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追記:北野武の修正癖?

なんだか前項は『映画崩壊前夜』本体とはあまり関係ない話ばかりして終わってしまいましたが、考えたら映画についての雑多な文章を集めた蓮實重彦の映画本について、新刊とはいえ今さら大して言うべきこともない気もします。

さて、蓮實重彦がたけし映画評価について小細工じみた歴史修正を加えていたという話をしましたが、そういえばたけし=北野武も、映画についての言説ではかつてそれらとどこか似たような修正を施しておりました。そのことが、どこか自分がたけし映画への信頼を曇らせていったことの一因ともなっていた、と感じられます。その例を2つほど以下にあげようと思います。
(ただし以下の話は、原典が古い週刊誌だったりするため手元に資料がなく、自分の記憶に依るものなので資料性や引用というか言い回しなどはアイマイ。気になるかたは国会図書館等で確かめていただきたいと思います。)

今はなき『週刊テーミス』誌に90年7月18日号~91年7月17日号まで映画カントク・たけしによる映画評が連載されていました。北野武的には、第2作『3ー4x 10月』~第3作『あの夏、いちばん静かな海。』というイケイケな時期にあたる。これは『仁義なき映画論』(単行本奥付は91年12月)としてのちに一冊にまとめられましたが(この有りがちな映画本は、平易な語り口で精緻かつ正確な評価を下してゆくなかなかに侮れないもので、松本人志のアホみたいな映画批評などは比較にならない類のもの。中野翠あたりがウカウカできないレベル?)、連載時はたしか違ったタイトルだったと思うが今は思い出せません。

で、単行本化にあたって、当初は別々の記事だった『八月の狂詩曲』や『真夏の地球』が他記事と統合されてスリム化していたのは別にいいとして、問題なのは載録が見送られた回が幾つかあるということで、そのセレクトから漏れたというのがアキ・カウリスマキ監督『コントラクト・キラー』やセルゲイ・パラジャーノフ監督『ざくろの色』といった優れた作品群で、しかしこの連載では前者は確かギャグが冴えねえとかセンスが悪いとか、後者がセゾンのCMみたいなもんで大したもんじゃないとか、貶しというか掃いて捨てていたように記憶しています。

それを単行本化するさいに、『!(アイ・オー)』などのマルでもバツでもどうでもいいような作品をとりあげた、それこそどーでもいいような回は収録しているのに、パラジャーノフやカウリスマキの回はヤメる、という判断に至ったのは、おそらく誰か周囲のブレーンで映画に詳しい者が、「たけしさん、スコセッシならともかく、パラジャーノフやカウリスマキの価値を見定められなかった文章を単行本として後世に残すと、のちのち末永く嘲笑の対象になりますよ、載せるのはおやめなさい」的なことを進言し、たけしのほうも彼の言うことを信頼していて従う。そのような背景があったのではないか。それが『HANAーBI』あたりで「二人目の(実質的)監督」とも言われたりした森プロデューサーなのか、それとも「スコセッシはともかく、パラジャーノフやカウリスマキがダメっていうのはちょっと」といかにも言いそうなあの人なのか‥。しかし、それが誰であろうとも、そういうチンケな隠蔽を経て「映画的教養はないが映画が本質的にワカッてる映画監督」像をつくりあげようとしているかに見える北野武監督の周囲に漂う空気には、“実”より“名”をとるような、俗物的な処世術を思わせるものがあって、なんだかな~と失望感がなくもなかった。たけしほどの表現者が、己の審美眼や倫理観を世間や特定の文化圏の評判に迎合してどうするんだと憤るのは、青い意見なのだろうか。

もしかしてたけしは抜きん出た才能をもつ表現者として単純に勝負するよりも、自己アピールが巧みで世渡り上手な計算君として、映画に携わっていこうというスタンスに移行してゆくんじゃないか。そんなかすかに芽生えた不信感が確信にかわったのは、次のような矛盾する2つの発言によってでした。共にたぶん週刊誌あたりでの発言だったと思いますが、確証はありません。

ひとつは『ソナチネ』(93)が公開され、ひとしきり(概ね高評価な)批評やら評判が出揃ったあとでの発言で、(批評家ってもんは何もわかっちゃいないね。みんな『ソナチネ』を最高傑作だの何だのと持ち上げるけど、オイラに言わせりゃ『ソナチネ』は全然ダメ、半分くらいしか上手くいってない。それを全肯定で持ち上げられてもなぁ)というふうなかんじに、批評や反応に対して侮蔑的な気分をぶつけていたし、『ソナチネ』の出来上がりにもガッカリして幾分恥じているようでもあった。この時のたけしにとって、自分のなかでいちばん良かった『3ー4x 10月』(90)の沖縄パートのイメージに『ソナチネ』は全然及ばなかった、という認識であったよう。

それが、『HANAーBI』(98)でヴェネチア国際映画祭グランプリという栄冠を得、国内外でそれこそ〈名〉を成したときの発言(週刊誌か何かでの、北野武成功ヒストリー的な記事?)では、何だかその時言っていた認識が無かったものとなっていて、愕然とした。それは大体(オイラは『ソナチネ』を世に問うたとき、この映画で世界の映画の最先端に並んだ、そう思った。けど『HANAーBI』を撮って&発表してみて、まだまだ(自分の表現の高みの)先はあったんだって分かった)というふうな内容で、『ソナチネ』は上手くいかなかったし後退してしまったなという当時の自己認識が、国内外の高い『ソナチネ』評価に引っ張られるようにして消えていってしまった。
映画監督の仕事とは「OK」か「NG」かを決めることだ、という言葉がありますが、この「行け」と「待て」の峻別を、感性や論理や倫理や人間性、それこそ才能としかいいようのないものによって決断する能力(とは、要するに「魅力」のことでもある)を有するのが映画監督という存在のもつスキルであるなら、『ソナチネ』の価値判断をいつの間にやら外部に委託してしまい、『HANAーBI』のゼロ号試写あたりでは煮え切らない印象をもっていたらしい筈のたけしが、グランプリを得た途端に上記のような言葉を発することで、「映画監督業」の主体を世間的/映画祭文化圏的評価に躊躇なく委託していると示すのは、ある種の職務放棄のあらわれと言えなくもない。『HANAーBI』の段階でのたけしは自分のなかの映画的倫理によって「OK」「NG」を峻別することを止めていて、外部の評価がそれを最終的に決める、というごく通俗的で社会的存在であるような方式を選んでいると言えそうです。「世界的映画作家になる(する)」というたけし・プロジェクトは、孤高で唯一無二な存在として豊かに突出する、という方法ではなく、傾向と対策により予備校的にス
ノッブにおもねったやり方をもって完遂された。


関連記事:蓮實重彦の捏造癖?ーー蓮實重彦『映画崩壊前夜』
       映画『TAKESHIS'』
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theme : 映画関連ネタ
genre : 映画

ふたつのドリーム

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 Dream メインビジュアル


梅雨も明け、のうのうと猛暑のつづく7月のあいだじゅうずっと、不穏な空気が漂いつづけていたふたつの“ドリーム”が、先頃の連休を経るころ、ようやくひとつの(ふたつの?)着地点をみました。

ひとつは「総合格闘技の世界最高峰」PRIDEが消滅後、その残党がFEG・TBSと組んではじまった総合格闘技イベント「DREAM」が、変則的な放送を数大会経て、さまざまな困難に直面しながらも尻上がりに評価をあげつつ、大勝負となる当日地上波ゴールデン放映の7・21「DREAM.5」@大阪城ホールを迎えたのでしたが、ミルコの連続欠場にはじまって、KIDのケガ&スキャンダル、所英男の追突事故(被害者)、“超大者外国人”バンナの不出場、大会2日前のカード決定と、ズンドコだのまさに悪夢(ドリーム)だのと恒例のように揶揄される事態に陥りながらもなんとか無事成功のうちに終了しました。視聴率的にはギリギリ2ケタ(10・0%)で決して良くはないものの、通年よりズレ込んだ月9(『太陽と海の教室』)の初回スペ(20・5%)ともろかぶりになってしまったことを考えたらまあしょうがないところ、という感じなのかもしれません。
注目のライト級グランプリは、準決勝の宇野対青木、川尻対アルバレスの2試合がいずれもたいへんな激闘というか好勝負だっただけに、リザーブマッチながら盛り上がりを優先したマッチメイクで金魚(ブラックマンバ)を軽々と退けてピンピンしたまま決勝に臨んだリザーバーのハンセンが優勝をかっさらうという、予想外の展開で幕を閉じた。ハンセンの相手がもし普通にシビアに、リザーバーに相応しいギルバート・メレンデスなり石田なりだったとしたら結果は変わっていたかもしれない。
そんなこんなで現時点での“最強”が、エクスキューズありの曖昧なままでネクストステージに持ち越されるという事態はある種日本的ともいえて、物語が次へ繋がるという意味では最良の結末だったのかも知れません。青木もアルバレスも、優勝出来なかったにも関わらずまだゼンゼン底を見せてませんし‥。

もうひとつの“ドリーム”は言わずと知れたダンス&ボーカルユニットで、旧dreamであるDRMの周辺にも、ここのところずっと不穏な空気が漂っていました。5月くらいからピタリと動きも予定もなくなり、Podcastでメンバーの高本彩が6月中にビッグな発表があると吹いたことから様々な憶測を呼んだ。その後、DRMと改名してから1周年になろうとする頃、所属事務所FITONEのサイトからDRMの名が消える。果たしてDRM/dreamはどこへゆくのか?と残存するファンがヤキモキして固唾をのんでいたところ、7月22日、ようやく発表があった。概要は以下のようでした。

○グループ名が(dream→)DRM→Dreamと変更
○所属事務所がFITONEからLDHに
○長谷部優の離脱。ただし長谷部はFITONEに残るわけではなくて、残りの6人=DreamとともにLDHに移籍
○オフィシャルファンクラブ〈Live your dreams〉(略称lyd)の終了
○DRMオフィシャルサイト、橘佳奈&高本彩&中島麻未ブログ&長谷部優オフィの終了、およびDreamオフィシャルサイト開設

‥相変わらず裏事情が見えてきませんが、とりあえず解散終了ではなくしぶとく生き延びた形になった。これがエイベックスのたらい回しに過ぎず、傘下にあるLDHがイヤイヤ貧乏クジを引いた格好なのか、それとも積極的に引き受けたのかが気にかかる。これで名実ともに“EXILEの妹分”になったわけですが、事務所が積極的に売る気があるのか、飼い殺しにするつもりなのかで、今後の展開もだいぶ変わってくると思われます。
長谷部優離脱も、LDHへの移籍もある程度予想の範囲内ではありましたが、長谷部優はてっきりFITONEに残るもんだと思っていたのでそこにビックリした。
それとlydの終了、というのはエイベックスとの関係に変化があったということなのか‥レーベルが変わるということ?エイベックスからFITONEに移籍後も、変わらずにエイベックスの寮にメンバーが住めていたのがDRM/dreamの七不思議のひとつだったのですが、閉鎖直前の中島麻未ブログをみると最後にアップした記事(7/19)では何でか母親と一緒にいるようだし、橘佳奈ブログでも(7/19)ママが部屋に来て一緒に部屋の大掃除、片づけをずっとしているがなかなか終わらない、という主旨の記事があがっていました。状況としては寮を出てゆくってこと?そうしてエイベックスと直接は関係のないどこかに居を構えるということなのでしょうか?
それに、これだけ予定より発表が遅れた理由は何なのか?グループ名をDRMからドリームに戻すことをLDHから反対されていたとか長谷部優の処遇をどうするのかとか、いろいろ細かく詰めなければいけない事があったのかもしれませんが良くは分からない。

こうして不可解な疑問だらけのままの一方的な発表を受け止めての残存ファンの反応は、ファンブログを巡回した限りでは茫然困惑悲嘆といった感情が支配的なようで、意外。ディーアールエムではなくて“ドリーム”の響きに皆さん愛情を感じておられたようですし、やる気や協調性やdream愛のない長谷部優にたいする冷ややかな気分も蔓延してた気配があったし、FITONEで飼い殺しにされているより事態は悪くなることもなさそうに思えますが‥

このニュースを受けて気づいたのは、“ドリームではない長谷部優”の女優業、に対して、興味が以前の100分の1くらいに減退してしまった気持ちが自分のなかにあることで、ドリでない阿井莉沙を応援出来てもドリでない長谷部優は応援出来ないという感情。よって以降、長谷部優の女優業について殊更に言及することもなくなるかと思います。
あと、LDHのサイトに行ってみたらDreamメンバーのプロフィールが下の名前のみでローマ字表記になっていた。コレで行く気か?なんか有りがちでヤだな~

theme : 雜記
genre : アイドル・芸能

ブレイクするチャンス

ひとみ「
『瞳』

先日、TBSの昼ドラ(制作は中部日本放送)、『みこん六姉妹2』が終わりました。
三女の三笑役が広澤草から太田有美に変わったほかは全キャストが一作目からの続投で、お父さんの大和田伸也が全員未婚の娘たちに結婚しろとシツコクせっつくという他愛ないホームコメディの世界観を生暖かく守っていて、優しい心持ちになる。6人の娘にそれなりに均等にエピソード配分がなされていた前作に比べて、今回は主人公・二葉(はしのえみ)のエピソードの比重がかなり大きかった。で、前作で結婚寸前までいった大藪保(綱島郷太郎)と二葉(ごとき)を争う新キャラとして登場した和菓子職人=クリキンを、青木伸輔が演じていました。

クリキン/青木伸輔と同じく和菓子屋『寿や』の従業員である俊くん役はDーBOYSの柳下大(同じくDーBOYSで、仲良しだという『キバ』の瀬戸康史と同系統の中性的な男子)で、こちらは新進のアイドル的俳優として、これからの躍進が約束された安泰な未来がみえるのに対し、かつていくらでもチャンスがあったように見えたのにブレイクし損ね、いたずらに年輪を重ねて三十代に突入している青木伸輔の、恋愛話での最重要キャラとしての登用は、昼ドラとはいえ最期の大きなチャンスと傍目には見えました。(柳下大の役名が“青木”俊だということからみて、青木伸輔のキャスティングは当初から予定されていたわけではないと思われます‥と三田佳子みたいなことを言ってみる)

前に『STILL I'M IN LOVE WITH YOU』の項で、青木伸輔についてそれほどの証拠もなく言ったのは、性格に問題があるから疎まれてブレイクしなかったんじゃないかという推測でしたが、それが本当かどうかはともかくとして、今回、その乱暴で憎々しげな側面のキャラを前景に、芯は男気とシャイネスという、ある種の類型的な男の魅力を提示。ある程度は視聴者のハートを掴めたんじゃないでしょうか。『2』はようするに『はいからさんが通る』で、生還する元婚約者の大藪保が少尉(伊集院忍)のポジション、一歩引いて愛する、青木伸輔演じるクリキンが編集長(青江冬星)ということになるとすると、最終的に大藪保が二葉/はしのえみとゴールイン、というのが定石かと思われますが、最終回、逆転のすえにクリキンが二葉と結ばれたのは、視聴者の声がクリキン/青木伸輔を後押ししたのではないでしょうか。そうだとすれば、今後この鉱脈というか方向性で勝負すべきか?そこまでの需要があるかどうかというのもありますが‥。



hitomigazou.jpg
『瞳』

現在放送中のNHK朝ドラ『瞳』には、主人公の瞳/榮倉奈々がダンサーを夢見るということもあって、そっち方面のファンには嬉しいキャストが名を連ねています。
AAAの宇野実彩子、元Folder5の満島ひかり、元BOYSTYLEの田野アサミ、EXILEのマキダイと、同系統のダンスボーカルユニットの面々が並ぶ。ここにdreamのメンバーがいないのが不自然なくらいのメンツですが、現在のエイベックスの意向からすると納得がいく気もする。ブレイクという点からはEXILE以外順風満帆とは言い難い他キャストにとっては、顔を売る大きなチャンス。しかし、宇野実彩子もてっきりダンスするもんだと思っていたら本筋の〈里親制度〉のほうでの役柄でした‥‥だったら彼女である必然性は何もない気が‥。いつか瞳/榮倉奈々と合流してダンス的に結ばれるかもと淡い期待をしていましたが、どうにもそんな展開にはまったくなりそうもない。しかし、これまでの出演作中、最も魂を感じられる役だし、出番は多くないながらもダンススクールのメンバーより強い印象を残すもうけ役ともいえます。

榮倉奈々、田野アサミ、といった『ダンドリ。』同志とダンスチームを組むダンサーの卵、といった役どころの満島ひかりは、アイドル女優として地味ながら地道にキャリアを重ねていて、現状は正直パッとしないかもしれませんが、このような路線で我慢して継続していればひょんなきっかけで間違いのようにブレイクすることがままあるということは過去の幾つかの例が示しています。運が良ければ‥というか幸福な作品的な出会いがあればという話ですが。幸い、プロモーション能力の殆どないエイベックス系の事務所ではなく、バーニング系列の事務所に所属しているためか(Folder5はレーベルはavexながら沖縄アクターズスクール繋がりで所属はヴィジョンファクトリー、解散後は傘下のぱれっとへ)、出演作品選定にそれほどのミスはなく、金子修介監督の大ヒット作『デスノート』二部作(06)で名を売った翌年、映画初主演作(『僕の彼女とその彼氏(ゆうれい)Drop in Ghost』、※1)に園子温監督作(『エクステ』)を経て、今年は園子温作品(『愛のむきだし』!!期待大)と金子修介作品(『プライド』‥期待薄)にふたたび登場、と「わかってる」売り出しかた。観ている感じでは『瞳』で大ブレイクってことはなさそうですが、ライト層にはあまりイメージのない「ダンスが達者」という部分を全国的にアピール出来ただけでも収穫だと思われます。

ダンススクールの先生役の香子というひとは良く知らず、調べてみるとどうやらEXILEの事務所(LDH)のかたのようで、経歴をみると2004年の舞台『BEAT POPS“FIGHTING GIRLS(たたかう女のコ)”』(以下『FG』)に出演していたらしい。この『FG』は、松本莉緒主演ということになっていますが実質的にはdream主演といってもいいミュージカルで、同年のEXILEの舞台『HEART of GOLD~STREET FUTURE OPERA BEAT POPS~』(以下『HoG』)とは姉妹編であって、補完しあう対になった関係にある作品(正確には『HoG』が本編で、『FG』がイントロダクションという位置付け)、dream『FG』×EXILE『HoG』というコラボの記憶の古層から浮上してきたようにして、『瞳』世界のダンス的頂点に、EXILEのMAKIDAIとともに、『FG』に出演していたというLDH所属の香子が鎮座する。こうしてみえてくるのは不自然なまでのdreamメンバーの不在(dream/DRMはEXILEの妹分という位置付けもあった)。その旧dream/現DRMは現在フィットワンからの契約解除→移籍という不穏な噂がひろまっていて、LDHに拾われないかなという希望的観測が浸透していますが果たしてどうでしょうか。

抹消対象とはいえ、アミューズ系のBOYSTYLEというか田野アサミが出演するというのなら、曲がりなりにも(制作協力の)avex系であるDRMの誰かが出演するほうが自然じゃないのかと憤らなくもないけれども、噂通り普通にDRM高本彩がオーディションで落ちただけだというなら仕方ない気もする。現状の田野&満島のキャラ設定をみると、DRMメンでは西田静香さんならフィットしたかも‥と思うが時既に遅し。

文章の成りゆき上ないがしろ(ぎみ)にしてしまいましたが、元BOYSTYLE田野アサミは、ブレイクを逃し続ける非運な流転を経て、運命のように『瞳』に辿り着いたようにみえます。キャレス出身(大阪のボーカル&ダンススクール、前述西田静香もキャレス出身)に大成する者無し、と言われるキャレスの出でありながら、例外的にブレイクした村川絵梨もかつてはBOYSTYLEメンバーで、彼女がNHK朝ドラ『風のハルカ』(05)のヒロインに抜擢され、ブレイクしたことにBOYSTYLE解散の原因のひとつがあったとされ、そうだとするなら解散後女優に転身することになった田野アサミにとって、NHK朝ドラのレギュラー出演を勝ち得たことは、運命的であるように、感慨ぶかいものだったんじゃないでしょうか。
役柄的には、それ程の印象を残せなかった『ダンドリ。』時と同系統の役で、残念ながらこちらもこれひとつでブレイクに繋がるとは思えませんが、『ダンドリ。』よりは余程注目度の高いNHK朝ドラというメディアで、どこまで鮮明な像を結べるか。“アイドル”女優というエクスキューズ抜きにはブレイクは難しそうな満島ひかりとちがって、たんにひとりのアクターとして勝負出来そうな瞳と存在感をもつ田野アサミですが、それだけにかえってブレイクの困難がありそうな気もします。

‥というような話をダラダラしてきましたが、しかし、『瞳』にはどうやらそろそろ大後寿々花が登場してくるそうなので、どっちにしろ、大後寿々花にすべて(榮倉奈々ともども全員)持ってかれてしまう可能性が大ですね‥。


※1‥『 僕の彼女とその彼氏(ゆうれい)Drop in Ghost』
( 2007年、日本、45分/ 監督・脚本 : 森敦司 出演 : 満島ひかり 、 柴木丈瑠 、 森本智大 、 藤岡香里 、 深澤大河 、 田村円 、 豊田一也 、 長井貴人 、 速水けんたろう 、 小野ヤスシ)この映画での満島ひかりは、『猟奇的な彼女』以上の過激なS女っぷりを披露!悪態ついて男をぶっ飛ばすことは勿論、幽霊の頭をひっつかみ、子供には馬乗りになってマウントパンチを浴びせる。のびのび演じていてなかなか悪くないのですが、で、そんな満島ひかりが魅力的かどうかというと、大いに疑問が‥。映画自体がつまらなすぎて(キレイな映像は撮れても、物語を展開してエモーションを持続させるという能力が作り手に欠けていて、結果この映画は、単なる長くて退屈なイメージビデオに留まっている)、キャラクターを作ったところで作業が終わっているので、残念ながら魅力が結晶していないと思う。


関連記事:『STILL I'M IN LOVE WITH YOU』

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genre : アイドル・芸能

スッキリ

朝、『スッキリ!!』をみていたら、お騒がせ女王リンジー・ローハンの飲酒運転&薬物所持(コカイン)についてのニュースが取り上げられていて、なぜかウェイン町山氏が電話取材を受けていた。
町山氏はリンジー、ブリトニー、パリス・ヒルトンらを“馬鹿セレブ”とひっくるめ、かつてのマドンナのスキャンダラスな行動を批評的なものと捉えて、リンジーら現在の単なる動物セレブと対比して語ってました。

個人的には、日本のタレントの乱行やら醜聞やらにはいちいちムカついたりブルーになったりと荒廃した気持ちになるのだけれど、アメリカのスターたちの提供する様々なスキャンダルには別に腹も立たず、ドンドンどうぞとウェルカムな気持ちをもつ。ましてやリンジー・ローハンなどは奥菜恵じゃないけどそれこそ〈演技よりスキャンダルの方に話題が集ま〉る種類の女優でもあるでしょうし、前歴も前歴だから酒やクスリくらいでいちいちイメージは崩れない‥

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genre : 映画

dream No.08 長谷部優

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(前項→舞台版『ハイスクール・ミュージカル』上陸からのつづき)

さて、dreamファン以外には何の事件でもない(というか、そもそも知らない?)でしょうが、この春、dream改名(dream→DRM)の発表があったことは、dreamファンに少なからぬ衝撃を与えた、と思われます。

近年、年に数えるほどのライブ活動と、09山本紗也加の(山本サヤカ名義での)ソロ、08長谷部優のグラビア&女優などのソロ活動以外には目立った活躍もなく、その少ない活動を伝えるはずのメディア露出もケーブルやBS、ネット番組やラジオ等とアンダーグラウンド化して一般の目に殆ど触れず、もっぱらフットサルしてる斜陽のグループ、という印象のある、このところのdream(しかし、その念願の年間優勝を果たしたスフィアリーグも、07年、ガッタス(ハロプロ)の離脱で暗雲が漂う、『恋するフットサル』打ち切りで、dreamの数少ない地上波露出が消えた‥。『サイゾー』の記事では〈TEAM dream〉がまるで悪者扱い‥)。
そのdreamの、7年間の総決算的なベストアルバム&ライブ版ベストアルバムの矢継ぎ早な発売には、グループとしての何らかの新たな展開への予兆がありましたし、3・10〈dream live 2007 Spring〉の超直前、ドタンバでの公演中止の発表(07橘佳奈04高本彩が急性胃腸炎との発表)からは、不吉な風が吹いていました(幸い、4月8日に振り替え公演が無事開催)。

結局、その後、グループ改名の発表と相成ったわけですが、DRM名でのミニアルバムの発売が予告されているくらいで、DRMとしての/DRMならではの、具体的な新展開策が示されているわけでもなく(〈‥アーティスト名を変えて活動をスタートします。これからも進化成長していく“DRM”が発表する作品や活動に、是非ご期待下さい〉)、相変わらず08長谷部優はソロ活動が盛んだし、4・8振り替え公演の内容(ソロの増加や、MCが通常の07橘佳奈でなく、04高本彩&05中島麻未が担当、等)をみるかぎり、活動の個別化が促進されているみたいで、グループとしての躍動がみえてこない感じがあります。
雑誌に載る長谷部優のグラビアに付くプロフィールは、未だに〈dreamの〉だし、ソロ活動が多いからかネットで〈元dreamの長谷部優〉とか普通に書いてる方もいて、どうにも曖昧な改名&ソロ活発化。暮れにdreamがエイベックスからフィットワンに移籍した件も、相変わらずエイベックスで仕事をしていて表面上どう変わったのかみえづらいから、内実が正直よくわからない。数年前のパンクラスの〈全方位外交〉みたいなもんで、追い詰められて手ぶらになった感があり、ジリ貧かつ楽天的な気分で見守っていますが‥。

ミュージカルへのチャレンジが、さして非・dream的であるわけでもなく、これまでのdreamの流れからいって不自然ではないのですが、エイベックスが手がけるミュージカル、舞台版『美味(デリシャス)學院』(5月15日~20日、青山劇場)でmisonoAAAらエイベックス陣と共演する、長谷部優を除いたdream(DRM?)の6人(03阿部絵里恵、04高本彩、05中島麻未、06西田静香、07橘佳奈、09山本紗也加)が〈パンクラスism〉としてパンクラス本隊の興行を守っているとすると、様々なメディアに露出し勝負している〈パンクラスMISSION〉08長谷部優が、まずは〈全方位外交〉の先兵として単身、舞台版『ハイスクール・ミュージカル』に乗り込んでゆくという図式。
露出のわりにキャラの弱さが災いしてか、なかなかブレイクの兆しのない長谷部優ですが、シャーペイというある種もうけ役を掴んだ『ハイスクール・ミュージカル』で、ライト層をとりこんで、dream(もしくはDRM)の名を知らしめることが出来るでしょうか。

03年の『うたばん』(新曲『i love dream world』を引っさげての出演)でのトータライザーの質問「そろそろ売れないと、ヤバいとおもう」に、メンバー8人(現在は7人構成、当時は02阿井莉沙がいたから8人でした)が8人とも、YESのスイッチを押していました。その時点で既に(ながらく売れてない)という状態に、dreamも周囲もジリジリしていたのでした。しかしそんな危機感もむなしく、それからもヒット曲無く実に4年の歳月が流れ、解散させられていないのが不思議なくらいですが、〈(99年時の)オーディションで運を使い果たした〉と一部で揶揄される長谷部優本人は、どこまでボンヤリと楽天的なのか、「あたし結構運がいいほうなんですよね~」と、呑気に先日放映された『クロノス 逃亡者』(22日、フジ)でのたまっていました。

今回の『クロノス~』は、遊園地内をハンターの魔の手から逃げ回り、1時間無事に逃げおおせたら36万円ゲット(1秒につき100円の賞金)するという、オトナの鬼ごっこなわけですが、長谷部優は出演者中ただひとり逃走に成功、メジャーな地上波番組に長時間うつり続けるというdream史上の快挙を成し遂げました。
しかし、長谷部優本人には殆ど自己プロモーションという観念が欠けていて、自分はひたすら隠れてやり過ごそうとし、ゲーム(番組)を活性化させるための様々な仕掛けにも「やだ~あたし行きたくないもん、こういうのは男が行って欲しいよね~」、「行きたくない、行きたくないんだけど私‥」としり込みして、(いいとこ見せよう)という色目をみせません。長年の“鳴かず飛ばず状態”が、そんな精神傾向生んだのか、それとも長谷部優のそんなマイペースぶりが“鳴かず飛ばず”な経過を生んだのか‥。ゲームのルール上、他競技者に迷惑のかかる“自首”(その時点までの賞金が貰えるが、ハンターが増える)という大ヒールな選択肢をフツーに悩みはじめ、終盤、いざ他の競技者が自首すると、ヒドイヒドイヒドイと非難する、そのナチュラルヒールぎりぎりの言動が最高でした。

売れるためのプロモーションとしての、番組出演というチャンス。という意識のない長谷部優の目は、フツーに賞金を見据えていて、ゲーム中「36万もらったら何しよう?」「何しようかねえ?」ともらう前からしきりにワクワクし、あたしがね~多分ね~この中でね~いちばん貧乏だと思うよ~、みんなさーあたしに36万円とらせて欲しいよ~とボヤく姿は、果たしてプロモーションになっていたのか、甚だ心配だ‥。

無事逃げきって、36万円を手にした彼女は破顔して、「ヤバーい、もう死んでもいいー!」と真剣にハシャぐ。7年のキャリアをもつ、dreamのトップスターが、36万で死んでもいいって‥。長谷部優がこれじゃあ、他のdreamのメンバーはいったい、どれほど貰ってないんだろう?と心配になってきます。
露悪的に貧乏アピールしてキャラづけしているわけでもなく、フツーに思ったように言い、盛り上げるとかアピールするとかに関係なく捕まりたくないしお金欲しいからフツーに逃げ隠れする。長谷部優の、エンターテイナーとしての自覚のない地味~な天然ぶりは、キャラ的に分かりづらいし商品価値が発生しにくい反面、押しの弱さが好感の余地でもある。

一見似合わない『バックダンサーズ!』でのジュリ役が意外とハマっていたのは、彼女のマイペース/ナチュラルヒールな側面が上手くフィットした結果でしょうか。そう思うと、舞台版『ハイスクール・ミュージカル』での敵役シャーペイは、そんな長谷部優の魅力が発揮されるんじゃないかという期待にもつながります。

 × × ×

(ところで、本ブログは主に映画を扱うブログということで、これまでTVムービー『ハイスクール・ミュージカル』→舞台版『ハイスクール・ミュージカル』→長谷部優、と触れてきたのは、以降に、05年から女優業に進出した長谷部優出演の映画やドラマをとりあげるための前フリのつもりでした‥ここ10日間くらい、生命の危機を感じるくらい体調を壊していたので、チャッチャとアップ出来ずに間が空いてしまいましたが‥。

〈長谷部優出演作リスト〉

ドラマ○『彼らの海・Ⅶ Wish On The Polestar』(05、テレビ熊本)
   ○『mahora☆ーまほらのほしー』(05、日本海テレビ)
   ○Girl’s BOX『いもうと』(05、BS-i)
   ○『恋する!?キャバ嬢』(06、テレ東)
映画○『痴漢男』(05)
  ○『ラブサイコ/狂惑のホラー』(06)
  ○『真夜中の少女たち』(06)
  ○『バックダンサーズ!』(06)

このうち、『真夜中の少女たち』は別記事が有り、『バックダンサーズ!』『恋する!?キャバ嬢』については〈2006年日本映画ベストテン〉の記事で軽くけなして触れただけで個別記事はなし、ということで、テキトーなスパンでとりあげていきたいと思います。ファンから評価高いのは『彼らの海・Ⅶ Wish On The Polestar』ですが、個人的にベストだとおもうのは『いもうと』篠崎誠!)です。)

(以下、別記事へつづく。)

theme : 女性タレント
genre : アイドル・芸能

金子修介の少女愛――『神の左手 悪魔の右手』『デスノート The Last Name』

金子修介の少女愛――『神の左手 悪魔の右手』『デスノート The Last Name』

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前項『真夜中の少女たち』(→コチラ)で名前を出した、金子修介監督・渋谷飛鳥主演の『神の左手 悪魔の右手』。補足の補足ばっかで、なにも先に進んでいない気もしますが、『神の~』をみて思ったことをメモっておきたいと思います。

自分が楳図かずおのマンガを単行本でなく、連載として初めて読んだのが『神の左手 悪魔の右手』だったので、一般的な評価はよく知らないが楳図かずおのホラーといってまず基準ラインにおくのはスタンダードはこの『神~』。映画版はそのうち〈人気の高い『黒い絵本』のエピソードを中心に実写化〉され、能力者・ソウ=小林翼は脇に甘んじて、姉・イズミ=渋谷飛鳥が主役という構え。当初、『神~』を監督するはずだったが急逝した那須博之『デビルマン』(04)ミーコ役で那須監督に気に入られた渋谷飛鳥が、今作で堂々の主演に。

夢幻的な原作は映画版ではやや平板化された印象で、いつもの金子作品のごとく相変わらず芝居の質が著しく不均一だし、大事な場面でカットを丁寧に割れば割るほど間延びして間が抜けているし、いくつかあるアクション場面もへっぴり腰なノロさでモタつく。高間賢治のカメラは相変わらず大仰で、田口トモロヲが滅ぼされるシーンは大変底抜け、マトモな評価を望めるものじゃないとは思います。

しかし、説明はしづらいのだけれど、冒頭から“映画”特有の空気、臭気が画面全体に充満しています。この映画より、映像もカット割りも台詞まわしも動作もずっと勝っていると思われるJホラー群の、かなりの作品に欠けている“映画”のかんじが、この映画にはあって、映像の美しさや凝った色彩を誇ったり誇らなかったりするある種の映画群が、ビデオっぽいというか、空気しかない空間は無しかない空虚さ、寒々しい貧しさに支配されているのに対し、金子『神~』ではエーテルみたいに充満している“空気=気”が、どこかしら感情的なロマンを帯びている、とおもう。それが、果たしてアドバンテージになっているのかは良く分かりませんが‥。

同じ金子修介監督作品でも、大メジャー、大ヒット作『デスノート』2部作の狭間で、マイナーな臭気を放つ『神の左手 悪魔の右手』ですが、金子修介らしいといえばこっち(『神~』)のほうがより金子修介らしいんじゃないか。。どうらしいかというと、美少女にたいする偏愛ぶりの健在さによって。

成熟した女性の、豊満な肢体、やわらかい仕草。そういった成人女性の魅力にではなく、青々した、少年のように華奢な、〈少女〉への偏愛。ここでの〈少女〉は、清潔感があり、ぎこちなく、肉親への情愛に溢れ、異性へのアピールも無頓着なら性への関心も低い。

『デスノート』2部作での、香椎由宇瀬戸朝香の輝きのなさ/冷遇は、人格の形成も肉体的成長もストップした大人の女性と見なされたからだし、彼女たちには誰かの所有物であるという属性が第一にくる人物像でもあった。変わって丁寧に描かれたのは、まだ幼く無邪気に家族への情愛を発散する(月の妹の)満島ひかりで、家族のためにあらわされる、喜怒哀楽と、全身を疾駆させるような熱いアクション=動作が描出される。
家族の情愛を異性愛より上位に置き生きる少女としては、『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』(99)の前田愛『毎日が夏休み』(94)の佐伯日菜子が代表的。未成熟な少女の少年性への偏愛は、もちろん露骨に『1999年の夏休み』(88)の水原里絵=深津絵里らで示されています。

『デスノート』2部作で、最も淫して描写されたのが弥海砂=戸田恵梨香なのは誰の目にも明らか。SMプレイさながらに拘束されて監禁された戸田恵梨香が、細い細い腕と脚を、肌露わに身悶えもがき、割れた不安定な声で悲痛な叫びをあげる。無防備に白い腋の下が露出しさらされるさまは、若い女優やアイドルの許容範囲を超えた仕打ち。かすれがちな不安定な声質は声変わりのある成長期の少年を想起させ、細くながい四肢も同じく〈少女の少年性〉の属性と言えるでしょう。

死をめぐるパズルのような頭脳戦が物語を牽引している『デスノート』においては、〈少女〉の執拗な描写は必要不可欠なものとは言えなくて、説話的密度は低くならざるをえなかった。
しかし、少女の執拗な描写とは切っても切れない密接な関係にある“ホラー”というジャンルに属する『神の左手 悪魔の右手』においては、金子監督の嗜好は必然と化し、バタくさくモタモタした垢抜けない描写のタッチは、粘着質な性欲主体が対象に淫した時の執着に似る。

人間の悪意を夢で予知し、惨劇を体感する能力をもつソウ=小林翼が被害者の女の子の苦難を遠隔体感する以外、惨劇に襲われるのは気持ちがいいくらい例外なく、うら若き少女たちのみだ。

まず、冒頭で惨劇に見舞われるのは紗綾(現在は入江紗綾)。巨乳かつ端正な顔立ちで小学生時にすでにブレイクした彼女は、小学生でなくなったばかりとはいえ通常は性的な気配を漂わせているのですが、今作では長く白いシャツの袖口が手首までしっかり肌を覆い、上までぴったりとめたボタンに襟元はフリルが大人しくおどり、長く垂らした黒髪とで首もとを覆いきる。薄暗闇にチェックの上下(ワンピース?)、胸元には嵩のある人形を抱きしめつつ歩くことで、成長期の女性的なラインは封印される。いつにも増しての棒読みぶりは、“硬さ”という〈少年性〉を紗綾に附加しています。
こうして、ぎこちない〈少女性〉を帯びた紗綾を、何者かがつけ狙う気配が立ち込める。濡れたような夜道、石壁‥‥紗綾が拾った薄気味悪い人形を抱きしめつつ、後ろを頻繁に振り返っては歩くさまを、丁寧なカット割りというか、クドいというかまだるっこしいというかバタつさいというか垢抜けないというか、つまりいつものモタモタした金子調で描写、それがねっとりとした少女/少年性への嗜好と同調する。
丁重ふうなカット割りでありながら、そのじつ襲撃犯の視点と俯瞰的視点とテキトーに曖昧な視点のカットがけっこう無造作に入り混じっているのは、制作主体/調教主体/描出主体の欲望の噴出が、間欠的に説話と視点の磁場を狂わせているのかもしれない。

今井春奈かでなれおんの二人は、野山歩きの格好という〈少年性〉で性を宙吊りにされた〈女性性でなく、少女性〉を獲得して、画面に登場する。そのうえ、唯一与えられたパーソナリティが〈甘いお菓子の誘惑に抗えない〉という“乙女”なものなのだから、〈少女性〉は最高潮に達し、金子的欲望に基づく惨劇を召喚してしまう。そこでは、血まみれのケーキを吐くまで食べ続けることをしつこく強要するという、露骨に強制口淫的なSM的風土が現出する。

こうしたSM的な情景はそこここに散見される。
少女の救出に失敗し、犯人に捕らえられた前田愛(金子作品における少女=少年の代表的役者だ)と渋谷飛鳥は、拘束具で身体の自由を奪われ、床に磔にされる。犯人は、ある小さな針状のもので二人の少女をいたぶり出す。

あるいは、足の不自由な少女・モモ=清水萌々子『誰も知らない』(04)ではいわゆる“自然体演出”をほどこされていたが、ここでは硬くセリフを述べ、硬い動作で感情を表現するため、ぎこちない〈少女性〉が増幅する‥)は、父・田口トモロヲに都合よく監禁されていて、彼のいいように振る舞うよう洗脳されている。

こうして、Sっ気が充満する映画版『神の左手 悪魔の右手』は、大林宣彦がよくつくっていた〈SMロリコン映画〉の様相を呈するに至る。そういえば大林宣彦も金子修介同様、SFっぽい作品を数多く撮ってたし、作品傾向のバラエティー豊かさは、なにか共通するものがあります。

金子修介が偏愛する〈少女〉に附加される、〈家族への情愛〉を上位に置く、という属性について、最後に指摘しておきたいと思います。
イズミ=渋谷飛鳥が作品世界を牽引する主人公であるのは、生命の危険もかえりみずに肉親である弟を救うために、全てをかけて闘いを挑む崇高な存在であるからなのだし、児童養護施設に勤め、孤児らの面倒をみることを営みとしている前田愛が、行方知れずとなってしまった紗綾を常軌を逸するほど探しつづけるのは、魂が交歓しあい極限まで親しくなった孤児の紗綾を、家族のように思ってのことだった。殺人鬼であった父に無条件の信頼を抱いて生を委ねていたモモ=清水萌々子は、おのれの生命より肉親への信頼の情を上位にもつ、金子的少女の結晶だった。金子的世界では、家族への信頼と情愛は、何にも代え難いものなのでした。

原作と異なる結末をもつ『デスノート The Last Name』で、藤原竜也演じる月が破滅に至るのは、実の肉親に手をかけようとしたことから招かれた、必然的帰結だとも言える。『神の左手 悪魔の右手』の父・田口トモロヲも、娘である清水萌々子を殺めようと決意したゆえに、己自身の死という結末が約束されたのだった。

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『神の左手 悪魔の右手』

(2006年、日本、95分)
監督:金子修介
原作:楳図かずお
出演:渋谷飛鳥、小林翼、前田愛、田口トモロヲ、清水萌々子、紗綾、かでなれおん、今井春奈


『デスノート The Last Name』

(2006年、日本、140分)
監督:金子修介
原作:大場つぐみ、小畑健
出演:藤原竜也、松山ケンイチ、戸田恵梨香、鹿賀丈史、片瀬那奈

theme : 邦画
genre : 映画

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