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ドラマのサブカル化

さて、冬ドラの話のつづきです。

今期、冬ドラマ全般をみていて、まずおおざっぱなところで感じられたのは、“テレビドラマのサブカル化”が飛躍的に・顕著に進んでいる、そのように印象されたことでした。
島田雅彦、三浦俊彦、井口昇、諸星大二郎といった名前が、原作等送り手側の固有名詞として平然とならぶ。たいへんな時代が来たな、とおもう。

テレビドラマのサブカル化は、別段さいきん始まったことではなく、かつて〈今や映画もテレビドラマも漫画も小説も、全部サブカル化した〉と、(『あしたの、喜多善男』の原案となった小説『自由死刑』の書き手でもある)島田雅彦も言っていましたが、そのとき付随していた論旨は、階級等級的な確固とした優位性を他ジャンルに(各カルチャーが)持たない、そのようななかで、各カルチャー独自の優位性の鼓舞(=強度)、ということだったと思います。
つまり、基本の話は東浩紀『動物化するポストモダン』での、ポストモダンの社会構造下での〈ツリー型世界からデータベース型世界へ〉というビジョンと同じものだし、その東浩紀を打倒せんと論陣をはる宇野常寛の提示する〈トーナメント方式からバトルロイヤルへ〉というビジョンも、結局のところ同根です。〈ポストモダン化は大きな物語の衰退を意味する。大きな物語の衰退は、現実認識の多様化を意味する。〉(東浩紀『ゲーム的リアリズムの誕生』)
そのようにして、多くの〈小さな物語〉が絶対的優劣の基準なく並列的に散乱しているという世界像がポストモダンなのだから、その世界では、〈月9〉だの〈トレンディードラマ〉だのといった、テレビドラマ界のピラミッド型価値基準がもう既に無効になっているだろう。皆が皆、話題の、話題だから、同じドラマを集中的に勇んで観る、という状況はとっくのとうに遠い過去のものとなっています。トレンディーな俳優を使って、ゴールデンのいい枠でキャッチーな物語を放映する=視聴率と話題が集中する。近年、そのようには事態がスムーズに進行していないことは、誰の目にも明らかでしょう。

いわゆる〈トレンディドラマ〉が退潮するなか、ドラマのサブカル化は、三谷幸喜、堤幸彦や宮藤官九郎のスター化をもって大衆的には定着化し、オフィスクレッシェンドの演出に代表されるような「これ見よがしの意匠」の称揚とセットで受容されていった。そういう漠然とした印象がまず前段階としてあります。
しかしそれらの/彼らの作品群は、じつにサブカルチャー的風貌をもっていたとはいえ、ある個性的な作風というにとどまり、あくまでメインストリームのなかでのバリエーション。そういう構図があったと思います。

『ケイゾク』や『トリック』のもつ“個性”の有り様は、あくまでメインストリーム中での勝負にみえました。“サブカルふう”ではあっても、『木更津キャッツアイ』等の宮藤官九郎脚本作も三谷幸喜脚本の諸作も、万人に愛されることが可能な、いわば〈大きな物語〉のなかの〈個性〉のひとつ、でした。ようするに、ここではまだテレビドラマは〈島宇宙化〉の前段階の表情をしていた、ということです。

『時効警察』の登場と成功は、真にドラマにサブカル化の波が到来した、と確信させる出来事でした。たとえば『トリック』は、マニアックにみえても「センスのいいヤツ(俺、やお前)なら、分かる」という全方位的に肯定しうる古風な娯楽性を帯びていましたが、『時効警察』の「面白さ」は、「Aには分かるけど、Bにはきっと分からないだろうな」という諦観を伴う。それを「面白さのスケールが小さい」と斬り捨てることは可能でしょうが、『時効警察』の、例えばサブカル誌の象徴的雑誌である『Quick Japan』との親和性をみるに、この平和に閉じた〈サブカルな気分〉は、ポストモダン的な必然であったとも見えます。

先ほどの『ゲーム的リアリズムの誕生』からの引用には続きがあります。
〈ポストモダン化は大きな物語の衰退を意味する。大きな物語の衰退は、現実認識の多様化を意味する。したがって、ポストモダンでは、多くの物語が、現実に依拠するのではなく、ポップカルチャーの記憶から形成される人工環境に依拠することになる。〉

『時効警察』の作者たちの依拠する〈ポップカルチャーの記憶〉を共有しない視聴者は『時効警察』を十全には愉しみ得ないし、ジャニーズのファンでない者は『1ポンドの福音』を充分には愉しめないでしょう。そして、それでもいいと、送り手側も観る側もどこか居直っている。そこに時代の更新がある。

続々と発表されだしている次期連ドラのラインナップに、傑作『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』に触発されたとおぼしき、イケメンらしき男子をゾロゾロと大量に揃えたドラマが乱打されています。ジャニーズにアレルギーがなく、基本的には何でも観る、自分のような人間にも、どう楽しめばいいんだ‥これは流石にキツイな‥と思わせる、そういう閉じた雰囲気が企画段階から漂っていると感じます。

当たり前すぎて言うのもかったるいですが、かつては、ジャニーズ系が主軸を担うドラマであっても、浮動票を得ようという気が制作側に感じられました。観てくれたら面白いと感じさせるぞ、という気概があった。もちろん。

ジャニーズを愛する人々の形成する〈島宇宙〉の外部の者からすると、『1ポンドの福音』での山田涼介の扱いなど寒々しい限りにしかうつらないし、逆にその〈島宇宙〉からみれば、『栞と紙魚子の怪奇事件簿』での前田敦子の扱いには鼻白むでしょう。クオリティやココロザシの比較でいえば『栞と紙魚子~』が遥かに上ですが、おそらく『1ポンドの福音』を応援する者には、そのことからは何の価値も脅威も感じないでしょう。

かくしてここテレビドラマ界にも、各宇宙間でのコミュニケーションを欠く〈島宇宙〉的世界が現出する。そして各々のドラマは、(主に日本の)各種サブカルチャーのもつ表情に酷似したオーラを漂わせています。

ついに地上波に出た、出ない、といったレベルのマイナーなカルチャーが基本的守備範囲の自分からすると、この地上波内での“閉じかた”に、ある種の違和感を感じるし、何か大きな魅惑が欠落している、とおもう。〈島宇宙化〉に伴う“洗練”は、〈地上波〉〈連ドラ〉という“システム”に不可欠の“通俗”の魅惑とは、根本的に相容れないんじゃないか、という疑問があります。

(つづく)

theme : テレビドラマ
genre : テレビ・ラジオ

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