狡く思い立つも、萎むようにアッサリ失敗しグダグダになる永作の情けなさは、否定されるものとしてでなくダメ人間の愛しさとしてそのまま肯定される。「あーあ。あーあだよまったく。」という、ラストで真木よう子が発するこれ以上ないくらい無意味で無内容な台詞は、作品/主題をひとつの方向へむけて収束することなく、とっちらかったままに放置しますが、そのベクトルの無さこそが、さまざまなマイノリティをやわらかく包みこみ肯定/許容する、外へとやさしく開かれた窓となる。三木聡作品の懐かしいやさしさとはそのようなものだ、と感じさせられました。
ということで『チー子とカモメ』、『中野の友人』に次ぐシリーズ中第2位の佳品だと判断。30分のうちに、小ネタもじゅうぶん効かせつつ、物語もキチンと語り登場人物たちも愛しいものとして感じさせる。なかなか大変な仕事だと思います。


関連記事:ドラマ『週刊真木よう子』

theme : 週刊真木よう子
genre : テレビ・ラジオ

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