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『映画芸術』422号 2007年日本映画ベストテン&ワーストテン

年に一度の決算号、季刊『映画芸術』422号(2008年冬号)が無事発売されました。注目されるベストテン&ワーストテンは以下の通り。

『映画芸術』誌
(日本映画ベストテン)
①サッド ヴァケイション
②それでもボクはやってない
③天然コケッコー
④魂萌え!
⑤松ヶ根乱射事件
⑥叫
⑦しゃべれども しゃべれども
⑧サイドカーに犬
⑨国道20号線
⑩ジャーマン+雨

(日本映画ワーストテン)
①大日本人
②俺は、君のためにこそ死ににいく
③監督・ばんざい!
④恋空
⑤さくらん
⑥オリヲン座からの招待状
⑦スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ
⑧遠くの空に消えた
⑧どろろ
⑩蒼き狼~地果て海尽きるまで~


今回から映芸名物のベスト&ワースト集計方法が変わった。これまでは、ベストで高得点を重ねようとも、ワーストに挙げられることによって点数を差し引かれるという独自の方式で順位が確定する、ルサンチマンに満ち満ちた映芸らしい集計方法がとられていたのでしたが、〈それを廃止し、それぞれの合計点のみで順位を確定することにいたしました。これは、それぞれの結果を正確に反映させることで、ワーストがベストから点数を差し引くために存在しているのでなく、ベストとワーストのどちらもが等しく意味があるということを強調したいという判断から〉このような方式に変更した、とのこと。
公器より私器、という編集方針というかスタンスを貫いてきた(〈“客観的デナケレバナラヌーーという商業紙神話の渦巻く中で「チンケな客観よりオレの独断!」をキャッチフレーズにしました。また新聞ハ公器デアルーーに対置し、「絶対に私器だ」に私は固執しました”という斎藤龍鳳の言葉を編集者としての頭の片隅に置き〉‥)『映画芸術』の、この今更の“まっとう”な態度は、何かガッカリさせられるものがあります。何をどうとられようと偏屈な性向を崩して欲しくなかった、というのは、自分の父親の世代(荒井晴彦)への、過大な幻想なんでしょうか。
何にしても、これが荒井晴彦による積極的な変更とは思えず、なにか政治的で不透明なものを感じましたが、2007年度に限っていえば仮にワーストによって得票点数をマイナスしたとしてもベスト上位の順位に波乱的な変動はなく、至って平穏なベストテン&ワーストテン。ということは現在、映芸にとって撃つべき敵は映画内には無いということの表れでもありましょう。
表向き活況を呈する日本の映画業界ですが、それ故にかえって絶望的な外的状況が浮き彫りになってきた。短絡していえば結局日本観客の民度の低さという問題に辿り着きますし、ちょっとやそっとでは打開出来そうにない閉塞感がこの問題からは滲む。もはや「映画の問題」は映画の問題ではなくて、社会の問題として対処しなければフォロー出来ない局面に還ってきた。それ故またしても社会学者・宮台真司の登場となり、その注目記事〈討議・2007年の日本映画を総括する 寺脇研×宮台真司×荒井晴彦〉では、座談会を常に負の自分色に染める荒井晴彦らしくなく、大人しく宮台真司の御高説をお伺いするという珍奇な光景が展開されています。

‥とここ数号、どんどん荒井カラーが薄くなることを怪訝なおもいで傍観していたのでしたが、ふと武田俊彦の名前のしたをみるとそこに〈本誌編集長〉の文字が。まさか?と思って慌てて選評欄の荒井晴彦の名前をみるとその下には〈脚本家・本誌発行人〉と書かれていました。僕がボンヤリしているまに、知らないうちに編集長がチェンジしていたのでしょうか?いつから?とバックナンバーを漁る。前号(421号)、420号、419号‥と遡ってゆくが編集長交代の弁等とくに見当たらない。ただし、ここ数号の荒井晴彦の肩書きが単に〈脚本家〉になっている。映芸では〈脚本家・本誌編集長〉との肩書きが通常だったはず‥とみてゆくと、417号(2006年秋号)までは確かに〈脚本家・本誌編集長〉だった。奥付をみるとこの号までは〈編集発行人=荒井晴彦〉とあり、418号からたんに〈発行人=荒井晴彦〉という表記に変わっていた。この1年、ひっそりと編集長権限を武田俊彦に譲り、脚本家としてあるいは『シナリオ』内作協ニュース編集長として、『映画芸術』編集業務からは撤退していたのか。『クワイエットルームへようこそ』が表紙なんてビミョーなセンス(421号)、どうもおかしいと思ったよ‥。
これからは新鋭監督のプッシュと小劇場演劇への目配せという武田編集長のスタンスで、単なる「良心的で良質な映画雑誌」に落ち着いてゆくのでしょうか‥。ウエイン町山が距離をとったあとの『映画秘宝』みたいに、眠たい雑誌に堕ちなければいいけど‥。

さて、『映芸』のベスト&ワーストは、その選評の長文なことが何よりの長所だとおもう。『キネ旬』ほか、他誌の選評はあまりにも短すぎて読む楽しさがまったく得られず、結果、決算号は集計表など単なるデータの載った書物としてすぐ本棚に直行してしまう。で、なかではやはり相変わらず自分には福間健二の一語一句が染み入るように会得されます。作品評価はカブらないのに。ファンだ。ひと単語ひと単語ごとに、手探りで世界に触れることで更新してゆくような認識のしかたに、つよい信頼感がある。12年ぶりの監督作品『岡山の娘』も、たいへん楽しみだ。前作『急にたどりついてしまう』(95)は、95年時のモデルニテとして、相当に的確な表現だった、といまでも揺るぎなく確信しています。2007ー8年という時代に、福間健二が何を感じてどう撮ったのか、すごく気になる。
「文章家として」の高橋洋と谷岡雅樹の選評も、毎年楽しみで、魔物に魅入られた原理主義者のようなひとの文章が、自分はどうも好きらしい(でもやはり映画の好みはまったく合わず)。尚、選評中、最低レベルの文章は新宿かぼす会の雉雅威と判断。

さて、以下はあらかた出揃った主な各種ベストテンを比較対象の参考としてリストアップしておきます→

○〈ヨコハマ映画祭〉
(日本映画ベストテン)
①それでもボクはやってない
②天然コケッコー
③しゃべれども しゃべれども
④腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
⑤河童のクゥと夏休み
⑥魂萌え!
⑦サイドカーに犬
⑧人が人を愛することのどうしようもなさ
⑨自虐の詩
⑩夕凪の街 桜の国

○『スクリーン』誌
(外国映画ベストテン)
①クィーン
②ドリームガールズ
③善き人のためのソナタ
④ボーン・アルティメイタム
⑤今宵、フィッツジェラルド劇場で
⑤長江哀歌
⑦ヘアスプレー
⑧バベル
⑨パンズ・ラビリンス
⑩ディパーテッド

○『映画秘宝』誌
①アポカリプト
②パンズ・ラビリンス
③デス・プルーフinグラインドハウス
④300
⑤ブラックブック
⑥ボーン・アルティメイタム
⑦グラインドハウスUSAバージョン
⑧HOT FUZZ
⑨トランスフォーマー
⑩ロッキー・ザ・ファイナル

○『キネマ旬報』誌
(日本映画ベストテン)
①それでもボクはやってない
②天然コケッコー
③しゃべれども しゃべれども
④サッド ヴァケイション
⑤河童とクゥの夏休み
⑥サイドカーに犬
⑦松ヶ根乱射事件
⑧魂萌え!
⑨夕凪の街 桜の国
⑩腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

(外国映画ベストテン)
①長江哀歌
②善き人のためのソナタ
③今宵、フィッツジェラルド劇場で
④クィーン
⑤バベル
⑥やわらかい手
⑦ドリームガールズ
⑧ボルベール〈帰郷〉
⑨ゾディアック
⑩パンズ・ラビリンス

○日本映画ペンクラブ賞
(日本映画ベスト5)
①それでもボクはやってない
②夕凪の街 桜の国
③ALWAYS 続・三丁目の夕日
④陸に上った軍艦
⑤犯人に告ぐ

(外国映画ベスト5)
①善き人のためのソナタ
②長江哀歌
③ドリームガールズ
④ヘアスプレー
⑤やわらかい手



ということで、メディアの総合的なベスト3は邦画が『それでもボクはやってない』『天然コケッコー』『しゃべれども しゃべれども』、洋画が『善き人のためのソナタ』『長江哀歌』と、『ドリームガールズ』もしくは『クィーン』というところでしょうか。
『しゃべれども~』については(→読みかえしてみたら、あまりに酷い罵詈雑言を全方位に吐き散らしていたので以下自粛&削除)

(追記)
奥付とは別に、目次ページに極小文字でスタッフ一覧が載っていて、ここでの表記も以下のように微妙に変動していました。
~417号 編集長荒井晴彦 編集武田俊彦
418号~ 発行人荒井晴彦 編集人武田俊彦
 

関連記事:『映画芸術』419号

theme : 2007年度 ベストムービー
genre : 映画

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××××さんへ

××さんのお書きになられているものは、前々から興味深く拝読させていただいております。
初著作の×××××からごく最近出された××××××まで、長年熱い気持ちで読んできた身としては、コメントを頂いて大変光栄に思います。
あれに載った文面からも、言われるようなことがあったと感じられましたが‥‥。なんにせよ、一読者としては、ご多幸を遠くから祈っております。色々ありますが、健康には重々お気をつけて!これからのご活躍も期待しております。

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××××さんへ

わかりました!
ありがとうございます。
そうしてみます。

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