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たけしの完勝

4月の終わりくらいから体調を崩して、未だに治りません。そんなこんなで、5月は記事をずっとアップ出来ませんでした。

しかしここで、盛り上がっていなくもない、北野武『監督・ばんざい!』VS松本人志『大日本人』激突!という話題に、公開(6月2日)前に、なんとか一言残しておきたいと思ったので、ちょっと書いておきます。

きっと、この勝負、興行的には松本側の圧勝でしょう。たけしの映画が興行収入で上回る要素は、おそらく殆ど無いとおもう。
しかし、内容ではたけしの完勝だと、観る前から断言しておきたいと思います。

『大日本人』は、どうせわかりやすいほどにナンセンスかつシュールに“面白く”仕上がってるんだろうし、たけしの映画は相変わらず、どの方向からみても“面白い”と言いづらい、挨拶に困る細部に満ち満ちているのでしょう、と予測する。
松本人志の映画なんてどうせモンティ・パイソンと大差ない“ハイブロウぶりっこ”のコメディなんでしょ、と必要以上に軽視してしまうのは、『シネマ坊主』の連載における松本人志の選球眼のなさに白々とした気持ちを抱いているからで、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』『ライフ・イズ・ビューティフル』を誉めて『ドリヴン』『パンチドランク・ラブ』を貶す、その感性の絶望的な凡庸さに心底軽蔑心を抱いたし、撮影期間が8ヶ月という長期に渡ったという慎重さも、映画という生き物が分かってないとビンビンくる。こねくり回して緻密に完成度をあげることが良い結果となるとは限らない、という常識的なカンが、お笑いでは働くのに映画を撮るというプレッシャーの前には、鈍りに鈍ったとしか思えません。4日以内で撮る、くらいのハードルを自分に課すくらいじゃないと、松本人志の才気は爆発しないとおもう。例えば、『シャーリー・テンプル・ジャポン』冨永昌敬監督)みたいなトンデモな映画は、そのような条件下で初めて突発的に結晶したんだし‥。

それに対して、たけしの映画は、おそらくどのような種類の感性の持ち主の快楽原則にも寄り添わぬような、不気味なほどツマラナイ映画に成りおおせているんじゃないかと、頼もしく思う。(不気味なほどのツマラナさを連打する、鬼気迫る迫力あるフィルモグラフィの持ち主といえば、最近(?)では『シェルタリング・スカイ』以降のベルトルッチ『好男好女』以降のホウ・シャオシェン、そして万田邦敏全劇場用映画などがあって、その“不気味さ”はホラー映画なんかの比じゃないと感じる‥。ヴェンダースのツマラナサは、何だか中途半端で物足りない。時々ごく普通に面白かったりして。)どちらの映画についても、殆ど情報をシャットアウトして観賞に臨もうとしているので詳しいことは何も知らないのですが、たぶん予測はあまり外れないんじゃないかと勝手に確信しています。『大日本人』なんてタイトル、そもそも森田健作の映画にセンスで先手をとられてるって!

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theme : 北野武監督関係!
genre : 映画

『男気万字固め』『本業』

200705130000422

吉田豪『男気万字固め』
(幻冬舎文庫版)

浅草キッド・水道橋博士『本業』
(ロッキング・オン)

ながらく入手困難だった、吉田豪の単行本デビュー作『男気万字固め』が、幻冬舎文庫からボーナストラック付きで再刊されました。
名著と名高い、男気溢れる破天荒な著名人たちへのロング・インタビュー集である本書、幻のムツゴロウインタビューは今回も惜しくも収録に至りませんでしたが、ボーナストラックとして本宮ひろしインタビューと乙武洋匡との対談が新たに収録されているので、旧版をすでに所有しているかたも買わざるをえないでしょう。(吉田豪は最近、元アイドルへのインタビュー集の第2弾『元アイドル2』も上梓、こちらも相変わらずたいへん面白い。)

日本一のインタビュアーとも賞賛される吉田豪の、インタビュー時に発揮される博覧強記のデータ魔ぶりは、ほんらい〈ライフワークであるタレント本の書評〉や様々な文筆活動でこそ本領発揮というか本道で、古本鬼としての本道の派生ワークとして〈インタビュアー業〉は位置付けられると思います。
〈インタビュー集みたいな形式だと単行本も比較的簡単に出来る〉〈単行本がインタビュー集ばかりなのは、要するにそういう理由〉と本人が述べているように、少しずつ重ねてきたが必ずしも本意ではない著作の傾向から、“名インタビュアー”としての顔ばかりがクローズアップされてそっち方面の仕事ばかり増えたとしたら、優れたライターとしての吉田豪が無駄に消耗していくのではと多少なりとも心配する。

そもそも、吉田豪のインタビュー記事が破格の面白さを誇るのは事実なのですが、対話によって初めてその人の新たな側面が浮かび上がるという“インタビュー”という形式特有の緊張感ある魅力を、吉田豪のインタビュー記事が有しているかどうかはかなり疑問があります。徹底したリサーチ作業によってピックアップされたトンデモな事実なりエピソードなりを、聞き手(吉田豪)の都合のいいような順番の配置で本人に再確認していくという吉田豪方式は、対象者に関する知識量が圧倒的に多いことを別にすれば、街頭インタビューやスキャンダルの記者会見時に書き手の都合のいいコメントを誘導的に引き出そうとする愚劣なインタビュアーと大差ないやり口であって、いわばヤラセのドキュメンタリーに近いものがあり、はじめから狙いに沿った返答しか期待されていないきらいがある。

インタビューは受けたものの、単行本への掲載を断った西川のりおに、水道橋博士が尋ねると〈あのインタビューは聞き手の誘導が多すぎるんよ!あの取材、アイツの知っている結論を言わせるためだけにやってるみたいやろ〉とのりおは反発し、水道橋博士は、しかし、〈まさにそこが吉田豪の聞き手としての真骨頂であるのだ〉と書く。(浅草キッド・水道橋博士『本業』)
吉田豪にとっては、タレント本書評において巧みに己の琴線に触れる言葉をピックアップしてコラージュし一流の面白い読み物に仕立てあげるのと同様、インタビューでの“発言”主体としての相手も、引用/参照される膨大な文献群と同じように、自分が織りなそうとするテクストを構成するコラージュ部品の提供者であるだけなのであって、その意味では吉田豪のインタビューは、インタビューの形を借りた“対話風のタレント本書評”だというのが実情だと思います。しかし、それにしたって、〈タレント本書評〉の分野では、知識量もテクニックも面白さも、吉田豪の右に出る者も左に出る者も後ろに控える者もいないという、ぶっちぎりの孤高の第一人者であることに変わりはない‥。

吉田豪とは互いにリスペクトしあう仲である水道橋博士が、第一人者をさしおいて、一足先に〈タレント本書評〉を一冊の本(『本業』)にまとめてしまった。『日経エンタテインメント!』にこのタレント本書評の連載をはじめたとき、水道橋博士の頭には常に、どうしたって吉田豪の書評芸にはかなわないということを重々承知で勝負しなければならないというプレッシャーがあったはずで、商品価値として吉田豪の書評とは違った戦略が必要だという緊張感があったと思うし、その緊張感がいつもより密度の濃い(ムードに流れない)文体にあらわれていると思われます。

『本業』の長所は、ひとつは現在的に芸能界を生きている一タレントでもある己のポジションを最大限利用することで、さまざまな機会に目にした言動や行動が織り込まれ、テクストからだけではうかがい知れない豊かさをその文章に付与している点(編集部からの要請だそう)、もうひとつは、〈書評と言うより、交遊録や人物評、俺自身への自己言及が再三〉と著者は言いますが、コミットはしつつも、当該人物や書物の立ち位置を歪めたり強引に自分のフィールドに引き寄せすぎたりせずに、“本の丁寧かつ正確な紹介”であろうとする慎ましさをもって接している点で、どちらも吉田豪の(テクスト主義的な)タレント本書評との差別化が計られているように思えます。同じ本を扱ったとしたら、どうせ吉田豪のほうが面白く書くに決まってる。そんな困難のなかで、水道橋博士は健闘したと思います。

そんななか、『本業』のタレント本ラインナップ中、正確には〈タレント本〉ではないにも関わらずとりあげられた『男気万字固め』は、吉田豪が唯一書評出来ない本。最大のライバル(タレント本書評家、吉田豪本人)不在のなか、情熱と敬愛をもって丁寧に紹介された『男気~』に限っては、水道橋博士が最高の書評家の栄光を得る。水道橋博士の書評に比べたら、文庫版『男気~』刊行時に『週刊文春』の連載(『文庫本を狙え!』)でとりあげていた坪内祐三の文章さえ、気取っているだけのスカスカのものに感じられたのでした。

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

『映画芸術』419号

20070509102052

『映画芸術』419号

○今号も無事に出た映芸。なんだか、編集長・荒井晴彦氏が更に弱っている。対談形式記事に幾つも顔を出しているものの、誌面全体を(編集長の人格が)統御出来ていないかんじで、特集〈映画と演劇の微妙な関係〉をはじめ、ふつうにサブカルテイストな記事が幅をきかす。名物の編集後記も、老いと病気の憂鬱が支配しています‥。こんなに映芸の荒井晴彦カラーが薄れているのは、96年暮れから97年にかけての時期以来か。あの時は初監督作品『身も心も』制作撮影という大イベントがあったけど‥。
それでも、細野辰興『シャブ極道』)が責任編集とはいえ、森安建雄追悼なんてドマイナーな特集があったりして相変わらずの映芸だな~と思わせる(小栗旬武藤敬司による追悼文が載ってたりするから、ライト層にも読み逃せません)。


寺脇研が最近元気だ。
417号の〈日本映画批判集中討議〉では、『嫌われ松子の一生』批判をする荒井晴彦をなんと〈そこまで言うなら譲ろうか〉と妥協させ、418号では西部邁、今号では宮台真司といった、如何にも面倒クサソーなのを向こうにまわして堂々の対談。一時期はその書くものと現在的映画状況とのズレが、寺脇氏も過去形の批評家だと感じさせ、官僚の仕事は多忙を極めていったうえに韓流ファンと化し、映画論壇(?)から消えゆくかと勝手に思っていたのですが、最近の充実ぶりは尋常じゃない。日本映画しか観なかった彼が、他国の映画を観るようになったり韓国の人々との交流を経て、日本映画を相対的にみることが出来るようになった。『キネマ旬報』連載の星取り表でも話題沸騰、人は老いてもポンとジャンプするように成長するんだなあと感慨深いかんじ。あんなに毛嫌いしていたアニメーションにも理解を示す日がくるとは‥。
キネ旬の星取り表では、相変わらず星1つを連発、おそらくは心ある映画ファンの顰蹙を買っていると思われます。
最新号の5月下旬号では
『ロッキー・ザ・ファイナル』
『ハンニバル・ライジング』
『ゲゲゲの鬼太郎』
『バベル』
と例によってオール★1つ。5月上旬号でも
『オール・ザ・キングスメン』
『ブラッド・ダイヤモンド』
『サンシャイン2057』
『東京タワー』
とオール星★1つのうえ、書き出しはすべて「ウェルメイドな~」で始まる戦略的な短評。かつての『シティロード』誌での安井豊の星取り表を想起させなくもないけれど、寺脇氏のものにはもう少し真面目な考えがある。『映画芸術』419号の宮台真司との対談では、あの点数の付け方について語っているので要注目です。
寺脇氏と同ページで星取り表をやっている渡辺祥子、内海陽子、北小路隆志の三人が揃って『ドリームガールズ』に★★★をつけているのに対し、寺脇研は★。逆に『蒼き狼』にお三方が★のみ進呈し、寺脇氏が★★★。という対比に、ある種の批評がある。アカデミー賞がらみの映画に無難に高得点をつけて、角川春樹がらみの大作『蒼き狼』に星★1つつけるなんて、観てないシロートだって出来るっつーの。作家や作品に愚直に対面するだけの有象無象の評論家たち、批評の不在も戦略の不在も甚だしいということが浮き彫りになる。


○最近『映画芸術』にコミットしてきた、宮台真司。スノッブな成功者は荒井映芸には馴染まない気がして、個人的には何だか迷惑だ‥。関わった記事は相変わらず面白いので参りますが‥。


○映芸の本格的なホームページが、ついに5月1日開設。のぞいてみましたがまだ『机のなかみ』吉田恵輔監督)と『14歳』廣末哲万監督、高橋泉脚本)についてのインタビュー記事があるだけで、まだまだこれからといった感じですが、活気あるものになっていってくれたら、と映芸ファンとしては切に願います。
〈映画芸術DIARY〉
ホームページアドレス
http://eigageijutsu.com/


○自分の〈2006年日本映画ベストテン〉(→コチラ)で4位に挙げた『愛妻日記』シリーズですが、せっかくDVDリリースされたのに、レンタル店のアダルトコーナーに陳列されていることに自分は不可解な感情をもったし、そう感じた映画ファンも多かったのじゃないでしょうか。
関谷善彦のコラム〈独立単館戦線〉でその理由がわかってナルホドと思う。アダルトコーナーに入る人は〈アダルトビデオを物色しているのだから、(略)そんな環境の中に『愛妻日記』を並べたとて、映画を楽しみたい人の手に取られる事はありえない。また逆にアダルトビデオですっきりしたい向きには『愛妻日記』は物足りない〉という不幸な環境下に『愛妻日記』シリーズは置かれているのですが、このコラムでは最大手のTSUTAYA側の対応の問題(ジャンルコードの問題、PPT方式の問題)によって、優れた映画が潜在的観客との遭遇を阻まれている様を示し、恋愛映画としての『愛妻日記』シリーズを開かれた場へと主張しています(詳しくは本誌記事)。
このPPT方式(NOT買取)ではレンタルされないと、販売元の売り上げにならないので、一人でも多くの方にレンタルの機会があるよう、理解ある店側の対応が臨まれます。こういうつまらない阻害によって、『愛妻日記』のような優れた企画の後続が絶たれたら日本映画にとって大きな損失だと思う。
(ちなみに、うちの最寄や近隣のTSUTAYAでは、例によってアダルトコーナーに『愛妻日記』シリーズが追いやられていますが、《新宿TSUTAYAかぼす会》として映芸にコミットしているTSUTAYA新宿ベルプラザ店(鈴屋店)のスタッフは、ちゃんと一般コーナーに『愛妻日記』シリーズを置いています。ジャンルコードがどうあれ、優秀なスタッフがいる店はチャントやるもんだと思う。)

○5月から開催される〈映芸マンスリー〉なる上映会の企画の第1弾の5月14日の上映に、その『愛妻日記』シリーズ最高作『ホワイトルーム』が登場しますが、同じく2006年マイベストテン2位の『まだ楽園』黒沢清樋口泰人ら絶賛)が7月9日に登場!なかなか観るチャンスないので、興味あるかたは定員45名だそうなので、予約しといたほうがいいと思います。会場は、映芸でもおなじみの桃井章氏がオーナーをつとめるシアター&カンパニーCOREDO(千代田線乃木坂駅下車)だそうです。

theme : 邦画
genre : 映画

映画『ナイトミュージアム』

20070507001511

『ナイトミュージアム』

(2006年、アメリカ、108分)

監督・製作:ショーン・レヴィ
原作:ミラン・トレンク
脚本:ロバート・ベン・ガラント、トーマス・レノン
出演:ベン・スティラー、カーラ・グギーノ、ディック・ヴァン・ダイク、ミッキー・ルーニー、キム・レイヴァー、ジェイク・チェリー、ビル・コッブス、リッキー・ジャーヴェス、ポール・ラッド、ロビン・ウィリアムズ、オーウェン・ウィルソン

ニューヨーク。何事にも半端なラリーは、そのダメっぷりのせいで愛する息子との絆を失いかけていた。奮起してようやく得た仕事は、自然史博物館の夜警だった。働きはじめて、ラリーは知ることになる、この博物館では深夜を過ぎると展示物が次々と生命を得たかのように動き出すことを‥。


恐竜の化石や蝋人形など、博物館の動かないはずの展示物がもしも動き出したら‥という、ものすごい他愛ないお話の映画が、本国でよもやの大ヒット!日本では人気も知名度も今ひとつハジけないベン・スティラー主演作ながら、日本公開でも無事に大ヒットをおさめ、ベン・スティラーファンは溜飲を下げた格好。アメリカのコメディ映画が軒並み劇場公開されない、よくてビデオスルー(DVD全盛期の今、“ビデオスルー”にかわる丁度いい言葉ってないもんかな)という日本の公開状況のなか、祝福すべきニュースとなりました。

ベン・スティラーの名前と顔は『リアリティ・バイツ』(94)の時に知り、当初自分のなかでは悪くないルックスだがかすかに間の抜けたかんじのある才人、『ケーブルガイ』(96)と併せて、(俳優もやる映画監督)、という印象(利重剛みたいなもの)だったので、『サタデー・ナイト・ライブ』で名をあげた、冠番組ももったりする著名なコメディ・アクター、というイメージの認識にはなかなか至らず、『メリーに首ったけ』(98)以降の、しつこい位にしょうもない数々のコメディ映画の波状攻撃にジワジワと認識を改めていったのでしたが、今に至ってもアクターというよりはクリエイター、というイメージがまず先に来る。

だからなのか何なのか、たとえばジム・キャリーの新作と聞いても、内容とスタッフによっては全く期待もしないし観たくもならないのだけど、『ドッジボール』や『ナイトミュージアム』みたいな、普段ならベタなアイデア/物語の、そそらない映画にベン・スティラーが出演したとなると、何かあるんじゃないかと何となく観たくなってそわそわさせられる。ファンなのかというとそういうわけでもないのですが(日本でベン・スティラーファンと公言する人々からスノビズムの臭いが漂うのは、彼の微妙な“クリエイター”ぶりに由来するのでしょうか)、何しろ出たら何でも観たくなる人だ。

自分が最も好きなのは『ズーランダー』(01、監督・制作・脚本・主演)の彼で、スーパーモデルなキメ顔&ポーズが最高におかしかったのでしたが、『ドッジボール』(04)の悪役ともどもこういった作り込んだヤリ過ぎなキャラ作りで臨んだ映画はどちらかというと例外的で、『ミート・ザ・ペアレンツ』(00)に代表されるような、周囲の世界とのズレにオタオタする反応的な演技に可笑しみの本領があるとして、ファンに期待される存在なのだと思われます。ベン・スティラーというとまず、周囲のあんまりな状況や言動に、口を中途半端に半開きにして、中途半端な体勢で居心地悪そうに空回りしてる、そんなリアクションが目に浮かびます。

周囲の世界にオロオロして接する、といっても、たとえばドラマ版『電車男』などの伊藤淳史あたりとはだいぶ違う。伊藤君のよく演ずるオロオロは、善良さアピールをタテにして卑屈に周囲にびくびく接するという〈周到な押しつけがましさ〉があってイライラさせられるのですが、ベン・スティラーのオロオロには、妙に自己イメージが高く楽天的なキャラクターがにじみ出ます。カッコ良く見られたい、スマートでいたい、落ち着いて泰然としたオトナな所をみせたい、等々といった〈あるべきエエカッコの自画像〉を調子こいて思い描くが実態は全然ついていかなくて、他者や周囲との関わりのなかでいちいち醜態をさらす、そのブザマな反応が人間くさくて愛嬌がある(周到じゃないから、イメージを〈押しつけることに失敗する〉)。異色な『ズーランダー』や『ドッジボール』のキャラクターも、カッコイイふうだけど/大悪党そうだけど、他人からみたらたいへん間が抜けて見えて無様、という共通した指向があります。

『ナイトミュージアム』のお父さんも、息子にいいとこ見せたいし、やるなら頼りがいあるプロフェッショナルな夜警でいたい、という思いの空転ぶりが小道具を扱う気取った手つき等であらわされ、微笑みを誘います。気の利いたハイブロウなギャグなど殆どない、幾分ユルいこの映画が、それでも飽きさせずに最後までそれなりに楽しませるのは、ちゃんと(仕事や復権を)やり遂げるんだ、という彼の、キチンと芯のあるリアクションが全編に行き渡っているから、寒々しい単なるアミューズメント映画にならず、ぬくもりが全体を包み、好感を抱かせます。
ラストでは、ラリーのズレ続けていた自己イメージが実態とピタリと一致、いきいきと生き輝く、というカタルシス。キレイすぎて少し足りない気もしなくもないけれど、あたたかい気持ちになるだけでも充分とも言える。毎度毎度共演している朋友オーウェン・ウィルソンのカメオ出演(ていうには出過ぎ)も、いつもながら心あたたまる関係性だと感じられます。

アッパー・ウエスト・サイドにある〈アメリカ自然史博物館〉は、『素晴らしき日』『スプラッシュ』等、多くの映画に印象的な場面を与えてきましたが、海外ドラマ『フレンズ』の主役のひとり、ロス(デビッド・シュワイマー)が一時期働く職場として殊に印象ぶかい。その『フレンズ』で同じく主役のひとりフィービー(リサ・クドロー)の彼氏役だったポール・ラッドが序盤登場したものだから、これはもしかしたら博物館でロスがチラッと顔を見せたりするかも、とあらぬ期待を抱いてしまいました‥。



(追記‥‥みのわあつお『サタデー・ナイト・ライブとアメリカン・コメディ』という本に、その名もずばり「クリエーターとしてのベン・スティラー①②」という記事がありますが、いかにもパンフに載ってる無難な文章、という域を出ず、「クリエーターとしてのベン・スティラー」について何の新たな発見もない、残念なもので、参考になりませんから、特に読む必要はないでしょう。)

theme : 映画感想
genre : 映画

dream No.08 長谷部優

20070504234957

(前項→舞台版『ハイスクール・ミュージカル』上陸からのつづき)

さて、dreamファン以外には何の事件でもない(というか、そもそも知らない?)でしょうが、この春、dream改名(dream→DRM)の発表があったことは、dreamファンに少なからぬ衝撃を与えた、と思われます。

近年、年に数えるほどのライブ活動と、09山本紗也加の(山本サヤカ名義での)ソロ、08長谷部優のグラビア&女優などのソロ活動以外には目立った活躍もなく、その少ない活動を伝えるはずのメディア露出もケーブルやBS、ネット番組やラジオ等とアンダーグラウンド化して一般の目に殆ど触れず、もっぱらフットサルしてる斜陽のグループ、という印象のある、このところのdream(しかし、その念願の年間優勝を果たしたスフィアリーグも、07年、ガッタス(ハロプロ)の離脱で暗雲が漂う、『恋するフットサル』打ち切りで、dreamの数少ない地上波露出が消えた‥。『サイゾー』の記事では〈TEAM dream〉がまるで悪者扱い‥)。
そのdreamの、7年間の総決算的なベストアルバム&ライブ版ベストアルバムの矢継ぎ早な発売には、グループとしての何らかの新たな展開への予兆がありましたし、3・10〈dream live 2007 Spring〉の超直前、ドタンバでの公演中止の発表(07橘佳奈04高本彩が急性胃腸炎との発表)からは、不吉な風が吹いていました(幸い、4月8日に振り替え公演が無事開催)。

結局、その後、グループ改名の発表と相成ったわけですが、DRM名でのミニアルバムの発売が予告されているくらいで、DRMとしての/DRMならではの、具体的な新展開策が示されているわけでもなく(〈‥アーティスト名を変えて活動をスタートします。これからも進化成長していく“DRM”が発表する作品や活動に、是非ご期待下さい〉)、相変わらず08長谷部優はソロ活動が盛んだし、4・8振り替え公演の内容(ソロの増加や、MCが通常の07橘佳奈でなく、04高本彩&05中島麻未が担当、等)をみるかぎり、活動の個別化が促進されているみたいで、グループとしての躍動がみえてこない感じがあります。
雑誌に載る長谷部優のグラビアに付くプロフィールは、未だに〈dreamの〉だし、ソロ活動が多いからかネットで〈元dreamの長谷部優〉とか普通に書いてる方もいて、どうにも曖昧な改名&ソロ活発化。暮れにdreamがエイベックスからフィットワンに移籍した件も、相変わらずエイベックスで仕事をしていて表面上どう変わったのかみえづらいから、内実が正直よくわからない。数年前のパンクラスの〈全方位外交〉みたいなもんで、追い詰められて手ぶらになった感があり、ジリ貧かつ楽天的な気分で見守っていますが‥。

ミュージカルへのチャレンジが、さして非・dream的であるわけでもなく、これまでのdreamの流れからいって不自然ではないのですが、エイベックスが手がけるミュージカル、舞台版『美味(デリシャス)學院』(5月15日~20日、青山劇場)でmisonoAAAらエイベックス陣と共演する、長谷部優を除いたdream(DRM?)の6人(03阿部絵里恵、04高本彩、05中島麻未、06西田静香、07橘佳奈、09山本紗也加)が〈パンクラスism〉としてパンクラス本隊の興行を守っているとすると、様々なメディアに露出し勝負している〈パンクラスMISSION〉08長谷部優が、まずは〈全方位外交〉の先兵として単身、舞台版『ハイスクール・ミュージカル』に乗り込んでゆくという図式。
露出のわりにキャラの弱さが災いしてか、なかなかブレイクの兆しのない長谷部優ですが、シャーペイというある種もうけ役を掴んだ『ハイスクール・ミュージカル』で、ライト層をとりこんで、dream(もしくはDRM)の名を知らしめることが出来るでしょうか。

03年の『うたばん』(新曲『i love dream world』を引っさげての出演)でのトータライザーの質問「そろそろ売れないと、ヤバいとおもう」に、メンバー8人(現在は7人構成、当時は02阿井莉沙がいたから8人でした)が8人とも、YESのスイッチを押していました。その時点で既に(ながらく売れてない)という状態に、dreamも周囲もジリジリしていたのでした。しかしそんな危機感もむなしく、それからもヒット曲無く実に4年の歳月が流れ、解散させられていないのが不思議なくらいですが、〈(99年時の)オーディションで運を使い果たした〉と一部で揶揄される長谷部優本人は、どこまでボンヤリと楽天的なのか、「あたし結構運がいいほうなんですよね~」と、呑気に先日放映された『クロノス 逃亡者』(22日、フジ)でのたまっていました。

今回の『クロノス~』は、遊園地内をハンターの魔の手から逃げ回り、1時間無事に逃げおおせたら36万円ゲット(1秒につき100円の賞金)するという、オトナの鬼ごっこなわけですが、長谷部優は出演者中ただひとり逃走に成功、メジャーな地上波番組に長時間うつり続けるというdream史上の快挙を成し遂げました。
しかし、長谷部優本人には殆ど自己プロモーションという観念が欠けていて、自分はひたすら隠れてやり過ごそうとし、ゲーム(番組)を活性化させるための様々な仕掛けにも「やだ~あたし行きたくないもん、こういうのは男が行って欲しいよね~」、「行きたくない、行きたくないんだけど私‥」としり込みして、(いいとこ見せよう)という色目をみせません。長年の“鳴かず飛ばず状態”が、そんな精神傾向生んだのか、それとも長谷部優のそんなマイペースぶりが“鳴かず飛ばず”な経過を生んだのか‥。ゲームのルール上、他競技者に迷惑のかかる“自首”(その時点までの賞金が貰えるが、ハンターが増える)という大ヒールな選択肢をフツーに悩みはじめ、終盤、いざ他の競技者が自首すると、ヒドイヒドイヒドイと非難する、そのナチュラルヒールぎりぎりの言動が最高でした。

売れるためのプロモーションとしての、番組出演というチャンス。という意識のない長谷部優の目は、フツーに賞金を見据えていて、ゲーム中「36万もらったら何しよう?」「何しようかねえ?」ともらう前からしきりにワクワクし、あたしがね~多分ね~この中でね~いちばん貧乏だと思うよ~、みんなさーあたしに36万円とらせて欲しいよ~とボヤく姿は、果たしてプロモーションになっていたのか、甚だ心配だ‥。

無事逃げきって、36万円を手にした彼女は破顔して、「ヤバーい、もう死んでもいいー!」と真剣にハシャぐ。7年のキャリアをもつ、dreamのトップスターが、36万で死んでもいいって‥。長谷部優がこれじゃあ、他のdreamのメンバーはいったい、どれほど貰ってないんだろう?と心配になってきます。
露悪的に貧乏アピールしてキャラづけしているわけでもなく、フツーに思ったように言い、盛り上げるとかアピールするとかに関係なく捕まりたくないしお金欲しいからフツーに逃げ隠れする。長谷部優の、エンターテイナーとしての自覚のない地味~な天然ぶりは、キャラ的に分かりづらいし商品価値が発生しにくい反面、押しの弱さが好感の余地でもある。

一見似合わない『バックダンサーズ!』でのジュリ役が意外とハマっていたのは、彼女のマイペース/ナチュラルヒールな側面が上手くフィットした結果でしょうか。そう思うと、舞台版『ハイスクール・ミュージカル』での敵役シャーペイは、そんな長谷部優の魅力が発揮されるんじゃないかという期待にもつながります。

 × × ×

(ところで、本ブログは主に映画を扱うブログということで、これまでTVムービー『ハイスクール・ミュージカル』→舞台版『ハイスクール・ミュージカル』→長谷部優、と触れてきたのは、以降に、05年から女優業に進出した長谷部優出演の映画やドラマをとりあげるための前フリのつもりでした‥ここ10日間くらい、生命の危機を感じるくらい体調を壊していたので、チャッチャとアップ出来ずに間が空いてしまいましたが‥。

〈長谷部優出演作リスト〉

ドラマ○『彼らの海・Ⅶ Wish On The Polestar』(05、テレビ熊本)
   ○『mahora☆ーまほらのほしー』(05、日本海テレビ)
   ○Girl’s BOX『いもうと』(05、BS-i)
   ○『恋する!?キャバ嬢』(06、テレ東)
映画○『痴漢男』(05)
  ○『ラブサイコ/狂惑のホラー』(06)
  ○『真夜中の少女たち』(06)
  ○『バックダンサーズ!』(06)

このうち、『真夜中の少女たち』は別記事が有り、『バックダンサーズ!』『恋する!?キャバ嬢』については〈2006年日本映画ベストテン〉の記事で軽くけなして触れただけで個別記事はなし、ということで、テキトーなスパンでとりあげていきたいと思います。ファンから評価高いのは『彼らの海・Ⅶ Wish On The Polestar』ですが、個人的にベストだとおもうのは『いもうと』篠崎誠!)です。)

(以下、別記事へつづく。)

theme : 女性タレント
genre : アイドル・芸能

舞台版『ハイスクール・ミュージカル』上陸

(前記事→海外ドラマ『ハイスクール・ミュージカル』からのつづき)

さて、あいだがだいぶ開きましたが、前々記事で、TVムービー『ハイスクール・ミュージカル』について書きましたが、その世界的大ヒット作の舞台版がもうすぐ日本で観られる、ということを言うための前フリだったのでした。

キャストも発表されましたが、かんじんの配役は主人公のトロイを小山慶一郎が、ガブリエラを玉置成実が担当し、ライバルのシャーペイを長谷部優が演じる、ということまでは知っていますが他のは知らない。きっと松金よね子が演劇部の先生で、速水けんたろうがバスケのコーチでもあるトロイのお父さんなんでしょう。

今回上演されるのは、今年の1月にアトランタで上演されて好評を博した舞台版『HSM』の翻訳版だそうで、主演ふたり(小山、玉置)はそのアトランタ版を現地で観賞したそう。すでに去年、ブロードウェイミュージカル『スウィート・チャリティー』で初出演かつ初主演を堂々とこなした玉置成実さんのほうはきっと平気でしょうが、ミュージカル初体験だという小山くんのほうは大丈夫なんでしょうか。ジャニーズのなかでは関ジャニ∞NEWSにはあんまり興味がなくて、小山くんは『ナースあおい』の看護士見習みたいな役やったひと、位の認識しかなく、歌唱力やダンスがどうだとかいった印象は特に何もなくて(先日の『とくばん』での中居くんによる、オヤマかコヤマか分かんねえみたいなネタがありましたが、自分の認識もそんなもの)、ほぼ手ぶらでその歌や踊りに接することになります。

いかにも関西的な、太い神経してるイメージのある玉置成実がガブリエラで、どことなくクラい長谷部優がシャーペイという配役は、なんだか逆じゃないかという感じもしますが、完成度は高いが声域が狭くフラットな印象のある長谷部優の歌を“咬ませ”として、玉置成実の歌声の不安定だが張りのあるパワフルさを対比的に配置するとすれば、間違ってない気もする。よく考えたら長谷部優は『恋する!?キャバ嬢』『バックダンサーズ!』で、意外とアーパーな役柄もいけると証明したわけだから、シャーペイ役みたいなのもドントコイなのでした。

玉置成実は2004年前後は、本当にクラクラするほど輝いていました(03年暮れの『Prayer』くらいから、04年『Shining Star☆忘れないから☆』『大胆にいきましょう↑Heart&Soul↑』を経て、05年初頭のムック『TN』発売&PS2『ラジアータストーリーズ』出演、あたりまで)。それが05年春の『ブブカ』によるキスプリクラのスクープ辺りから、凋落の一途を辿りました。デビュー期をささえたオタク(SEEDオタ?)層は離散していったと思われたし、その笑顔が有していた幻想力も失った。支持層/購買層の人々に、(コッチ側に理解を示すと思わせた“笑顔”も、ナンダ、結局DQNに向けるんじゃん‥)と悟らせ、いわば「萌え余白」の消滅が商品価値の下落を生んだと思われます。
そうして楽曲的にも本人的にも輝きがグングンくすんできて、そのまま消えゆくかと思われましたが、なんだか、いつの間にか〈歌とダンスも達者な、関西のネエチャン〉というポジションの〈アクター〉として復活してきたのでした。


ディズニー・チャンネルプレゼンツ
『ハイスクール・ミュージカル』

演出:菅野こうめい
振付:リサ・スティーヴンス
出演:小山慶一郎(NEWS)、玉置成実、長谷部優、山崎裕太、シュー(SHOO)、植木豪、速水けんたろう、松金よね子、ほか

○6月12日~28日
東京公演(青山劇場)
○7月5日~7月8日
大阪公演(NHK大阪ホール)


(長谷部優についてはべつにして、次の記事(→『dream№08長谷部優』)で。)
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