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伊東美咲と『エジソンの母』

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『エジソンの母』


女優としての伊東美咲は、新たな段階に入った。今期連ドラ、『エジソンの母』をみていて、そう思いました。

1.

『未来講師めぐる』の深田恭子&『エジソンの母』の伊東美咲という、快作『山おんな 壁おんな』コンビが同時期に連ドラ主演で、ともに怒濤のモノローグ攻勢でドラマを独り言(?)(の言葉群)で埋め尽くす圧倒的なさまを優しい気持ちでみつづけながら、妙な感慨を抱いていたのでしたが、そういえば『サプリ』、『山おんな 壁おんな』、そして『エジソンの母』と、伊東美咲の独り言/モノローグ女優化、という性質が定着化しているなあと、遅まきながら意識にとめました。
(『未来講師めぐる』での、深田恭子によるモノローグの奔流は、昨今の吹替ブームなりニコニコ動画のコメント機能なりを思わせる、思考思索よりは瞬間的反射を優先する〈ツッコミ〉の、多重的/短絡的な共有化を体現しているようにも思えます。ツッコミとは、“共有イメージの交感”ともいうべき「強引なムラ社会化」のあらわれ。同じ文化コードを有する者の間で成り立つコミュニケーションはやはり、島宇宙化のひとつの作用でしょうか。)

そもそも最初に違和感を感じた、『サプリ』放映当時に自分が言ったことを以下に繰り返すと、『サプリ』の〈不評の最たる理由は伊東美咲の予想外なほどの魅力のなさではないでしょうか。これまで女優としては非現実的な、ふわふわと浮き世離れしたようなとらえ所のない魅力と色香を発散してきた伊東美咲は、主体/客体の関係としといえば徹底して客体側、つまり(みる側から)主観的に〈みられる者〉としとの魅力を認知されてきました。浮気かつ純真な娘(『タイガー&ドラゴン』)や徹底して男性に都合のいい物分かりのいい女性像(『電車男』)といった、リアリティのないキャラクターを、伊東美咲に演じさせると、みる側から何らかの照射される好都合な想い(こんな女性がいたらいいなとか、こんな女性になりたいとか)を受け止めて肉体化するということが具現化する。〈ウソ〉のリアリティを宿して、自身に常に〈幻想の余白〉を残す。のが、女優・伊東美咲の魅力維持の秘訣であったなら、(略)〈主観的〉人物としてモノローグを多用するしかない『サプリ』の伊東美咲が輝かないのは自明の理〉で、〈伊東美咲の感情の動きは逐一視聴者に開示/共有される
ため、〈幻想〉を感じることができない〉。

というふうに感じたよう。そしてその感じは今も変わらないといえば変わらないのですが、『サプリ』時のように否定的なニュアンスではなく、いまの、魅力的女性とは必ずしも言い難い女優・伊東美咲の“微妙な存在感”を、なんとなく肯定的に受け止めている自分の気持ちに気づきます。

『エジソンの母』は、図らずも、エジソンのように“天才”であるかもしれない少年=はなふさ・けんと(清水優哉)の担任となってしまった女性教師=鮎川規子(伊東美咲)の視点から、小学校の教室で巻き起こる騒動をコメディタッチで描くドラマで、視聴率的にはともかく、内容的にはなかなかの好評をもって迎えられた様子。
日本の学校教育の現在的問題という硬派な主題を、『わたしたちの教科書』や『3年B組金八先生』のようにことさら深刻・高邁にとりたてるのではなく、キッチリと正面から娯楽性で勝負する、そのような姿勢の潔さが爽やかな後味となって、好印象に結びついたのでしょうか。

しかし、ひっかかったのは、松下由樹あたりの演技をホメて伊東美咲の演技はケナす、そのような有りがちな言説がそれなりに幅をきかせてなくもないらしいことで、やれモデルあがりのデクノボウだのルックスだけで感情表現が豊かじゃないだの、なぜか演技についてだけは一家言あるらしい人たちは、モデルあがりの演技をクサすという定型的態度を示すものらしい。

しかし、新劇的な価値基準だけでは捉えきれないものもあると思う。かつては、気持ちよく流れに乗るように、軽やかにそこに存在するだけで輝きを放っていた伊東美咲が、『エジソンの母』においては、立っていても座っていても、人と対面して話しているときも独りで考え事しているときも、どこか居心地悪そうにたどたどしく存在しています。
みる側から照射される願望が〈幻想の余白〉を埋めるようにしてその存在感の輪郭を形づくっていた伊東美咲が、内発的にその存在感の輪郭の〈余白〉を意識や感情で埋めてゆくとき、いったんそれらがどこかに転送されてから、改めて伊東美咲の身体に照射し、転移する感じがある。そのため、外界への反応にいちいち一瞬ずつズレがあり、感情(や演技)も、自分のもの/事でありながらどこかかすかな“他人ごと感”が漂います。

あくまで真面目に真剣に対処しているのに、何かがふわふわしていて輪郭があいまいなギクシャクした感じは、芸能人的(もしくは役者的)自己愛を感じさせず、ただ自分のいる世界に対する真面目かつブサイクな対応をみる者に提示するだけだ。
主演者的ナルシスもバイブレイヤー的ナルシスも感じさせず、“ただそこに存在するだけ”といった類いの佇まいかたもしない、微妙な存在のしかたで〈世界〉に相対する伊東美咲は、自分が輝かないかわりに、彼女のいまいる〈世界〉の、不可思議さ、奇妙さ、温かさ、不条理さ、美しさに、ギクシャクと接してゆく。
ほんの微かな感触の、そのブサイクで誠実な空虚さによる照射は、おっぱいの大きい者が絶対的優勢である世界(『山おんな壁おんな』)や天才少年がその他の児童と共存出来る世界(『エジソンの母』)といった「ごく普通、かつ我々のいる世界とどこかがかすかに違う世界」を「確かに」ひとつの(作品)世界として岐立させる。

世界のすべてのものと比べて、常に若干の温度差がある伊東美咲がはなふさ・けんと君(清水優哉)と接するとき、元恋人の谷原章介と、けんと君の母のあおいさん(坂井真紀)と、他の先生がたや他の保護者のかたがたと接するとき、新たに世界や他人と接触してゆく手触りがある。(メーターを振り切った見事なほどのルーティンが支配していた『山おんな壁おんな』でも、伊東美咲の世界への接しかたが、“びみょうに”確かな手触りをドラマに与えていたと思います。)
人とはすこし違った回路をもつ天才かもしれない少年=他者が、どのようにして、異なる者たちと「人と人の繋がり」を紡げるか、という物語終盤の主題は、以上のような現在の伊東美咲的資質とフィットして、『エジソンの母』を幸福な作品にしているとおもいます。

2.

伊東美咲のことを抜きにしても、『エジソンの母』の卓抜なところは、登場人物それぞれの体温のちがいを感じさせるところだと、少なくとも自分は感じる。変なダウンを羽織って息せききって走りまわり、迷いながらも確信をもって、けんとを信じて強い視線で冬の大気をキラキラと射抜くあおいさん(坂井真紀)をはじめ、谷原章介、伊東美咲、清水優哉らが別々の体温を有し、それぞれ脈打っているとかんじる。『薔薇のない花屋』や『佐々木夫妻~』や『4姉妹~』等々の登場人物たちは、各人の性格設定がちがうだけで体温がいっしょだとおもう。そこが『エジソンの母』の素晴らしさのひとつだとおもう。‥こんな話、どこまでひとがついてくるか不安なところですが‥。

『エジソンの母』は基本、ノリコ先生=伊東美咲の視点で物語が描かれてゆき、そのため、彼女の不安定にふわふわした人や物事への対応ぶりが、“人と接すること”の描出のルーティン化を回避させる。一瞬一瞬の、人や物事へたいすることへの畏怖や違和感が、体温のちがいとしてあらわれて、人と人が共に生きてゆくお話をファンタジーに逃さない。時に雑なセリフや雑な演出(最終回が最も残念でした)があろうとも、肝心なところの把握がなされているのだと感じます。

先ほどの自己愛ついでに言えば、天才?はなふさ・けんと役の清水優哉という子役。この子がまたいいですね。彼の良さは、子役に有りがちなナルシスティックなところが表出していないところ。子役という性質上、チヤホヤされて調子づく驕りがどうしても露わになってしまい、その発声や佇まいに鼻につくモノが漂ってしまう。結果、天才役などやると俗物臭しか漂わない悲惨なことになるのは、子役に限らず失敗例がいくらでも見つかります。
はなふさ君にはその俗物臭が奇跡的に無く、天才にも見えるしバカにも見えるといった、絶妙な存在感と佇まいをキャラクターに定着させていました。演技が上手いとかそういうコマッシャクレタ感じがぜんぜんないのも素敵、フラットな台詞まわしもハマった。

谷原章介、坂井真紀のキャラクターの良さ、醸しだす温度や声音のトーンのいいかんじな様子も素晴らしかったんですが、最後にやはり、あまり誉められなそうな伊東美咲についてもうひとつ絶賛しておきたいとおもいます。(ちなみに、自分は今も昔も伊東美咲のファンだったことはありません。念のため‥)

『山おんな壁おんな』のときは、貧乳属性により必要以上に軽視される、という役柄上のこともあり、フテぎみにぶつぶつ力なく呟く、声のトーンの低さや発声の弱々しさが基調として印象づけられたのでしたが、今作『エジソンの母』における伊東美咲の「声の張らなさかげん」は尋常なレベルではなく、囁き声にすら至らない極限までか細い発声のシーンが頻出。キャラクターの諸属性に還元し納得できる範囲を遥かにこえていると思われます。声帯を振動させずに狂言回しとしての説明的な対話をこなしたりする驚異の演技プラン(?)は、殆ど前衛芸術の域だとおもいますが‥。

(つづく)

theme : エジソンの母
genre : テレビ・ラジオ

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