スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

だいすき!!(と、僕の歩く道)

dai_20080320_003.jpg
『だいすき!!』


(~冬ドラ話つづき)

さて、何気にお気に入りの『だいすき!!』です。
福田沙紀の演じた琴音という存在についての話は疑似家族の話と重複しそうなのでそちらにゆずることにして、それ以外でおもったりしたことを言っていこうと思います。

障害者ネタということで、どうしても間近にあった秀作『僕の歩く道』と比較されてしまうかも知れませんし、そうなると正直、『だいすき!!』は作品的にも演技のクオリティとしても幾分旗色が悪いように思えます(障害を単なる萌え要素として悪用した『愛していると言ってくれ』には、勝つ)。

しかし、言ってみれば『僕の歩く道』は、一人の障害者が社会のなかで生きてゆく困難が描かれていたに過ぎなかったとも言えます。そして、そこでの(血族以外での)心の支えとなるキーパーソン・都古ちゃん/香里奈は、ある種天使的人物像であって、演出や演技の卓抜さによって確かな実在感を残しますが、現実的な乗り越えるべき厳しさを考えると、救いの置きどころが甘くなっていたかなという気もします。

『僕の歩く道』は、たとえば動物園の従業員との関係が前進する、その微細な進展の描き方は秀でている反面、親なき後ひとりで生きてゆくことの困難や補助なしでの人との交流についてといった大きなハードルの対処の描き方については、幾分ファンタジーの域に留まったと感じます。

『だいすき!!』での障害者・ゆず/香里奈は、障害を背負ったうえに、妊娠・出産し、子供を育てるという更なる困難に直面する。未来への希望という点では、『14才の母』より過酷なシチュエーションと言えましょう。
その困難の階段の一歩一歩を、鈍重に生真面目に、ある意味、芸もなく正面から描いてゆく。それゆえに一見冴えない風貌のドラマともなりましたが、冴えた風貌、という賞賛を得るためではない『だいすき!!』の作劇には好感を抱きました。「泣かせ」を狙いに狙っていないのもいいですね(もしかしたら、泣かせたいが泣かせる技量がないだけのかも知れませんが‥)。
『だいすき!!』というドラマは確かにそれほど冴えてないかも知れないし、面白いのか面白くないのかもよくわからないし、催涙作用が強力なわけでもない。しかし、『僕の歩く道』が、“ささやかな奇跡”としての小さな飛躍の連鎖で物語がステップを登るというかたちで“傑作感”を得たかわりに固有性のなかに埋没し、社会問題としての広がりが減退して、“愛でる為の作品、偏愛の対象”として消費者に消費される対象と化し、状況突破力を失ったのに対して、鈍重な『だいすき!!』が社会のなかで生きる障害者の問題を一般にひろがる力を『僕~』よりも示す。

確かに『僕~』の自閉症描写にはかなりのリアリティがあったし、草なぎ君の演技も高い達成を示していました。ごく近親に自閉症児のいる自分にも、じゅうぶん納得し満足できる演技なり演出でした。

しかし『僕~』において、草なぎ君演じる大竹さん(テル)と健常者/障害者の境界を越えて交流するのは、都古ちゃん(香里奈)やロードレーサーの浅野和之などの“変わり者”(→ファンタジー)であったり、そうでない者は、後ろめたい過去、後ろめたい現在など陰あるバックボーンを大竹さんの言動行動によって改めて照射されて「浄化される」。そのような関係性によってドラマは世界と大竹さんを繋ぐ。そこには障害者が聖なるものに転化する、なにげに古風な物語装置が働いていたのだった。
清/濁、聖/俗、差別/被差別といった対比を、静謐なリアリズム演出に巧妙に埋め込んだ『僕の歩く道』は、徹底したリアリズムが飛躍のすえ、抽象的・観念的な地点に辿り着く。ミヤコとテルが共有する幼年時の記憶にある風景は、今生のものではないかのような神話的な景色にみえる。〈繋がらないこと〉への不安(リアルな心象)は、原初的神話的な記憶の共有によって、永続的に〈繋がること〉の安心(ファンタジーな心象)にすり替わる。

dai_20080221_002.jpg


『だいすき!!』では、ゆずの娘であるひまわりが、両親の愛の結晶であって永続的な愛に包まれていることの幻想的表現が、ひまわり畑での亡き草介(中村俊介)の現前というかたちで表現されましたが、そこで私たちに印象されるのは、今このとき、満開のひまわり畑も草介も、ここにはないという〈不在〉の強調でした。ただ、(愛が、それによる結晶が)かつては確かにあったのだろうと、幼いひまわりは心に刻む「ことにする」。ファンタジーに荷担して飛躍するのではなく、幻は幻でしかないことを示して、地についた足の置き場は忘れない。
たとえば、ひまわりを通わせることになった保育園で、ゆず/香里奈は他のお母さんたちに拒絶されたりする。図式的な対立と書き割り的な群像がこのようなエピソードを構成し、ゆずの理解者となるMEGUMI(『僕~』でも香里奈の親友でしたね)でさえ、ザックリした役割的な設定しか与えられていない。問題が固有性のなかに埋没してゆかずに社会性(ネタ)のまま留まり、図式的ななかで解決の糸口が探られます。全般、ゆず/香里奈がいかに前向きな努力家であるにしたところで、ゆずのパーソナリティが“奇跡”を呼び起こすのではなく、一障害者とそうでない者との共存が図式的なままではかられる。特殊な能力や(大江健三郎のイーヨーや草なぎ君演じるテルの発するような)飛躍的で核心をつく台詞により状況を突破するのではなく、強い気持ちや強いおもいが人心を動かす凡庸な話に終始する。
しかし障害とともに生きることの困難は、『僕の歩く道』よりも『だいすき!!』にその魂があった。凡庸に終始することの冴えなさに、〈現在〉があるとおもう。(先ほど言ったように)近親に自閉症児がいる関係で、長年様々な障害者と関わりがあり、養護施設での活動等も身近なものとして生きてきた経験でいえば、演技による障害者表現として最上のリアリズムを実現した『僕の歩く道』に比べて、『だいすき!!』のワークセンターに集う障害者たちなどは目も当てられない表現のレベルですが、それでも、障害者とともに生きるという世界は『だいすき!!』の空気のなかに息づいていると感じる。『僕の歩く道』というドラマは、〈障害者〉というパーツをリアルに尊重したうえで為された〈映像作品の創造行為〉の結果であって、テレビのなかにある世界。障害者との日常と、確かに繋がっていると感じられる空気が流れているのは『だいすき!!』のほうだとおもいます。

そこからくる「誠実さ」が、キャスト陣の「(非・性的な)女性的な柔らかさ」と相俟って、独特な「爽やかさ」を視聴者に届ける。いわゆる性的ではない女性性を体現するのは、福原家の香里奈を中心とした家族としての女性たちだけでなく、ワークセンターの紺野まひる等も、恋愛や性を越えたところにある女性性のあたたかさを体現していますし、平岡祐太を筆頭に、パン屋のおじさん、ワークセンターで働いているお兄さんといった男性陣の物腰の柔らかさは、ほとんど女性的だとも映る。そんななか、平岡祐太(家族のために性的闘争から離脱した、脱色された中性ぶり)の恋人として登場した夏梅/臼田あさ美の恋愛に生きる性的な気配は前半、かなりの異物感をドラマに与えていましたが、身なりも構わずワークセンターでの作業に携わるその姿からは、性的な気配が徐々に漂白されてゆき、『だいすき!!』的世界に次第に親和。
(ドラマ『だいすき!!』のイメージ。病院の待合室に置いてある厚紙で出来ている絵本。そこに宿る気分は、貧しさ、優しさ、平和さ、凡庸さ、そして切なさ。『だいすき!!』についておもう時の切なさと、湧いてくる優しい気分は、そのようなイメージとして自分のなかにはあります。)

まえにもたぶん言いましたが、キャストのうち、流石役者だとおもったのは岸本加世子と福田沙紀の『拝啓、父上様』の親子コンビ(ただし、『一瞬の風になれ』の福田沙紀は全然ダメ‥)。逆の意味で気になったのは、保育士役の余貴美子。こんなに一本調子で、大根風味満点の良くない余貴美子を見るのは、初めてというくらい。どうしちゃったんでしょうか‥。
香里奈の演技は、当初“がんばってる香里奈”と度々見えてしまい、痛々しく居心地悪いかんじでしたが、こっちが慣れてきたのか、無事、ゆずにしか見えなくなってきました。イタズラっぽく破顔し、ピンと指を開いた両手で口元を隠す仕草が好き。役者としてではなく人間としてどこか危うい香里奈が、振り切った障害者役を完遂して尚、女性としての魅力や幻想が少しも使い減りしなかったということの幸福感。

(つづく)

dai_20080306_003.jpg

以降予定記事~
○『接吻』
○『Girl's Box/ラバーズ☆ハイ』
○『斉藤さん』&『薔薇のない花屋』&『ハチミツとクローバー』&『未来講師めぐる』&『コスプレ幽霊 紅蓮女』
○島宇宙化と脊髄反射的ドラマ~『一瞬の風になれ』『SP』『正しい王子のつくり方』『チョコミミ』
○疑似家族の問題

theme : テレビドラマ
genre : テレビ・ラジオ

comment

管理者にだけ表示を許可する

09 | 2017/10 | 11
Su Mo Tu We Th Fr Sa
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
プロフィール

ししらいぞう

Author:ししらいぞう



東京在住

調理師のようなことをやっています。

趣味は立ち読み 格闘技観戦 映画観賞

3月生まれO型  

ランキング参加中☆
良かったらクリックをお願いします


ブログランキング・にほんブログ村へ
ブログランキング
ブログ内検索
最近の記事
リスト
最新の記事
カテゴリー
Category Sum
全記事一覧
あいさつ 11
映画紹介(ア行) 21
映画紹介(カ行) 19
映画紹介(サ行) 13
映画紹介(タ行) 15
映画紹介(ナ行) 7
映画紹介 (ハ行) 18
映画紹介(マ行) 9
映画紹介(ヤ行) 7
映画紹介(ラ行) 5
映画紹介(ワ行) 1
観るまえの映画のこと 19
本と映画 22
雑誌と映画 18
その他映画 36
フルモーションレーベル 14
『恋する日曜日』 13
ユーロスペース 5
本・マンガ 40
雑誌 22
ドラマ 60
いろいろなBest10 15
日記 75
作家・監督・俳優・女優 6
舞台・イベント 4
未分類 8
月別アーカイブ
最近のコメント
最近のトラックバック
リンク
YouTubeSEARCH mini
おみくじ

©Plug-in by
FairyDances
★
HeroRisa

ぱたぱたアニメ館
GIFアニメ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。