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ボンビーメン覚え書き

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『貧乏男子 ボンビーメン』
(日本テレビ系、火曜22:00~)
演出:猪俣隆一、吉野洋
脚本:山浦雅大ほか
出演:小栗旬、八嶋智人、山田優、三浦春馬、ユースケ・サンタマリア、仲里依紗、音尾琢真、上地雄輔ほか


○楽天的でお人好し。困っている人が周囲にいると、ほっとけなくて何やかんやと世話を焼いてしまう。付き合いやお誘いには全ていい顔してしまい、人助けにも分を弁えない安請け合いを繰り返し、いつの間にか借金に借金を重ね、その額は膨大な額に膨れ上がっていってしまう。それでも、心配する周囲をよそに、「オカネよりココロ」とのたまい、今一つ反省が感じられない‥。

ボンビーメン=小山一美は、そんな困った男。

そのような甘ったるい人生観で、無事に世の中をわたっていけるわけがない。そこで「ココロよりオカネ」を標榜する、ユースケ・サンタマリア演じる“オムオムさん”なる怪人物が、対比的に配置され、小山一美と衝突することになります。『貧乏男子 ボンビーメン』というドラマはとりあえず、〈金銭優先し感情軽視〉と〈感情優先し金銭軽視〉というふたつの両極端なイデオロギーの覇権争いとして展開されてゆきます。

その意味で、『貧乏男子 ボンビーメン』は、表面にあらわれているかたちはコメディタッチですが、〈お金と、ココロの尊厳〉という問題をめぐる、なかなかに観念的なドラマだと言えると思います。
まだ、第1話あたりは普通のリアリズムの範疇に入るドラマだったものが、2話以降、作劇も演技も舞台も抽象性を増してゆき、演劇的な空間性と観念性を帯びていった。
ことに、白石ちゃん(三浦春馬)の借金を肩代わりして以降は、現実と接点のほとんどないファンタジーな領域へと飛躍(迷走?)してゆき、劇中で八嶋智人と山田優が「ついていけない‥」と呟いたように、ある一定数の視聴者にも同じように呟かせたんじゃないかと危惧していますが‥。


○矢口真里のモッサリした顔の元カレ、というくらいの認識だった小栗旬が、花沢類役でブレイク後、花沢類=王子(『花より男子』)、ヤンキー(『クローズZERO』)、オラニャン(ぎみ?)(『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』)等と、それぞれ異なった“男子の魅力”を次々に制覇し、イケメン・ムーブメントを牽引する俳優になりおおせようとは、だれに想像出来たでしょうか。

そのような“カッコイイ”小栗旬がついに連ドラ初主演の機会を迎えた。今度はどのような種類の男子の“カッコよさ”なり色気なりを提示してくるれるのか、という方向で、視聴者が興味を向けるなか、あらわれた役は‥フェロモンのない雑な風合いの男だった。
髪はモジャモジャ、動作はガサツ、仕草に色気なく声はムダにデカく、ガタイもあるしノリはいいが全般的に未成熟な幼児性が漂う。

ひとそれぞれ、好きずきがあるのだから、そんな小栗くんにもギュッと掴まれる向きもあるのかも知れませんが、まぁ少なくとも、マーケティング的な発想からしてもプロモート的な面からしても、この小栗旬は断然“なし”でNGであって、一本の映画とかならまだしも、連ドラでこの〈女子の求めていないであろう新たな小栗旬像〉を、今・このときにヤルということは、そうとうな冒険で、そうまでしてヤル、それだけの必然性をこの作品に感じて参加して/させていた、ということになります。つまり、より高い視聴率を得たり、より多くの声援を得たり、現在の人気をより長く持続させたり、俳優としてのポジションをより有利に確固たるものにしたりすることが結局の目的となる多くの連ドラと異なる強い意志が、『貧乏男子 ボンビーメン』には働いている、ということになると思います。


○『貧乏男子 ボンビーメン』を何話か観進めてゆくうち、感じた感触は天海祐希主演の『演歌の女王』みたいだなあ、というものでした。

『演歌の女王』も『ボンビーメン』も、どう考えても現在の社会のシステムとは相容れないような、素朴な性善説にしがみついた主人公が、厳しい現実にぶつかりつつもその愚直な人生観を貫いて生きるさまを描く、という共通点をもちます。
しかも、2話3話と話数が進んでいっても、毎度毎度現実の側から手ひどいしっぺ返しを喰らいながら一向に反省も成長もしない、楽観→失敗→楽観→失敗→‥といった無限ループをしつこく描きだす主人公の懲りなさに目眩を覚えて、いったいこの連ドラに「進展」の二文字はあるのだろうか・・と不安になってくるところまで似ています。

『演歌の女王』については既出記事でも言いましたが、性善説を盲信し突き進む主人公・ひまわり(天海祐希)のイデオロギーの帰結は、現実の世界に太刀打ち出来ずに自らの超主観性を増幅させ、現実と遊離する、という苦い結末を導きました。それに対して、『ボンビーメン』/小山の場合、そのイデオロギーが現実世界の袋小路に入り込むと、ドラマの物語世界が都合よく流動してゆく、という甘い作劇に逃げた感がある。何百万、何千万借金を作ってもどこかに返済する救済策が転がっている。どんなに社会不適合な行いを為そうとも、友人は逃げていかず、最後まで「まごころ」は通じる。最終回の様々なエピソードなどはオール最悪で、そこまでの“観念”と“シビアな現実”との闘争の説話を無効にするような雑な決着をつけてしまいました。惜しい。


○主人公・小栗旬・小山一美は、その人物をあらわす固有名詞が定着せずに揺らぐ。
オムオムさんからは「スルテンちゃん」というニックネームを冠され、借金仲間となる八嶋智人や山田優からは主に「あのバカ」「あいつ」「お前」「あんた」と呼ばれ、視聴者からは「ボンビーメン」「小栗旬」と呼ばれる。闘争劇外の周縁人物からは本名で呼ばれるものの、殆ど印象に残らず、その名がオヤマだかコヤマだかも定かじゃないような、不安定な気がしてきます。
この主人公の固有名の“たゆたい”は、交換可能な偶然性を示しているのじゃないか。彼は、私であるかもしれないし、あなたであったかもしれない。確固として私が私であるという断言、それが揺らぐ装置として観念があり、心は大事だ、と感じる私たちが、「彼でない、ということはないかもしれない」という「交通」が、『ボンビーメン』というドラマと私たち視聴者の間を繋ぐ。
金銭は複数のものを繋ぐ交換可能な交通の装置であるし、彼が大切だという“こころ”とやらも、人と人との間の交通として初めて存在する類いのもの。
そしてラスト、形だけながらも、借金の貸し/借りの立場を交換した小栗旬/小山一美/スルテンとユースケ・サンタマリア/オムオム/尾武村賢三郎(小栗→(金による繋がりを指向)→ユースケ)は、感情的立場も交換する(ユースケ→(心による繋がりを指向)→小栗)。図式的すぎて少々ノレないものの、上記のような“交換可能な流動性”を人間社会/関係のシステムとして提示する、そのような作品として『ボンビーメン』を組織してゆく(作り手の)強い意志が終幕まで貫かれたことは、このドラマの志の高さとして評価されるべきことだと思います。


○人間関係が紡がれる、〈交通〉の“場”として、毎度まいど借金仲間たちが巡り合い/集結/離散する場所の設定がユニーク。橋の脇の路上(もしくは橋の上)。コインランドリー。これらは匿名性を帯びた人と人の交通の場という意味指示がある?


○観念に楔をうつ、小栗旬の演技設計。
相手の腕(肩)を思いっきり叩く動作。ふわぁい!!!!と頭に響くような大声での返事。どちらも〈痛み〉として他者に関係をもたらす。

○山田優は舌打ちが似合う。

○八嶋智人の演技はココリコミラクルタイプぽく感じてしまい違和感‥。

○すみれ役の仲里依紗、当初の予定や設計図からドラマがズレていってしまったためか、不要な人物と化してしまい、知名度を飛躍的に上げる大チャンスの筈が残念な結果に‥。

(つづく)

関連記事:ドラマ『演歌の女王』
       ドラマ『花より男子2(リターンズ)』
       ドラマ『花より男子』

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genre : テレビ・ラジオ

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