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『邪魅の雫』のリーフレット

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どんどん刊行される間隔が長くなってかんじる京極夏彦の〈京極堂〉シリーズ、新作長編がやっと出た。『邪魅の雫』。3年間隔とかで出されると、前作のキャラとかが再登場しても誰だったっけとよく思い出せないまま読み進める羽目になるから旧キャラを再登場させないでほしいと思っている、個人的には。釣り堀屋の伊佐間あたりまではなんとか分かるのだけれど、織作家の誰それ、とかが出てきてももうよくわからない。という事態に幾たびも陥って、困惑を重ねていました。

で、書店においてあったリーフレット、『講談社ノベルス京極夏彦全作品解説書』。シリーズ全作品のあらすじと人物相関図などが載っていて、これをチャチャッと読めば、邪魅の雫、読んでも大丈夫かな‥‥?という気にもなります。シリーズ作どれもこれも長大だから、いちいち再読してられないもの。

(〈京極堂〉シリーズ、個人的なベストは『狂骨の夢』。愛着があるのは『姑獲女』、ヒトに薦めたいのは『魍魎』ですが、ヤルナと初めておもったのが『狂骨』。それまで、どこか京極夏彦をアマチュア視していましたが、もうアマチュアじゃなくて、プロだ、と思わされたのが『狂骨』でした。)

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theme : 推理小説・ミステリー
genre : 本・雑誌

『銀曜日のおとぎばなし』

20061002231057
『銀曜日のおとぎばなし』(萩岩睦美)というりぼんの漫画に出てくるスコットという男のひとに似てる、と、アルバイトのNさんに言われて、読んだことなかったので読んでみました。集英社文庫版で全三巻。〈新月の銀曜日に生まれた一千人目の女が死ぬとき/それは/部族のたえるとき〉という言い伝えの存在する、小人とも妖精ともつかぬような森の部族に生まれた一千人目の子供・ポーと出会い、人間ながら交流を深め、奇妙な運命の流転に遭遇することになる青年がスコット。スコットのどのへんが自分に似てるのかよく分からない。絵が可愛い。

theme : 少女マンガ全般
genre : アニメ・コミック

ドラマ『がきんちょ リターン・キッズ』

『がきんちょ リターン・キッズ』
(全45話)

(TBS系、月~金、13時30分~
出演:辺見えみり、美山加恋、高杉亘、いしのようこ、有森也美、遠藤久美子、藤村俊二)

こないだの金曜日、TBS系の昼ドラ、『がきんちょ リターン・キッズ』が最終回をむかえました。
全45話の長丁場。正直、最初はノれなくてどうなることかと思いましたが、いつの間にやら心待ちするようになり、最後には名残惜しく、いつまでも続いてていいのに、とおもうようになった。
毎日毎日欠かさずみる、という生活サイクルは、演出や演技の優劣や、作品の出来不出来、細部の辻褄といった採点主義的な見方などツマラナイものだとこちら側を武装解除したうえで、無防備になった心に“なにか”を浸透させてきます。

なにか、とは『がきんちょ』のばあい、その最大のものは、大子町の視界いっぱいに広がる緑でも、さまざまなキャラクターへの愛着でもなくて、一にも二にも、笑顔だ、とおもう。ことに、美山加恋の顔いっぱいで表現される笑顔に、その魅力が集約される。(そして、カカ/いしのようことトト/高杉亘の全てを許容する柔らかな微笑。)その魅力の対極にあるのが、反・笑顔的な存在である主役・オオマチこと辺見えみりの佇まいだ。

田丸マチ(辺見えみり)は幼いころ、夏川モモ(遠藤久美子)とアイドルユニット〈ぱれっと〉を組んでいたが、それも今は昔。大人になった今、何事にも中途半端なまま、怠惰な日々を送り、大して好きでもない男と「ま、いいか」と結婚しようとしている。
その結婚式直前、真知は気を失い、目覚めるとそこは18年前の故郷・大子町。そこには9歳の自分、9歳のモモ(美山加恋)、そして今は亡き、優しかった母(いしのようこ)がいた。。

〈さまざまな心の触れあいを描くファンタジー・ドラマ。笑って泣けるポップな作品〉と銘打たれたこの昼ドラ、人生の岐路にたたされた女性=辺見えみりが、古きよき時代にタイムスリップし、今一度自分を見つめなおす、という物語の骨子をもちますが、それを口実にして、田舎の風景のなかいきいきと遊びまわる子供たちが活写され、東宝の『学校の怪談』シリーズのような様相を呈する。7月31日から始まったこのドラマは、普段のターゲット(主婦層)に加えて夏休みで家にいる若年層も取りこむという例年通りの狙いで、大人の女性の物語と並行して、子供の世界にも重点をおいて描かれます。
同様な形式の、人気シリーズでもある『大好き!五つ子GOGO!!』とほぼ同時期にスタートした『がきんちょ』ですが、『五つ子』が物語の構成、大人と子供のエピソードの配分等、バランスの良い佳作に仕上がっていたのに対し、『がきんちょ』は何かうまくいっていない印象が初っぱなからつきまとっていました。さまざまな要因が挙げられるにしても、その最大のものは、子供側の話だけが活発に語られる一方で、主人公であるはずの辺見えみりに(ほぼ終盤に至るまで)物語の進行に参加する権利が与えられていない点でしょう。

気乗りしていない結婚式当日、フテた表情の辺見えみりが花嫁衣装をまとったまま、とつぜん緑豊かな18年前(1988年)の故郷にもどる。そこで出会う、さまざまな“あの頃”の人びと。今はなき母(カカ)、いまも健在だが元気いっぱいだったころの父(トト)、のちに〈ぱれっと〉を組むことになるチャイドル・夏川もも、幼い弟、そして18年前の自分(真知)。。

子ども時代の自分との区別をつけるため、大真知(オオマチちゃん)と呼ばれることになる辺見えみり(9歳の子供時代の真知/鈴木理子は小真知(コマチちゃん)と呼ばれる)が主人公として、物語は進行してゆくのですが、18年前の人びとにとっての乱入者である筈の、どこの馬の骨ともしれぬ不審人物のオオマチ=辺見えみりを、田舎のおおらかさをもった田丸家の人達は(まあ、訳ありなんだろうね)くらいの軽さで居候として易々と受け入れてしまう。元々、目的や強い願望を伴ってタイムスリップしてきたわけじゃないオオマチちゃんは、なすべき使命や目標もなく、タイムトラベラーという属性もほとんど剥ぎ取られ、“異物”としての存在感を失い、物語の展開にあまり関与しないタダの居候として、ドラマの端っこに居心地悪そうに佇むことになる。

18年前の世界において、オオマチちゃん/辺見えみりに与えられた物語としては、
①「ま、いいか」が口癖のハンパっ子えみりが過去での経験を経て“反・「ま、いいか」”な自分に成長するという必然的帰結。
②愛する大好きなカカ(いしのようこ)に本意でない暴言を吐いて家を飛び出し、和解するまえにカカを亡くしてしまったことへの後悔の解消。
の2点が用意されてはいるのですが、②は誰もが予想するように、カカの深い愛のまえでは遺恨と思っていたのは真知の側だけだったことなど、正面むいて会話すれば一瞬で判明してしまうことなのだし、①については、オオマチちゃんと同じく、「ま、いいか」なパーソナリティの持ち主であるコマチちゃんの勇気をだしての殻を破る成長ぶりのほうが(オオマチちゃんの成長より)ずっとドラマチックで、〈ぱれっと〉オーディションでの頑張り等、勇気をもって一歩踏み出せる力を有したコマチちゃんの姿と比べて、その後の姿である筈のオオマチちゃんのほうがかえって退化しちゃっているんじゃん‥と失望に近いウンザリ感に支配される。自然、モタモタしたオオマチちゃんパートは置いてけぼりとなり、コマチちゃんーモモのドラマばかりが躍動してゆくことになります。

さて、そのようにして、肝心な、根幹の大人のドラマは不在のまま、子供の物語が大勢を占めてすすんでゆきます。スター・夏川モモを擁する、2人組アイドルユニット〈ぱれっと〉。その相方の離脱に伴い、巡回オーディションが大子町にやってくる。引っ込み思案で何事にも飽きっぽいコマチちゃんが、そのオーディションに向けて奮闘し、一方夏川モモ(美山加恋)はそれに対して、小悪魔じみた笑顔のしたにある策略を秘めてコマチを新メンバーに強くプッシュしたうえ、田丸家に強引に居候を決めこむ。

語り部である主人公オオマチちゃん、そしてその過去の姿であるコマチちゃんは、どちらにしても甘やかされたヘタレという、苛々させる人物像に大差はなく、せっかくの夏の田舎の景色も台無しなウジウジ感が支配し、フラストレーションをかんじさせるなかで、はじける笑顔と行動力の裏に、両親の不和という悩みを抱えた陰影をもつ、モモ/美山加恋のキャラクターが輝き、物語世界をグイグイ横断してゆく。

辺見えみりが田丸家に居候している状態であるのがやはりどうも不自然であるところへ、表面上は元気よく飛び込んでくる美山加恋の、無邪気“ふう”のハシャぎようは、そこに居ることに違和感を感じさせず、ついでに辺見えみりがいることもうやむやに不自然でなくさせてしまうような力ももつ。
物語は以下のようにモモ/美山加恋を中心にすすんでゆきます。両親との確執、モモのための「最高の夏休み計画」(牧場体験や怪談大会)、モモのささいな嘘と性悪娘のマユカによる陰湿なイビリとささやかな奇跡、多忙で通えなかった“学校”“授業”を体験する喜び、タカユキとの家出、リーダーシップをとって子供たちを束ね『ぼくらの七日間戦争』ふう騒動を起こす、など‥。オオマチちゃん/辺見えみりの、牧場のシロウさんとのロマンスなど所詮フェイクだったし、あまりにもないがしろにされているコマチちゃん/鈴木理子はふてくされ続けたまま見せ場もなく物語の舞台から消え去ってしまう。8月放送分で過去の世界から辺見えみりが飛び、舞台は現代に移る(ダンバイン方式?)のですが、9月放送分=オトナ月間に移行しても、もはや『がきんちょ』というドラマのハートであり魂であるモモ/美山加恋は、ドラマ上の要請かどうかとは無縁に、現代にタイムスリップしてきて再び視聴者のまえに姿をみせる。

それだけ、美山加恋が終始ドラマの中心で光り輝いていたということで、オオマチ・コマチはそのアオリをくったとも言えます。言いようによっては変質者の非人間扱いされる危険もあるので、慎重かつ簡潔にホメねばなりませんが、“どうしようもなくワガママ”という設定もあったモモ/美山加恋が、次第に陰影を獲得すると、トレードマークの満面の笑みや、細い腕を思いっきり上に伸ばす仕草も、曇りない明るさを伴っているだけにかえって切ないものとなる。切ないと、また明るさが一際輝く。歯ぐきを全開でみせる、女の子特有の120%の笑顔が、どこか120%のものに見えなくて、一足早くオトナになりすぎた、弱くて強い少女像に結晶化する。

福田麻由子、志田未来に準じる子役スターとしての美山加恋は、前者二人(福田、志田)がつよく暗い瞳を有し、その瞳で世界の真実を射抜くような強い視線を放ち、オトナにならざるをえなかったその笑顔の少ない表情が、クライマックスで破顔一笑するとき大きなカタルシスをもたらす、という共通した特徴をもつのに対し、一見いかにも子役で子供で、日常的にいっぱいの笑顔で振る舞うなか、常に暗い傷ついた心をもちつつ、子供をしっかりやりながらオトナなことに笑顔で振る舞う。欠落を抱えた福田らがその暗さを表面化しているのに比べ、『がきんちょ』の美山加恋は決して大きくない瞳に時折世界の真実を見据えてチラリと潤む。与えられてこなかった者としての歪みを有してオトナになった福田らと、与えることができないという自覚が歪みとなる美山の差異は、そのままこのドラマの構造ともダブる。

〈笑顔/世界理解〉をかかえてヒトを許容し、他人に元気を与え続けるモモ/美山加恋・トト/高杉亘・カカ/いしのようこら、〈笑顔的人間〉の側のベクトルと、オオマチ/辺見えみりに代表される、イヤなことはすぐ顔や態度に出て、元気や笑顔をひとに(〈笑顔〉側の人間に)与えられ続けて、ようやく前進できる未熟な、くすんだ笑顔をもつ〈反・笑顔的人間〉の側のベクトルとが、葛藤を繰り広げるという図式。いくら破顔してもちっとも良い笑顔じゃない辺見えみりのみっともない表情は、ドスドスと重たそうな走り方と相俟って、まさに〈反・笑顔〉の権化という有り様だったが、終盤、〈反・笑顔〉のタカユキに笑顔をもたらすことにより、ようやく元気を与える〈笑顔的人間〉になる一歩を踏み出せたのだった。

辺見えみりが〈笑顔的人間〉として継承が認められたとき、カカ/いしのようこによるタイムスリップの呪縛が解ける。そのとき、必然的に美山加恋の現在からの消滅を招くことになる。『がきんちょ』というドラマの魂であった美山加恋の消滅はこのドラマの終了を意味した。そのモモ/美山加恋は最終回、ようやく両親の振る舞いに〈笑顔的人間〉の役割をみた。心の暗い傷を癒す、遠い遠い未来から贈り物が“与えられ”たのだった。

theme : ドラマ
genre : テレビ・ラジオ

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ししらいぞう

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