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③山下敦弘

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『天然コケッコー』


〈→〈選出理由②〉からのつづき〉
〈2007年日本映画ベストテン〉のリストはコチラ)


〈選出理由その③~〉

さて、なんと選からもれた天才・山下敦弘。デビュー時から変わらず熱烈に応援していたのに自分でも信じられませんが、去年はどうにも乗れなかったのだからしょうがない。その2本を比べたら、『天然コケッコー』ではなくて断然『松ヶ根乱射事件』(『松ヶ根~』については既出記事有り)をとりますが、『松ヶ根~』に対してもかすかな違和感を感じていることは、既に公開時述べました。この2本よりかは『ユメ十夜』で担当した短編のほうが底がぬけていて、ずっと良かったと思っています。

どうやら大変好評らしい映画版『天コケ』は、ラスト、黒板に頬寄せたり、ワンカット内で時間が飛んだりする表現に代表される“いかにも”映画的なシーンが不毛と感じられました。茫洋としているようにみえて実はシュッとしているくらもちふさこ作品の力は、キャラクター描写にこそキモがあるとおもう。殊に『AーGirl』以降、作風が徐々に「物語を物語ることを放棄しキャラクターの生命感の描出に力点を置く」ように作劇作法がエスカレートしていった時期、その表現が臨界点に達したのが『天然コケッコー』だったという認識があって、それがわざわざ軟体気質の山下監督の手にかかったというのに、映画版の『天コケ』の場合、ダラダラしているのは見せかけで(“ダラダラしてる”というスタイリッシュな描写)、端正な輪郭に行儀良くおさまってしまっています。
キャラクターの心情や行動によって、シーンがのびたり縮んだり飛躍したりするのではなく、用意されたエピソードに案配よく人物や行動言動が配置されてゆき、バランスのとれた時間配分でシーンが構成されてゆく。という、じつにハコ書きチックな、反・くらもち的である以上に反・山下敦弘(&向井康介)的作劇に疑問。やはり戦犯は渡辺あやか‥。岡田将生は好きですが、この映画の大沢くんはぜんぜん魅力なし。逆に(?)、これまではその自意識の過剰な表出ぶりが常々カンに障っていた夏帆の演技および佇まいを、この映画では初めて心静かに見守ることが出来ました。

正直、観ている最中は、堪能しよう好感を抱こうと前のめりになっていたゆえもあって、直後しばらくは自分のなかに好評の声が渦巻いていたのですが、しばらくして冷静になってみると、「『天然コケッコー』が山下敦弘で映画化!!」というニュースをきいたときの興奮と期待に、思い描いていた想像上の映画の出来に、じっさいの映画『天然コケッコー』が全く達していないことに白々とした気持ちをどこか抱いていたのでした。上質な佳作。など、この企画にも山下敦弘監督にも望んでいなかった。演出や美術や撮影や演技(←廣末哲万以外)が良いという判断があろうとも、最終的には、この安全な映画からは興奮も愉悦も残念ながら得られなかった。そういう寂しさがありました。

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『Girl's Box/ラバーズ・ハイ』

ところで、2007年、個人的に一番印象深いのは『Girl's Box/ラバーズ・ハイ』(近日公開)なる映画にエキストラで参加したことでした。2007年の内に公開していれば、出来不出来は問わず(感触としては、ゼンゼン駄目)、思い出に是非⑩に挙げておきたかったんですが、それはともかく、唐突にここでこの話をしだしたのは、山下敦弘監督『リンダリンダリンダ』(05)に関連してのことがあったからでした。

『Girl's Box/ラバーズ・ハイ』の舞台となるのは傾きかけたショーパブ〈Girl's Box〉、大ざっぱに言えばここで『コヨーテ・アグリー』みたいな話が展開されるのですが、僕はこのショーパブに集い、盛りあがる客のひとりとしてこの撮影に参加したのでした。しかし、物語の背景が助監督によってちゃんと説明されることがないまま撮影に臨むことになったため、ここで歌い踊る金魚(長谷部優、長澤奈央、嘉陽愛子による現実にあるユニット)に対して、われわれ客役のエキストラたちは、どの程度熱狂的に振る舞うべきなのか、ただ噂をききつけて冷やかし半分に駆けつけた客なのか、前から彼女らの熱烈な信者なのか、それとも彼女らではなく〈Girl's Box〉というショーパブのハコを愛する人々なのか、ちっとも判然とせず曖昧なまま、とりあえずテキトーに盛りあがるしかなかったのでした。
そうするとどうなるか。
エキストラなんて基本やることなくて退屈なもんで、観客として反応しろ~と指示されたら、やたらとハッチャケて熱狂的に振る舞う。そのほうが“レジャーとして”楽しいし、退屈しないし、してやった感もあるし。ということで、我々エキストラは、物語上の機微も客とステージ上の彼女たちとの関係性も、まったく知りもしないながらも大汗かきつつ大騒ぎしていたのでした。
それが果たして物語上の背景として適した質の騒ぎかただったのかは本編を観るまで不確定なのですが、ヤケクソに延々と飛び跳ね続けつつ、僕が思い出していたのは『リンダリンダリンダ』についての一連の逸話でした。

とりあえず資料が手元にないのでうろおぼえで話を始めますが、『リンダリンダリンダ』の開巻間もなくしての長回し、校内中を歩く前田亜季をキャメラが追う。そのさい、大人数の高校生たちが、それぞれ各々文化祭の準備に勤しみつつ騒いだりしている姿が現れては消えてゆく。細部まで演出の行き届いた充実した画面。このエキストラの演出を担当したのは確か山下たちの後輩である元木隆史『ピーカン夫婦』!)だったはず。『Girl's Box』とは違って、こちらは細部まで気が配られていると感じられ、信用して映画内世界に没入してゆくことが出来る。

さて、“ガールズバンド青春ムービーとしての『リンダ~』”に対する外部からの要請(プレッシャー?)とは裏腹に、山下敦弘と向井康介は『リンダ~』の結末部、(一致団結演奏して盛り上がってシメ)というコッパズカシイ定型をなんとかスカそうと躍起になって抵抗をしめしていた。しかしどうやらそのクライマックスを外すことは商業映画として不可能のようで、彼らは確信を持てぬままクライマックスの撮影をむかえる。ここでも恐らくエキストラの相手をしたのは元木隆史であったのか。山下/向井のシャイネスは、“ヤラセ”の盛り上がりなど許容出来ずに、最終的に体育館でパーマンラウムの演奏に立ち会う観客(エキストラ)たちは、特にどう盛り上がれと指示されることなくフィーリングでやってくれというアバウトな扱いをされる。
結果、パーマンラウムの演奏に観客たちは熱狂的な喝采と盛り上がりで応える。クライマックスの成りゆきに不安を抱いていた山下敦弘(や向井康介)は、指示もせず自然にこのようになったのだから、これで良かったんだと肯定的にとらえることが出来た、というふうにインタビューにこたえていました。
彼らは、観客の盛り上がりに“自然発生的な”「ほんとう」があった。そう認識し、それが「コッパズカシさ」としてしかなかったこのベタなクライマックスを許容することが出来た。そういう「納得」があった。

しかし自分が『Girl's Box/ラバーズ・ハイ』の現場を経てみると、この山下敦弘らの納得は、少々認識が甘かったんじゃないかという気がしてならない。観客たちは自然発生的に熱狂したんじゃない。エキストラたちは、ノリのいい曲に接して、微妙に徐々に温まって渋々のように自然とノリだすなんて繊細なナチュラルさを属性として有していない。『2/デュオ』の俳優じゃあるまいし、退屈してるからエキサイトしていいならしたほうが楽しいだけなのだ。
だから、山下敦弘(や向井康介)が心のどこかで(もしかしたら、ヘタこいたかも)と未だに思っているかもしれない『リンダ~』のクライマックスシーンは、山下/向井的な意味で、キッチリと失敗した場面だった。そのように自分のなかでは最終判断がくだりました。

しかし、それもひっくるめて自分は『リンダリンダリンダ』という映画は好きだと感じるし、作品の資質の方向性として歪で間違っているあのクライマックスも、無方向にとっちらかる“山下的いい加減さ”として愛しているのだとおもう。『天然コケッコー』にはそのようなイビツさがあまりにも無かったし、『松ヶ根乱射事件』はその「無方向ぶり」が余りに確信犯じみていて、いいかげんさが足りなかった。そう感じています。

(→選出理由④につづく)

関連記事:『松ヶ根乱射事件』
       『天然コケッコー』映画化!!
       『ピーカン夫婦』その1
       『ピーカン夫婦』その2

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『松ヶ根乱射事件』

theme : 2007年度 ベストムービー
genre : 映画

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