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再読のきっかけ  柔道部物語、石川淳

○柔道部物語
4・29『DREAM.2』、三度目の正直でついに決着がついた、“『やれんのか!』vs『HERO’S』頂上決戦”であるところの青木真也×JZカルバン戦。この試合の前後近辺のインタビューで、青木真也がしきりに『柔道部物語』(小林まこと)ネタを連発していました。

カルバンのリッパすぎる極太マユゲが『柔道部物語』の主人公・三五十五を連想させることから端を発して、カルバンを三五十五呼ばわりし、「ザス、サイ、サ!」、「俺ってストロングだぜぇ~」等のタームが記事中に踊っていた(「ストロング~」はkamiproの誘導アリ)。それをみていたらフツフツと10年ぶりくらいに読みたくなり、ウチの本棚を漁ってみましたが『柔道部物語』は何故か5巻までしか見当たらない。仕方ないから5巻までを読みましたが、やっぱり相当面白い(試合パートと、日々の部活動、練習パートが同じくらい面白いマンガはそうそうない)。
しかし、西野が出てくるよりまえに途切れてしまい、次が読みたくて悶々とする。改めて家の中を探しなおしてみるがやっぱり見つけられなくて、以来、6巻以降をもとめて地道に近隣の数々の書店、古本屋近くを通るたびに覗いてみましたが、文庫版はあったけどヤンマガKCスペシャル版が見つけられない(文庫版を買う気はない)。ネットで本は一切買わないと決めているためネット発注という手はないので、そっち系の古本屋が充実している街に足をのばすしかないようだけどなかなか時間がとれない‥。
そういえば当時というか90年代、『柔道部物語』信奉者で漫画家志望の友人Yさんが、『帯をギュッとね!』(河合克敏)や『そばっかす!』(きくち正太)なんかをその都度『柔道部物語』と比較していちいち批判していたことを思い出した。僕がその頃唯一毎週買ってまで読んでいた少年漫画誌が『週刊少年チャンピオン』だったこともあり、『そばっかす!』について特によく語った気がする。
でその、じつにチャンピヨン臭の強かったきくち正太のマンガ(『おせん』)がまさか、テレビドラマの原作として採用され、毎週ゴールデンに放映される日が来るとは思わなかったな‥としみじみ。

○石川淳
ブログの記事を書くさいは、関連した直接的な資料にあたるほかに、書くとっかかりのヒントになりそうな書物・雑誌のバックナンバー等をパラパラめくって再読する、というのが通常の自分の手続きになっています。

前々記事『Girl's Box/ラバーズ☆ハイ』の場合は、〈アイドル映画=少女映画〉ということで、引用もした中森明夫『アイドルにっぽん』のほか、『Quick Japan』『STUDIO VOICE』等のアイドル特集号、澁澤達彦、森茉莉、四谷シモン関連本などをなんとなく読み返していましたが、金井美恵子『添寝の悪夢 午睡の夢』に少女についての章があったのを思い出して開いてみると、〈少女〉という巻頭ちかくの短いエッセイで、石川淳の短編『喜寿童女』について言及されているのを見て、『喜寿童女』を再読。その流れで、久しぶりに『石川淳全集』(筑摩書房版)をポツポツと再読しはじめています。石川淳の文章は旧字・旧仮名じゃないとどうも感じが出ないので、簡便な文庫版ではなく不便だけど全集か単行本での再読ということになる。

そういえば、音楽家にして文筆家である、菊地成孔のエッセイ集『歌舞伎町のミッドナイト・フットボール 世界の9年間と、新宿コマ劇場裏の6日間』のなかで、〈石川淳の凄絶なピカレスク小説『はんかい』(←ケータイでは字が出ん)〉という一節があり、ハテ石川淳にそんな小説あったっけ?と『石川淳全集』をひっくり返したのが前回、数年前のプチ石川淳再読週間の発端でした。

結局、『はんかい』なる小説は存在せず、菊地成孔の虚言であることが判明した。『歌舞伎町のミッドナイト~』内の別の一編に〈ドミニク・ノーゲスの『レーニン・ダダ』っていう、これまたもの凄いインテリが嘘を平然と書いて、全く説明がないという本にインスパイアを受けた〉という記述があり、そういうスタンスが、菊地氏のケムに巻く性質とフィットしての虚言の表出だった。ということに、一応落ち着く。ひとつの嘘を確かめるのに結構な手間がかかって、いい迷惑だ。

石川淳というと、短編をベストに挙げるのが通、という雰囲気がありますが、自分が最も愛する石川淳の小説は未完の長編『蛇の歌』。後期の長編小説群、『狂風記』やら『六道遊行』やら『天門』やらには、ちっともピンと来ないというよりむしろ退屈してしまうのに、これらの長編群と大した違いのない『蛇の歌』には何故かいつもドキドキしてしまう。たぶん、石川淳の小説がどうのという以前に、“未完”であることに魅惑されているだけなのかもしれません(大岡昇平だと『堺港攘夷始末』が一番好き)。
どういう方向にも集約していかないとあらかじめ判明している『蛇の歌』の、シンプルで不思議な世界に一歩一歩入ってゆく感覚は、夜、眠りにつくまえの読書にぴったりで、文章の静かで心地良い語りに誘われるように、次第に微睡んでゆく。その未定の、無方向を予感させる語りが、夢にむかう感覚とディゾルヴするようにして、誘眠剤がわりになるのでした。

これもまた、凄くどうでもいい話を思い出しましたが、小学校高学年のとき、掘留くんと合作でマンガを大量に書いていて、それをいちおう製本して学級文庫として教室のうしろのスペースに置いていたことがありました。そのうちの『泥棒物語』『太平洋戦争』『江戸時代末期』などのマンガ群は、殺人が無機質に延々と連鎖するだけのおはなしだったのでしたが、のちに高校生になってから石川淳の『無明』を読んだとき、こりゃ僕たちが書いていたマンガそのまんまじゃん!とビビった。(その頃なんで『無明』なんか読んだかというと、『小説新潮』か何かの〈好きな短編小説ベスト3〉とかいうアンケートで、『ゼウスガーデン衰亡史』で正直絶頂期だったころの小林恭二が『無明』を1位に挙げていたから。)
思い出してばかりいるとキリがないのでもうやめます。

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theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

読書日記?

このところ、夏のメニュー替え準備等で多忙をきわめて、身も心もガタガタになっていましたが、ようやく峠を越えて少し落ち着いてきました。
『使い捨て店長』(佐藤治彦編)なんて退屈な新書をわざわざ読まなくても、何年も飲食業界で“雇われ店長”をやっている者であれば、誰でもここに書いてあるようなことくらいは身にしみるように知っているでしょう。今の会社に入って、現場で数週間休みなく働きはじめそして働き続けたとき、毎日大釜の前で長時間熱に炙られながら、こりゃ高村薫『照柿』の(というか、プロレタリア文学の)世界だな‥と感じていました。

金も休みもなくて、どうしたもんかと思いますが‥‥それでもなんとか都合をつけてペドロ・コスタとクローネンバーグの新作くらいは劇場で観たいと思いますが、果たしてどうでしょうか。観にいける本数が限られすぎていてなかなか独自のラインナップが組めず、観る映画がどうしても保守的なセレクトになってしまいがちなのが近年の悩みです。

『使い捨て店長』は内容がどうのという以前に、文章が味気なくて読み通すのが苦痛なシロモノ。新書ブームな昨今ですが、このテの味もそっけもない書物の氾濫を目にしていると、セカチューやらディープラブやらの刹那系の短絡的な小説群のブームのほうがまだ健全だったかもとおもう。本を読むということが、〈知識を得たりスキルを身につけたりするためのツール〉として期待されるというビンボーくささよりは、快楽を得るために読む。というほうが、圧倒的に健やかなんじゃないかと。

映画関連書でいうと、最近話題の(?)藤井仁子編『入門・現代ハリウッド映画講義』なんかは、確かになかなか刺激的だし必読の映画本だと思いますが、どうも教科書然とした文章が馴染まず、イライラする。丁寧丁重、そして退屈。いかにも大学の先生たちの書いた文章群。日本のある水準の映画ファンは、おそらくこれまで、素晴らしい映画本のいきいきした文章を浴びるように読んできたはず。そうした目からみると、昨今の啓蒙的で退屈な映画本の氾濫は一体どうしたものかと首を傾げずにはいられないんじゃないか。加藤幹郎の著作群とか、犯罪的な退屈さだとおもう。

そんななか、月刊誌『シナリオ』別冊の『脚本家 白坂依志夫の世界「書いた!跳んだ!遊んだ!」』が出ました。隅から隅まで、切ったら血の出るような文章群が載っています。そのなかでもやはり、連載時からごく一部で話題だった『人間万華鏡(カレードスコープ)』。スゲェ‥。

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

『男気万字固め』『本業』

200705130000422

吉田豪『男気万字固め』
(幻冬舎文庫版)

浅草キッド・水道橋博士『本業』
(ロッキング・オン)

ながらく入手困難だった、吉田豪の単行本デビュー作『男気万字固め』が、幻冬舎文庫からボーナストラック付きで再刊されました。
名著と名高い、男気溢れる破天荒な著名人たちへのロング・インタビュー集である本書、幻のムツゴロウインタビューは今回も惜しくも収録に至りませんでしたが、ボーナストラックとして本宮ひろしインタビューと乙武洋匡との対談が新たに収録されているので、旧版をすでに所有しているかたも買わざるをえないでしょう。(吉田豪は最近、元アイドルへのインタビュー集の第2弾『元アイドル2』も上梓、こちらも相変わらずたいへん面白い。)

日本一のインタビュアーとも賞賛される吉田豪の、インタビュー時に発揮される博覧強記のデータ魔ぶりは、ほんらい〈ライフワークであるタレント本の書評〉や様々な文筆活動でこそ本領発揮というか本道で、古本鬼としての本道の派生ワークとして〈インタビュアー業〉は位置付けられると思います。
〈インタビュー集みたいな形式だと単行本も比較的簡単に出来る〉〈単行本がインタビュー集ばかりなのは、要するにそういう理由〉と本人が述べているように、少しずつ重ねてきたが必ずしも本意ではない著作の傾向から、“名インタビュアー”としての顔ばかりがクローズアップされてそっち方面の仕事ばかり増えたとしたら、優れたライターとしての吉田豪が無駄に消耗していくのではと多少なりとも心配する。

そもそも、吉田豪のインタビュー記事が破格の面白さを誇るのは事実なのですが、対話によって初めてその人の新たな側面が浮かび上がるという“インタビュー”という形式特有の緊張感ある魅力を、吉田豪のインタビュー記事が有しているかどうかはかなり疑問があります。徹底したリサーチ作業によってピックアップされたトンデモな事実なりエピソードなりを、聞き手(吉田豪)の都合のいいような順番の配置で本人に再確認していくという吉田豪方式は、対象者に関する知識量が圧倒的に多いことを別にすれば、街頭インタビューやスキャンダルの記者会見時に書き手の都合のいいコメントを誘導的に引き出そうとする愚劣なインタビュアーと大差ないやり口であって、いわばヤラセのドキュメンタリーに近いものがあり、はじめから狙いに沿った返答しか期待されていないきらいがある。

インタビューは受けたものの、単行本への掲載を断った西川のりおに、水道橋博士が尋ねると〈あのインタビューは聞き手の誘導が多すぎるんよ!あの取材、アイツの知っている結論を言わせるためだけにやってるみたいやろ〉とのりおは反発し、水道橋博士は、しかし、〈まさにそこが吉田豪の聞き手としての真骨頂であるのだ〉と書く。(浅草キッド・水道橋博士『本業』)
吉田豪にとっては、タレント本書評において巧みに己の琴線に触れる言葉をピックアップしてコラージュし一流の面白い読み物に仕立てあげるのと同様、インタビューでの“発言”主体としての相手も、引用/参照される膨大な文献群と同じように、自分が織りなそうとするテクストを構成するコラージュ部品の提供者であるだけなのであって、その意味では吉田豪のインタビューは、インタビューの形を借りた“対話風のタレント本書評”だというのが実情だと思います。しかし、それにしたって、〈タレント本書評〉の分野では、知識量もテクニックも面白さも、吉田豪の右に出る者も左に出る者も後ろに控える者もいないという、ぶっちぎりの孤高の第一人者であることに変わりはない‥。

吉田豪とは互いにリスペクトしあう仲である水道橋博士が、第一人者をさしおいて、一足先に〈タレント本書評〉を一冊の本(『本業』)にまとめてしまった。『日経エンタテインメント!』にこのタレント本書評の連載をはじめたとき、水道橋博士の頭には常に、どうしたって吉田豪の書評芸にはかなわないということを重々承知で勝負しなければならないというプレッシャーがあったはずで、商品価値として吉田豪の書評とは違った戦略が必要だという緊張感があったと思うし、その緊張感がいつもより密度の濃い(ムードに流れない)文体にあらわれていると思われます。

『本業』の長所は、ひとつは現在的に芸能界を生きている一タレントでもある己のポジションを最大限利用することで、さまざまな機会に目にした言動や行動が織り込まれ、テクストからだけではうかがい知れない豊かさをその文章に付与している点(編集部からの要請だそう)、もうひとつは、〈書評と言うより、交遊録や人物評、俺自身への自己言及が再三〉と著者は言いますが、コミットはしつつも、当該人物や書物の立ち位置を歪めたり強引に自分のフィールドに引き寄せすぎたりせずに、“本の丁寧かつ正確な紹介”であろうとする慎ましさをもって接している点で、どちらも吉田豪の(テクスト主義的な)タレント本書評との差別化が計られているように思えます。同じ本を扱ったとしたら、どうせ吉田豪のほうが面白く書くに決まってる。そんな困難のなかで、水道橋博士は健闘したと思います。

そんななか、『本業』のタレント本ラインナップ中、正確には〈タレント本〉ではないにも関わらずとりあげられた『男気万字固め』は、吉田豪が唯一書評出来ない本。最大のライバル(タレント本書評家、吉田豪本人)不在のなか、情熱と敬愛をもって丁寧に紹介された『男気~』に限っては、水道橋博士が最高の書評家の栄光を得る。水道橋博士の書評に比べたら、文庫版『男気~』刊行時に『週刊文春』の連載(『文庫本を狙え!』)でとりあげていた坪内祐三の文章さえ、気取っているだけのスカスカのものに感じられたのでした。

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

『殺し 井上義啓追悼本』

20070318193426

『殺し 活字プロレスの哲人 井上義啓追悼本』

(『kamipro』編集部/エンターブレイン刊)

〈活字プロレス〉の祖にして第一人者だった井上義啓氏、通称・I編集長が昨年、2006年暮れに亡くなられました。奇しくも同じ2006年に休刊となり、その寿命を終えた『週刊ファイト』の名物編集長として、かつて活字プロレスの〈骨格を作り、ターザン山本!、金沢克彦など、『週刊プロレス』や『週刊ゴング』を支える人材〉を世に送り出し、プロレスの文化的隆盛に多大な功績をのこしたI編集長は、〈殺し〉〈底が丸見えの底なし沼〉〈バード〉など独特の井上語でもってプロレスを、近年では総合格闘技を妄想&愛情過多に語りつくし、ファンを虜にしていました。
晩年の活躍の場となった『紙プロ』ではキャラクターの面白さで取り沙汰されていた感もありますが、読者に愛されつづけた井上義啓の追悼本として、本書はその『紙プロ』(『kamipro』)のエンターブレインから出版されました。(仕事場のある高円寺では某サブカル本屋でも扱っておらず、会議の際に行った町田の書店でようやく購入。やっぱり高円寺はダメだ‥)

全体の4分の3を占めるI編集長じしんの原稿や発言は、過去『紙プロ』に掲載されたものからの採録が大部分ですが、去年の6月に行われた雑誌未掲載の喫茶店トークも収録。名物企画“喫茶店トーク”集のほかは、名高い“井上小説”も3編、携帯サイト用での連載(ここ数年、毎週月曜日になった瞬間に更新されるI編集長のコラムを読むことが、一週間の始まりを告げる、たいせつなリズムになっていました‥)も少数セレクトされて収録。インタビューのいきいきした語り口には圧倒的な生命エネルギーがあふれていて、晩年の言葉群とは思えない“今なお青春”な世界の謳歌ぶりに切なくなる。今から読むと、いわゆる“井上小説”は死後、黄泉からの手紙のように静かで色褪せて、哀しみがある。

金沢克彦、水道橋博士による、I編集長を優しく送り出す、追悼のエッセイを経て、通常の葬儀で、棺桶に生前好きだった物を入れてあげるように、本の末尾には“好きだったモノ”であるモンターニャ・シウバとアントニオ猪木のインタビューが添えられていて、編者の哀惜が滲む。猪木はI編集長が生涯かけて熱狂的に追い続けたプロレスラーであり、とにかく巨きな人が好きだった井上義啓が近年、とりわけ執心していた巨人がモンターニャ・シウバでした。

病に矢折れ力尽きたI編集長の、中断された最期の原稿の写真が掲載されていて、〈中西学、永田裕志〉の名をあげた次の行で文章は途絶えていました。最期の最期で行く末を憂いていたのは、結局新日本プロレスに関することがらだったのでしょうか‥。

どう考えても売れるわけない、こんな本を出版するという英断にたいして尊敬の念を抱きますが、どうせならこんな普通の単行本の体裁でなく、出来うる限りの文章を集めた巨大な書にしてもよかったんじゃないかとも思う。買うひとはどうせ五千円だって買うんだし‥。ひとりでも多くの読者に、広くI編集長のことを伝えたいということならば、現行の形ではなくて増刊号的なテイサイの、ムック形式のほうが適していたんじゃないかと思います。

theme :
genre : 本・雑誌

買った本、『物質と記憶』ほか

20070214185902
家から二駅のところにあるモール内の本屋で、ベルグソンの『物質と記憶』、阿部和重・中原昌也の『シネマの記憶喪失』を購入。『シネマの~』は仕事場(お店)のある高円寺の書店で探していましたが無くて、結局近所でみつけた。

ジル・ドゥルーズ『シネマ』の邦訳がようやく去年出て暮れに買ったのですが、『シネマ』という本では、ベルグソンの『物質と記憶』の流れにそって映画のイメージを分類する作業が行われている、そういう構造だという記述をかつて読んだことがあったから、じゃあ未読だったその『物質と記憶』を読んでからにしようと探していましたが岩波文庫版が入手困難で、なんとなくそのままになっていたのが、新訳としてちくま学芸文庫から出ているのを見かけてゲットしました。
ちくま学芸文庫(以下、ちく学)が創刊当時は、なんと値段のバカ高い文庫シリーズだろうと、講談社文芸文庫シリーズのとき以上に驚愕したのでしたが、最近はどこの文庫も高くて、ちく学の値段設定は安すぎるのではと、かえって心配になってきた。うろ覚えですが、ちく学の最初期配本には、たしかユングの『変容の象徴』(巨大なハードカバー版を持っていたのにメンドーくさくて読んでなかったらまさかの廉価版発売で、たいへんショックを受けた記憶が‥)や、蓮實重彦『監督 小津安二郎』なんかがあったとおもう。

で、蓮實重彦といえば、阿部和重&中原昌也の『シネマの記憶喪失』というタイトルの元ネタはもちろん、蓮實『シネマの記憶装置』のモジリなのですが、出来れば装丁も『~装置』に似せるというアソビが欲しかったとおもう。金井美恵子の『文章教室』のデザインが、丸谷才一の『文章読本』の装丁をモチーフにしてたみたいに‥。まあ金井美恵子のばあいは、多少(丸谷才一を)小馬鹿にしたニュアンスがあったからトンチが効いていたのであって、蓮實氏をリスペクトする両氏がやっても卑下にしかならないから、パロディとしても弱々しいか‥〈喪失〉という単語の採用は自己卑下の意識のあらわれなわけですし‥。

しかしじっさいのところ、『文章教室』も『文章読本』ももう文庫本でしか手に入らないのだろうから、単行本だったころの装丁に込められた狙いの話など、忘れさられていく一方でしょうし、『喪失』が『装置』のモジリなんていうのも、説明不要の大前提の事柄だと思って油断していたら、近未来では知らないひとばかりということになりかねないのでしょう。たとえば、高橋源一郎の文芸時評書『文学がこんなにわかっていいかしら』が、当時のベストセラーダイエット本『こんなにヤセていいかしら』からつけられたタイトルだったと、いったいどれだけのひとが現在記憶に留めているのでしょうか‥?

theme : 雑記
genre : 本・雑誌

玉袋筋太郎『男子のための人生のルール』

20070131180512

玉袋筋太郎『男子のための人生のルール』

(よりみちパンセ/理論社)

先頃、テレ朝『草野☆キッド』プロデューサーが強制わいせつ容疑で逮捕されるという事件が勃発、年明け早々仕事にケチがついた感のあるたけし軍団のお笑いコンビ、浅草キッド。はっきりファンです。本業はお笑い芸人ですがその“笑い”のセンスがどうこう、ということで考えたことはあまりなくて、人間的に信用している、ということが自分のなかでデカい。相手が同性の男性であるばあい、なによりまず人間として尊敬できるかが一番にくるし、どんなジャンルにおいても人間としてリスペクト出来なければ才能があろうが権威があろうが、好きになり、おうえんしたくなったりしない。どういうふうに人間として信用出来るとおもうのか、面倒くさいのでいいませんが‥。

傑作『お笑い男の星座』シリーズほか、著作業は相方の水道橋博士が担当、というイメージの強い浅草キッド。水道橋博士の、情報満載ダジャレ満載で起承転結/構成のカッチリした文章はそれはそれで芸として既に完成した感がある。
それに対して、読んだことがないわけでもない玉袋筋太郎の文章は、“面白いひと、の書いた文章”という域を出ない、そんな認識があったので、玉袋初の単独著作となったこの『男子のための人生のルール』、読むまでは正直不安でした。痛々しいことになってなきゃいいがと‥。

しかし、予断ははずれて、本書は意外な感慨を自分にもたらしました。14歳をターゲットにするというこの新書シリーズにおいて、ちょうど著者じしんの息子が14歳だということも一因だったようですが、笑いの方向には走らず、存外正面から、息子に語りかけるように人生を説く。その真摯さに胸打たれ、4回くらい涙があふれそうになった。

自分の身体をちゃんと見る、そうしてからきちんとコンプレックスと向き合うこと。マイナスに思えることをどうやって克服し、プラスに転化するか。「ありがとう」「おはよう」「お先にどうぞ」等、“あいさつ”が人と人とが関係を紡いでゆくための基本姿勢なんだということ。「お金」とはどう付き合ってゆくか、など、人生の喜びや苦しみについての、生き抜くのに知っておかねばならぬ人生のルールが訥々と語られてゆく。

言ってることの内容や結論がそう奇抜なものでなくてたとえ月並みなことにみえるとしても、単なるオタメゴカシや現実と遊離した正論に逃げず、しかも語りかける対象に対して上から目線でものを言わず、中学生の延長の延長であるひとりの中学27年生が、たまたま〈キミ〉より年長であり父親のポジションをやっているひとりの男として、誠実に考え、語りかける。

新宿生まれ新宿育ち、都会っ子ド真ん中だから必然、照れ屋な男子・玉袋氏の本書における文体は、目線と目線をつよくあわせて語りかけるのではなく、少しホロ酔いかげんで息子とカウンターに並び、目を合わせるのをさけるようにして、何でもないことのように放り投げるようにしてポツポツと言葉を発する、そのじつは言葉を慎重に選びながら、という像がほのみえるような距離感をもって綴られていて、河島英五の『野風増』の世界みたいでシミジミと微笑ましくも胸に迫ります。

〈ココロの包茎は、根本までむけ〉等、浅草キッドらしい下品なフレーズも頻出するが、それはシャイの裏返しであって、伝えたいことは真剣だ。

本筋の話題でない小さなこと、たとえば、若者がタトゥーを入れることに異を唱えるにしても、ひとつひとつキチンと順序だてて話しかけてゆく。

〈まあ人がやってるのを見て憧れたり、「かっこいい!自分も見せて自慢したい!」って思ったりしてるんだろうけど、露出の高いカッコして絵を自慢できるのも夏だけだよ。「夏だけでもいい!」って、男も女も入れちゃうヤツは何言っても入れるだろうけど、それなら、ちゃんとこういったことを覚悟して入れろよ。「自分にいつか子どもができても、一緒にプールや健康ランドには行けない。それでもいいから、今、タトゥーを入れるんだ。(略)」ってな。
まあキミらは自分が良ければいいだろうけど、キミらの子どもはかわいそうだなあ、親と一緒にプールにも行けないんだもんなあ、お父さん、お母さんは刺青が入ってて入場できないからなあ。……入れたいものはしょうがないけど、オレなら、いつかできるかもしれないそいつらの子どもに同情しちゃうね。
「一生を棒に振る」って、なにも、キミ自身の「一生」だけに限らないよ。キミがいつか親になったとして、キミの「子ども」の一生にだって、かかわってくるんだ。
夏場、子どもと一緒にプールで遊ぶのは楽しいよ。親になったときのその楽しみを捨てちゃうってのは、ほんともったいないよ。若い人には、ぜひそう言いたいね。〉

シャイゆえに一杯ひっかけずにはマトモに息子に語れず、かといって、酔ったら酔ったでロレツが回らなくなってしまうような、そんなある種の父親的パーソナリテイに似て、“~なんだよな、うん”、“~だと思うんだ、うんうん”、みたいな、語尾に自分で相槌をいれる玉袋筋太郎の口癖がきこえてきそうな文章は哀愁を感じさせる。親と子、お互いの幸福が100パーセント一致するということはないという諦念をもつ者の、しかし、それでも抱く“ある希望”を告げた本書の結尾は感動的だ。

著者は、〈コンニャクとかうなぎと一緒で、親が力を入れあげれば入れあげるほど、子どもなんつうものはさ、逃げて行くもん〉で、〈逃げたり、逃げられたりするだけ、親と子の溝は深まっちゃう。〉〈でも、どんなに溝は深くなったって、その溝の深いところで、お互いの手は握っていられるって、オレ、思ってるんだ〉と言い、〈でも、だいじょうぶだって〉思える“あるもの”がその間に存在すると告げる、親と子の関係は、それがあるだけで、それでもう、じゅうぶんだと思わせると。その、いささかクサい“あるもの”だけれど、そこまで読み進めてきた読者には染み込むように受け止めることができるんじゃないか‥。少なくとも、現在親とのあいだにわだかまりをもつ自分には、素直にかんじることができたのでした。


(そういえば、先週末、新宿の某所で玉袋氏による、この本のサイン会がありました。キャラからみて、人が大挙して押し寄せたとは考えづらく、さびしいめにあってなかったかと本気で心配だ‥。)

theme : 読了本
genre : 本・雑誌

BSアニメ夜話

20070125223304
先日、安かったので、ブックオフで(『コマネチ!ビートたけし全記録』や『サイゾー』バックナンバーなどとともに)『BSアニメ夜話vol.01 ルパン三世カリオストロの城』、『BSアニメ夜話vol.02 機動戦士ガンダム』を購入。

『カリオストロの城』、岡田斗司夫、他の著書での話のほうがずっと詳細でタメになった。『ガンダム』、よゐこ有野の、相変わらずのなんにも知らないっぷりにいつもながらムカムカする。総じて、新発見はなくてガッカリ。『ガンダム』、巻末のスペシャル対談が古谷徹×鈴置洋孝、このムック出版後(奥付は06年7月20日)まもなく、鈴置氏が逝かれたんだと気づき、ある感慨をかんじつつ読み了える。『Zガンダム』の劇場版の新録に間にあってよかった。『星の鼓動は愛』のラスト、ブライトの一連のセリフも現状のものではなくなるところだったし、もうすこしで、エンドロールで井上瑶と同じように(ライブラリー出演)とカッコがつくところだったのだ、と今更ながら気づく。

theme : 機動戦士 ガンダムシリーズ
genre : アニメ・コミック

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ししらいぞう

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