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『海と夕陽と彼女の涙 ストロベリーフィールズ』

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『海と夕陽と彼女の涙 ストロベリーフィールズ』


(2006年、日本、91分)

監督・脚本・編集:太田隆文

出演:佐津川愛美、東亜優、芳賀優里亜、谷村美月、伊藤裕子、小西博之、三船美佳、吉行由実、浪岡一喜、並樹史朗

昭和40年代。夕陽と海の美しい町暮らす、17歳の女子高生・夏美(佐津川愛美)は、自分も同乗していた自動車の事故で、三人のクラスメイトを亡くしてしまう。葬儀の日、ひとりだけ生き残った夏美の前に、三人が幽霊となって姿をあらわした。しかし、彼女たちが現世にとどまれるのは死後48時間だけだった‥。

村おこし映画、という蔑称が〈リージョナルムービー〉と名をかえて、日本中で制作がさかんに行われて隆盛を誇る昨今、和歌山県田辺市の全面バックアップを受けてオール田辺市ロケで製作された、『海と夕陽と彼女の涙 ストロベリーフィールズ』。自身も田辺市出身である太田隆文監督は、大林宣彦に師事し、テレビドラマの演出でキャリアは積んではいるが劇場映画としては本作がデビュー作となります(特別出演の小西博之も同郷)。

で、正直、何の予備知識もなく観たのですが、あんまり上手いのでビックリしました。太田隆文の演出、個人的には師匠の大林宣彦より上じゃないかとおもった。

回想のモノローグから、古き良き時代、少女たちの制服の白が眩しい季節に、海と山に囲まれ陽光に溢れた町に、観る者は連れて行かれ、その空気を吸うことになる。冒頭の、山や道や家や空、日常生活のスケッチや人々の躍動をとらえたカットの積み重ねがまず素晴らしくて、居住まいをただしました。

この映画最大の美点は、ロケハンがたいへん丁寧になされていることだと思います。古い街並、海沿いの狭くうねった道、草木の両脇に生い茂る石階段、本通りから枝分かれした坂道。幾分高い木塀に挟まれた細い裏道。高校生活の場として画面に登場する築100年以上だという木造校舎もすごいが、ラストの、小高い丘に建つ一軒の家とそこからの眺望も印象深い。

大林宣彦のばあいだと、高低差のある空間や密閉された空間などの使い方が、これ見よがし過ぎてクドクドしいことが多々あって、それが映画の勢いも魅力も減退させてしまうという事が度々起きてしまうのですが、『海と夕陽と彼女の涙 ストロベリーフィールズ』では、過剰な“映画的”粉飾としての空間設計をやりすぎず、物語の的確な舞台として慎重で自然な選択がなされ、きちんと躍動感を伴って活用される。そういう基本的なことが下地にあるから、ファンタジーな物語も空転せずに、登場人物たちの感情の移ろいが情感をともなって観る者に伝わってくるのだと思います。
奇抜な意匠で奇をてらうのではない、あくまで正攻法で物語と感情を見据える、そうした、作家主義に還元されない、慎ましい娯楽映画としての作法に、好感をもつ。

殊にいいと思ったのは、日本家屋の縁側や、学校一階にある渡り廊下(というんでしょうか、校舎の一部から一部に移るときに屋外を通る廊下)などの、室内と屋外の中間に位置する場所での場面、その活気づいて魅力的なこと。夏美の家の縁側でのドラマや、葬儀の行われれた建物の、ガラス戸で中庭と仕切られた縁側で暴発する感情劇はその舞台装置と相俟って、映画に印象的な区点を刻む。

屋外と室内の中間的な場での光線の巧みな使い手といえば、誰しもすぐ成瀬巳喜男の名を思い浮かべるかも知れませんし、さらに『海と夕陽と彼女の涙 ストロベリーフィールズ』では、8ミリビデオの使用からはじまって、霊の見える/見えないという装置に、様々な人物の思惑が交錯するドラマをきっちり視線劇として丁寧に仕立て上げるという、〈視線〉にこだわった映画の構築が行われていることからも、〈視線により構築される劇の名手〉としての成瀬巳喜男との類似点(もしくは、その影響)が想起されるかもしれませんが、じっさいに映像に接したかんじでいうとあまり成瀬的なものは感じられない。ああいった鋭敏で繊細な交響詩を織り上げる才能とは別種の、地道で鈍重な努力の積み重ねによって作り上げられた『海と夕陽と彼女の涙 ストロベリーフィールズ』は、どこか凡庸な印象を与えてしまうかもしれません。しかし、このような物語に感情をのせて観る者へ届けるのに必要なのは、才気や華麗さではなくて、丁寧で確かな描写なんだということを、この映画の存在は示していると思います。

物語の説明と人物紹介をするさいの簡潔な手際よさも侮れない。序盤、学校の教室内、無言でイジメの指示をだす芳賀優里亜(標的は佐津川)、そこへオフで谷村美月の怒鳴り声がかぶさる(男子につかみかかっている)のへ、毅然とした東亜優が止めにはいる。短い時間で関係と人物を分からせてしまう手腕。ことに、柔道でインターハイに出場することになった谷村美月の応援団を担任が募り、たまたまのようにして東佐津川芳賀の三人が決まってしまうダンドリはかなり危なっかしいのに、丁寧な視線のつなぎとアクションのタイミングの良さ(芳賀優里亜)でうまいこと乗り切っているあたりは確かな演出力を示したとおもう。

死神の処理の仕方はけっこう危なっかしいかんじもするのですが、しかし、悔いを残して幽霊になってしまった三人が、きっちり後悔を解消して成仏してゆくのではなく、あくまでやり残したことはやり残したままで死神に世界との繋がりを理不尽に絶たれてしまうという残酷な描きかたは、“死”を涙腺をゆるめるためだけの道具として安易に扱う幾多の映画群を前にして、倫理的な問いかけになっているともおもう。死神とは、生者や死者の都合によって現れたり出現が遅延したりする存在ではなく、とつぜん目の前に猶予なくあらわれてしまうものなのだ。一日一日をしっかり生きないといけないし、いろいろなことから目をそらしたまんまにしておいちゃいけないということ。

主演の佐津川愛美『蝉しぐれ』(05)でデビュー後、『真夜中の少女たち』→既出記事はコチラ)や『笑う大天使』など順調に映画出演をかさね、女優さんとしての地位を着実に築いている。ドラマ『がんばっていきまっしょい』『ギャルサー』などにも出演し、今作『海と夕陽と彼女の涙 ストロベリーフィールズ』では彼女の得意な〈よく転びそうなアタフタした女の子〉を着実に演じています。若者人気よりも、年配者が安心してみていられる女優として重宝されそうなかんじもあり、異性的“可愛さ”をいつでも封じて演じられるのが強みでしょうか。

谷村美月『カナリア』(04、→別記事はコチラ)がいつでも代表作であのイメージはなかなか拭えない。ドラマ『14才の母 愛するために生まれてきた』(→別記事はコチラ)がヒットしたことでようやく全国区的に顔が知られたとおもいますが、使い勝手の悪さも同時に示す。本作同様、『笑う大天使』でも佐津川愛美と共演。

芳賀優里亜には『マスター・オブ・サンダー 決戦!!封魔龍虎伝』(→別記事はコチラ)の項でも触れた。吉岡美穂を華やかにしたようなルックスだが、華やかなヒロイン役よりは陰のある役柄が多いのは大きい瞳に内に籠もった憂鬱が宿るからか。映画版『恋する日曜日』→別記事はコチラ)では華やかさと憂鬱の共存が絶妙だと思います。

東亜優はホリプロスカウトキャラバン出身、この映画のあと昼ドラながら世間的話題もさらった『吾輩は主婦である』(→記事はコチラ)に出演(斉藤由貴と及川光博の娘役)。先に撮った『海と夕陽と彼女の涙 ストロベリーフィールズ』のほうがずっと大人っぽいのが興味深い。
全体、おのおのの女優さんの特質が活かされるよう役の人物像に配慮がなされていて、それでもそのキャラクターの群像が物語と遊離しない。太田隆文監督、将来的に女優から演出されたいとラブコールがくる演出家になるかもしれないと思います。


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theme : 邦画
genre : 映画

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