『マスター・オブ・サンダー 決戦!!封魔龍虎伝』(2006年、日本、92分)
監督・動作設計:谷垣健治
製作統括:倉田保昭
出演:木下あゆ美、芳賀優里亜、椿隆之、永田杏奈、小松彩夏、アドゴニー・ロロ、千葉真一、松村雄基、倉田保昭
怨霊が黄泉より蘇り人を襲いだした。千四百年の昔より伝わる、悪霊を封じ込めるための秘儀〈鬼封じの法〉を用いて怨霊を封印すべく、〈青龍の七人衆〉の縁者、子孫が集結した‥!
木下あゆ美出演作の最新は、TBSの昼ドラ
『結婚式へ行こう!』ですが、ここでの木下あゆ美は、主人公である親友アオイ(石橋奈美)の結婚式当日に新郎リョウスケ(坂上忍)を奪い逃げておいて、その直後、いけしゃあしゃあと被害者当人のアオイの家に居候して、あまつさえ何かにつけてアオイにニャーニャー懐いているという、信じがたい妹的キャラ・マコトを演じています。このリアリティもへったくれもない役を、意外と嫌味なくどこか可愛げもある人物として体現し得ている木下あゆ美は、じつはなかなかの役者さんだとおもう。
この『マスター・オブ・サンダー 決戦!!封魔龍虎伝』での木下あゆ美の起用は、代表作であるデカレンジャーのジャスミン方向からの抜擢でしょうが、こういった、正面からリアリティをうんぬんするのが難しいような題材を成り立たせるだけのモノをもっていると感じさせるのでしょうか。芯がとおって背筋のスッのびた凛としたかんじと、舌足らずで無防備な部分が同居していて、頑なで抜けてる、硬質で幼稚、という振り幅をもっていて、それが少々苦しげな世界観や物語でも何とかしてしまう“大きさ”となっていると思います。
テレ朝系列の特撮戦隊もののヒロインのひとり(『特捜戦隊デカレンジャー』)、テレ東深夜ドラマのダークで妖艶な役(『怨み屋本舗』)に、TBS昼ドラの女の群像劇の一員(『結婚式へ行こう!』)、そしてこのVシネチックなファンタジーアクションの本作と、ムダにバラエティーに富んだ役柄を難なくこなす。〈アジア震撼!日本が誇る国際的2大アクションスター初バトル遂に実現!千葉真一VS倉田保昭〉と銘打たれた、2大スターの競演と、谷垣健治のアクション監督としてのこだわりぶりに注目が集まるこの映画ですが、実質、作品世界を負って立つ役柄を木下あゆ美が気負うことなく演じていて見事だと思います。

お話は、里見八犬伝みたいな話のバリエーションで、無理のあるところが色々ありますが、こういう映画で細かくアラ探ししても生産的じゃないのであたたかく見守るべきでしょう。しかし、『七人のおたく』みたいに、アキバ系オタク、ナンパ師、コスプレ、ギャンブルなど様々な特性や属性をもった仲間が集結したのに、ほぼ誰の特技も役に立たないどころか、集めた面々は誰一人として事件の解決に関与しないまま終わるというのは、それはいくらなんでも‥。
さて、選ばれた勇士たち7人の面々、ターゲット(非モテ系男子)を想定してか、妙に美少女(アイドル)比率がたかく4名、それに対して男はオタク1名お笑い系外人1名と、ようやく最後にイケメンひとり。しかもそのイケメン(椿隆之、
『仮面ライダー剣』)も軽いナンパ師で、女の子たちとステキなロマンスに陥って前面に出てきたりとかいうことはなくて、物語の後景で大人しくしていますから、非モテ男子が疎外感を感じないで済むように配慮されている(?)わけです。
ガリ勉少女役の
芳賀優里亜は
『仮面ライダー555』発。映画は
『恋する日曜日』(06、
→別記事はコチラ)、
『海と夕陽と彼女の涙〜ストロベリーフィールズ〜』(06、
→別記事はコチラ)、
『Voices』(05)などに出演。使い勝手がいいんだか悪いんだか、微妙な成長過程にあるひとかと思います。なにげに塩田明彦の
『どこまでもいこう』(99)や
『害虫』(03)に出ていたらしいのですが全く記憶にない‥。数年後には名をあげて、今度はメジャーな部類の塩田明彦作品に是非!
メジャー作
『僕は妹に恋をする』(06、
→既出記事有り)の好演で名が知れ、今後引っ張りダコ必至と思われる
小松彩夏は、去年は
『ドリフト』2部作(
→既出記事有り)と『僕妹』(公開は2007年)、それにこの『マスター・オブ・サンダー』と映画に盛んに出演しました。
『恋文日和』(04、
→別記事はコチラ)を含め、アンニュイで儚げな、陰のある役を演じて印象をのこしていますが、今作では実写版
『美少女戦士セーラームーン』からの流れでの出演か、まんまコスプレする美少女役。カラッとした明るめの軽い役柄も悪くなく、メイド姿などコスプレも見所。今後、安藤希とポジションがカブりがちかとも思うが、ダークなほうに行き過ぎない、明るさのある声質が救いにもなる。
アクションはインパクトのスピードと“痛さ”の表現に焦点。ただ『マッハ!』や『トム・ヤム・クン!』を観たあとでは、早回しはやっぱりシラケるところ。キャストがちゃんとアクションシーンを頑張ってる部分は好印象。
そして、千葉真一のアクション。千葉真一にたいして、斜めから笑いつつみようという向きもあるかも知れませんが、動きと動きの間を繋ぐ“タメ”の演技/アクションが、やっぱり素晴らしくて、老獪なレスラー(武藤とか)みたいになるのがアクションスター晩年の正しい在り方かとおもう。ジャッキー・チェンみたいな変わらぬ方法論だと、今のジャッキー映画が、その若いころの映画にかなわないのは必然となりましょう。
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