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『映画芸術』424号

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さて、たんなる一読者には事情は計り知れませんが、長年映芸を支えていた武田俊彦が1年半のあいだ務めていた編集長の座を前号で辞し、映芸編集部を去った。連載も軒並み終了で、どのような形でのリニューアルになるのか、そもそもちゃんと出るのか、気に病みながら日々を送っていましたが、どっちにしても遅れるもんだとばかり思っていた『映画芸術』424号が発売予定日にキチンと出た。

まず、表紙のというか持ったときの触感に違和があった。前号までの、コーティングはしてあるが何度もいじっていればすぐ劣化してくる性質の紙ではなくて、保護に優れたツヤ消しの紙。ハッキリ言って生理的に嫌いな触感だ。
印刷された出版物、紙媒体へのフェティッシュは、時間とともに劣化し磨耗する“紙”にこそ宿るとおもう。文庫本のカバーでいえば、新潮文庫やちくま文庫にあって集英社文庫に欠けているのが、紙媒体としてのその種の優位性。ゲームでいったら、ファミコンやスーファミ時代のすぐボロボロになる紙製の箱を想起すれば、その儚さと所有欲が密接に結びついていたことが容易に思い出せないでしょうか?PS2やらXboxやらのプラスチックで上手に保護梱包されたゲームは、比較すると単にデータの入った入れ物でしかないように感じられ、クリアしたら痛みもなく売りに出せる、交換可能なものであって、ダウンロード式のゲームとの差異がどんどん縮まっているという実感がある。レコードとCD(そしてコピー、ダウンロードへ)の関係にしろ、磨耗するソフトウェアとしての、物質的な余剰が、所有欲を誘発するフェティッシュ的価値であると思えます。少なくとも、そういう一面も否定し難くあるのは否めないでしょう。
最近、紙媒体じしんによる、ネットではなく紙媒体として存在するということの優位性を探るというような特集をチラホラ見かけますし、先走って言うと今号の『映画芸術』でもその類の特集がありますが、正直クダラナイ意見ばかりでウンザリする。物質であることや、商品として流通・消費のシステムにのるには快楽原則に則ることといった根本的な前提が抜け落ちているからこの種の特集は読むに耐えないんだとおもう。そういうくらいの認識だから、この紙質のデザインでゴーサインが出るのでしょう。

で、肝心の内容物はというと、ざっと見たところの印象は、洗練度も熱量も低いサブカル風味のミニコミ誌。前号のことを以前、〈相対的に良質な映画雑誌、というだけ〉とクサしましたが、今号については残念ながら、“相対的に良質な”という修飾すらはずさなければならないと感じられます。

巻頭の〈ボーダレス・クリティック/境界線なき発言者たち/わたしたちは自由に「映画」を観ることができているのか?〉という大仰なタイトルの特集がまず、圧倒的にクダラナイ。〈「場」がないならば、自分で作る!インディペンデント映画誌座談会〉という『Spotted701』の直井卓俊、『DVU』の中山洋孝、『TRASH-UP!!』の屑山屑男、『映画時代』の膳場岳人による座談会。それと〈誰にだって言いたい衝動がある。/インターネット映画評ブログ発信者対談〉と題された、モルモット吉田&古谷利裕への、対談とは名ばかりのインタビュー記事。どちらも退屈な発言ばかりで死ぬほど低調なのは、ここでは司会者というかインタビュアーにビジョンがないせいだと言うことにしておきます。
〈いまある映画雑誌や映画批評に対する反発はありますか?〉とか〈今後映画と雑誌、もしくは映画と私たちはどのような関係を結んでいくべきだと思いますか?〉とか〈紙媒体とブログ、現在の批評の本質に近いものはどちらといえるのか、考えを巡らせますか?〉とかいった質問群は、これから新たな『映画芸術』を構築していかなければならない新編集部/新編集長にとってのとりあえずの興味で発されているに過ぎない感があって、まず自分たちがこの雑誌をどうしていったらいいか右往左往している故の質問を、独自のメディアを構築しているように映る先達に対してぶつけることによって教えを乞うている。そのように見えるし、そうしてまたその“先達”たちも、後輩に手を差し伸べるようにして応えているからか全般低調な発言に終始していると感じられます。結局のところ、この巻頭特集はメディア論を装った“雑誌の作り方教室~教えて!センパイ”に過ぎない内輪を向いた特集であって、〈映画・芸術〉という文化圏への、またその文化圏を越えた領域へと言説を組織してゆく野心など望むべくもない域にとどまっているとおもう。
そのミニコミ感こそ、〈好きなもの擁護〉でしかないタコツボ化に通じる閉じた回路への無自覚な道程のしるしに感じられる。ある立場を選択し、モノを言う、そこに同種類の感性の人間が集まり小メディアを形成する、といった凡庸な状況に、聞き手はどうやら危機的ものを感じていないらしい。ゲストのなかには幾分でも雑誌というメディアのアドバンテージとして「誤配」性を念頭に置いているひともいなくはないようなのに、そこは見事に掬えていないのでした。
(本特集の主なパーツのひとつである〈作品を語る言葉に望むこと。/監督・脚本家16人の回答〉という企画では上記と同じような“メディア論を装った教えて!センパイ”が試みられていますが(アンケート①現在の映画批評が担っている役割とは?②作品づくりにおいて、過去に影響を受けた評論家や評論はあるか。③現在注目している、または信頼している書き手及び論じ手はいるか。④今後、作品と評論及び批評はどのような関係を結んでいくべきか。)、誘導や検閲がないぶん、各自固有の言葉が編集部の狙いとは無縁の方向に伸びて、興味深い文章も散見されます。個人的ベストは沖島勲氏の回答。)

さて、特集ではない個々の記事は監督インタビュー、新作映画評、ブックレビュー等といった変わり映えしない誌面構成。個人的にいうと荒井映芸の書き手としては福間健二、谷岡雅樹、高橋洋あたりの書き手が好みで、その不在が物足りなくもありますが、柄本かのこの健在は嬉しくもあり、中原昌也の算入が希望でもある。

新体制ならでは、と思うのは足立正生による新藤兼人インタビュー、というメチャクチャな組み合わせ。フツーのセンスじゃないなと不意をつかれたし、対談自体もなかなか面白い。あとは白井佳夫ロングインタビュー(〈新企画『映画人、かく語りき』〉)なんて飛びっきりダセエ企画にもビビった。ところでこの『映画人、かく語りき』の題字部分を担当したデザイナー氏、これが映画のフィルムのつもりならクビではないでしょうか。マルタクロス知らないのかしら?

相変わらず寺脇研との対談に〈大人しく囲い込まれて〉いるウルサいオジサンであるところの荒井晴彦は、この20代の女性編集長に統御されている誌面をどう感じているのだろうか?映芸といえば、最大のウリは荒井晴彦の編集後記、と相場がきまっていますが今回はなんと無し。大嶋新編集長によると〈発行人の後記は次回から連載記事として、文字量も密度もボリュームアップしますので。今回からの開始予定でしたが、だって「暗くなるから書きたくない」っていうんだもん。いつだって暗いくせに。〉だそう。というかスタッフと荒井氏はどんな力関係なんだろうか?過去の積み重ねた人生の歴史に精神の柔軟を失った初老の男の誇りある城を、常識もよく分からんような男女が我が物顔で占拠する様の奇妙な関係性は、なんだかヴィスコンティの『家族の肖像』を思わせます。

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