『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』(日本テレビ系、土曜21時〜
出演:長瀬智也、新垣結衣、香椎由宇、手越祐也、田中聖、大杉漣、市村正親)
ドラマの面白さの不思議。この『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』、頭ではヒドい出来だなーとおもっているのに、気づくと次の回をみるのが楽しみになっています。
実はヤクザの長瀬智也が、ステップ/スキルアップのために別の身分に身をやつすというプロットは、早くも名作となった『タイガー&ドラゴン』と同趣向ですが、ありとあらゆる面で『タイガー‥』が勝り『マイ☆ボス‥』が劣る。ヤクザ一家の者が身元をかくし学校という共同体に入り込み、ヤクザ的なパーソナリティにより学園生活に波紋をよぶのも『ごくせん』であったし、年いったひとが高校生となって、やり遅れた青春時代を取り戻すのはドリュー・バリモアのラブ・コメディ映画『25年目のキス』(99、ラジャ・ゴズネル)でもあった。それらのどれをも『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』は超えていない。だいたい、27歳でバカだがケンカが強いのが取り柄の二代目が、跡目を継ぐため組長である父の命令で、高校3年の1年間だけ学園生活をおくり、卒業をめざす、という基本設定じたいムチャクチャ強引。いちおう原作となっている同題の韓国映画(『マイ・ボス マイ・ヒーロー』(01年、ユン・ジェギュン監督、チョン・ジュノ主演)、暗い暴力的な学園アクション)から来ている設定だとしても、未だ学歴社会である韓国だからこそギリギリ(?)通用する
(?)設定であっても、日本ではかなりムリがある。長瀬智也が学校に行かなくてはならない必然性が弱いから、とってつけたようで、彼の苦悩、葛藤も、話を引っ張っていかない。ヤクザ社会の文化圏に属する長瀬くんと、一般的な高校生や高校教師の文化圏との差異が、シチュエーション・コメディになる恰好の設定なのに、ギャグは微妙にヌルく、マトをはずす‥。『ごくせん』のギャグだってヌルいっちゃあヌルかったけど、もう少し効果的に設定をいかしていたと思います。
そのうえ、キャラクターの造形が薄っぺらい。長瀬智也は無理な設定に困るかのように、生身の人間的な滋味がにじまず、極端な面相芝居にはしる。バカなヤクザとして突っ走って生きてくると、27歳まで恋愛感情を知らずにいるの?という疑問も。。プリン好きというキャラの足し算も、とってつけたみたいでいつまで経ってもそぐわない。そのキャラクターの深みのなさは、『タイガー‥』や『池袋ウエストゲートパーク』でのガラの悪い役の長瀬くんと比較してみるとはっきりすると思います。
長瀬くんが勉強出来ないことや学生としての常識がないことをちゃかすクラスメートたちの画一的な反応。香椎由宇や新垣結衣のヒロインも表面的なキャラクターでハートを感じるのが難しい。新垣→長瀬、香椎→長瀬、長瀬→新垣などのほのかな好意が描かれるが、誰も恋しているようにはぜんぜん見えない。香椎由宇の色気づく気持ちをあらわすのが、メガネ→コンタクトにする、って、一体いつのテなんだ‥‥と呆然とする。
しかし、ここに、しっかり恋しているようにみえる人物がいる。長瀬くんの、クラスでの唯一無二の友人となる、手越祐也。テレビ情報誌をみると、人物解説として〈学校に意義を見いだせず、人を寄せ付けないオーラを放つ〉とあり、相関図では長瀬智也とは〈友情〉のラインでむすばれているのですが‥‥‥、彼はとにかく長瀬くんに恋に恋しているようにしかみえない!!!!
乙女だ。憂いを含んだ、黒目の大きいパッチリした瞳。切なくすがるような視線。ピンク色に濡れた唇。〈人を寄せ付けない〉はずの彼が、コワモテの長瀬くんにキラキラした瞳で近寄ってゆく。何かにつけて「マッキー(勝手につけたあだ名)!!マッキー!!」と乙女走りでいそいそと駆け寄って、あれやこれやと世話を焼く。クラスの女が気安く長瀬くんに話かけたりすると(何しに来たんだよ邪魔だな‥)みたいなライバル視した眼で不服そうにギロリとみて憮然としてしまう。。クラスで権力者でもないから発言力もないのに、マッキー(長瀬)を悪く言うやつがいるとTPOもお構いなしに熱くマッキーを擁護し、悪く言うやつを罵倒する。熱い。そして恋い焦がれている。いったい、そういうドラマなのか?と混乱する。
だけど彼の異様な恋情にあてられるようにして、このドラマが面白く感じられだしました。べつに彼がホモである必然は何もないのだが‥‥。薄っぺらくない、熱いハートがあるのは乙女な彼が抜きん出ているのだから、異様だが彼に視線が集中する。そうすると彼の(乙女っぽい)一挙一動、(乙女っぽい)言動が可笑しくてしょうがなくなった。そうすると長瀬くんの舎弟である田中聖の、あまりに一途な“アニキ☆命”っぷりもアヤしく思えてくる。ぜんぜんリアリティのないヤクザ描写も含めて、全般、女性目線のやおい系のドラマなんじゃないかと感じだした。と思ってみてみると脚本大森美香とあった。ドラマ『きみはペット』、『ランチの女王』(←オムライスがメインメニューのひとつだった洋食屋をやっていたことのある者としては、あのやり方じゃ美味しいオムライスにならないと断言します)、映画『恋文日和』、『2番目の彼女』‥。じつに女オンナした映像作品ばかり、それも繊細で曖昧なほうのオンナっぽさじゃなく、粗雑な妄念みたいなほうの‥。なぜこの題材でこのひとの起用かサッパリわからないが、そのあまりの雑さが、かえって気持ち良い。たとえば
三者面談を行うという担任の宣言に、女生徒たちが、三者面談ってなに?担任と親と生徒で進路について話し合うことよ、みたいな露骨すぎる説明ゼリフを口にする、長瀬くんにきかせるために。ヒドい。でもオカシイ。そんなオカシイ粗雑さが全編を覆う。知性の感じられない種類のオカシサだから、狙いでない襲ってくるオカシサは予測困難。
長瀬智也の良さは思いきりよさ。慣れない学園生活に肩身せまく小さくなっていたとおもうと、突然ド大声でがなる!!ふっ飛ばす!!ツバの大量に飛び散る勢いそのままに、針を振り切ってリアクションする。睨みつける表情も、やりすぎの度を超えてヘン顔にしかみえない。照れや迷いがなく、やりきる。だから設定/物語/キャラクター、どこに無理があっても空回りしない。
香椎由宇と新垣結衣という、比較的女性から反感を買いにくそうな新進女優がヒロイン的ポジションに配され、しかも男性陣との恋愛沙汰は薄く嘘っぽいとあれば、女性目線としたら安心してボーイズラブ的世界を邪魔されず、存分に堪能できるというもの‥。そのために女優さんたちのキャラがうすいのだろうか‥。
しかしこれは男性側、というか個人的には大変不満がある。正直、香椎由宇も新垣結衣も、たいへんヒイキにさせていただいているので、その魅力が発揮されていないと、やはりものすごく物足りない。
しかし、香椎由宇に関しては、よく考えたら、というかよく考えなくても、香椎由宇が映画やドラマで魅力的だったことなど数えるほどしかなかったのだから、いまさらガッカリしても始まらないのかもしれません。まだ10代なのに、冷徹で硬質な雰囲気をまとった美しい女教師、という役(長瀬くんには「鉄仮面」と呼ばれている)を堂々と演じる頼もしさを、楽しむことが賢明でしょう。
『ドラゴン桜』でブレイクの新垣結衣は、茶髪のギャルメイクだが中身はだらしなくない、凛と涼しく透き通ったかんじが、山下智久への恋情の哀愁を際立たせて秀逸だったのでしたが、彼女本来のキャラクターは黒髪かつ沖縄らしいヌボーとしたスローリーなかんじらしくて、『マイ☆ボス‥』でのひかり役も分類したら『トゥルーラブ』系統と同列の爽やかな明るい一面的なキャラクターだから、彼女にとってこちらが本線のはずで、その線で支持がなくないから“『BOMB』で特集が組まれる”(8月号)という〈一線級のアイドル証〉も手にした。だからそれでいいのかも知れないけど、もう少し深みや憂いがないと物足りない‥と思っていると、あれやこれやで長瀬くん演じる榊真喜男と仲違いする新垣さん、本当は好きなのに、「マキオくんなんかだいっ嫌い!」と叫んで暗い顔して走り去る。そのあとも和解するまで憂い顔。。その想いを秘めた、うれいある心と裏腹な明るい表情と佇まいに、新垣さんのある側面の魅力が発動して、グッときた。まあ、ただ単にそれが自分の趣味なだけなのかも知れませんが‥。
(田中聖に関しては、こういうタイプの人間の魅力がまったくわからないので、『マイ☆ボス‥』での彼がいいのか悪いのか、判断がつかないので何とも言いようがない。。)
さて、全般的に、好意を表明するつもりが悪口ばかりになったのではないかと気がかりですが、襟を正して観る要素がこれだけ全く無いと、面倒くさいことなくただ楽しくみれる。(ってこれも悪口ぽいかも‥。)今日も帰ったら、録画してあるはずのこの楽園感に満ちたホモドラマを楽しく観たいと思います。
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genre : テレビ・ラジオ