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2015年日本映画ベストテン

〈2015年度日本時間ベストテン〉

1『帰れない三人 快感は終わらない』
2『野火』
3『GONINサーガ』
4『ストロボ・エッジ』
5『ローリング』
6『乃梨子の場合』
7『ディアーディアー』
8『Dressing Up』
9『この国の空』
10『特捜戦隊デカレンジャー 10YEARS AFTER』

いよいよ年齢のせいなのか、映画的にどうとか作品的にどうとかよりも、ともかくもこの映画人にとって念願の題材で無事に撮ることが出来た、古巣で撮れた、愛すべき作品の続篇が成せた、等、「作り手もそして自分も、何にせよ生きてて良かったね」といった思いが先にあった2015年。この先も、たぶんそうなんじゃないかと。
ということで次点は『赤い玉、』『ストレイヤーズ・クロニクル』『あなたにゐてほしい Soar』。

廣木隆一映画のベストショットは『さよなら歌舞伎町』の、大久保から新宿に二人乗りの自転車で向かうタテのショット。でも手ぶら感あってポリシーそんなにないかんじの『ストロボ・エッジ』にしました。ご贔屓の黒島結菜も出てるし。
濱口竜介とかもそうかもしれないが、石井隆の突然の高評価に戸惑った年でもありました。
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2014年度日本映画ベストテン

<2014年度日本映画ベストテン>

1『つぐない 新宿ゴールデン街の女』
2『5つ数えれば君の夢』
3『三里塚に生きる』
4『野のなななのか』
5『抱きしめたい 真実の物語』
6『海を感じる時』
7『水の声を聴く』
8『サッドティー』
9『こっぱみじん』
10『桃木屋旅館騒動記』

10本選んで、本文はあとで考えるつもりがひたすら放置、いつのまにか3月もなかばになりました。と書いてたら5月もなかばになりました。
1、選んだものを自分のなかでしっくりするように並べ替えていたら、「傑作感」も「スーパーショット」も全くない『つぐない』に、何か「潔さ」のようなものを勝手に読みとって、一番上に置きました。
監督山下×脚本いまおか、も悪くないけれども、トシキ×いまおか、の組み合わせがやはり一番グッと来る。
10、ジョージョー映画は結局、こうゆうものがイイですね。たとえば『タナトス』が大傑作とか、その類いの議論は、よくわからない。
こうして選んでみると、自分のなかの「日本映画史」は、本質的に2000年かそこらくらいで止まってると思いました。

2013年日本映画ベストテン

<2013年日本映画ベストテン>

1『とりかえっこ』
2『なにもこわいことはない』
3『甘い鞭』
4『フィギュアなあなた』
5『午前3時の無法地帯』
6『集まった人たち』
7『チェンライの娘』
8『パンドラの穴』
9『不気味なものの肌に触れる』
10『100回泣くこと』

なんかグズグズしてたらあっという間にこんな時期になってしまいました。『ペコロス~』の収まりが悪いので抜いてみたら何をかわりに入れたらいいか分からなくなり、迷ったすえに、量産体制ぶりの不気味な廣木隆一から1本選んで最後尾に置きました。三池監督の量産は不気味でも何でもないのに、不思議。
(選択全体に、映画会社がふつうに製作してふつうに公開するどこか閉塞感のあるやり方でなしにこちらに届く、そのような「遭遇」の「現場」性に未来を見たいという気分があり、同じ監督作品でも作品的クオリティよりそちらを優先した経緯あり)

2006年、『紀子の食卓』の吉高由里子以来、これといった未来性のある女性を女優のジャンルで見出だすことが出来なかったのは、アイドル女優(@中森明夫)の時代が次のフェイズに移行して、この分野に輝きのある人材が集まらなくなったからなのでしょうか、よくわかりませんが、二階堂某なども、じつに想定の範囲内な存在のあり方で、時代に律儀に対応する予備校的存在感が、退屈に感じます。
『とりかえっこ』の、二木蒼生と内田夏音。映画の出来がどうこうとか演技がどうこうとか関係ない。なにかの黄金時代から、ふと現代に迷いこんだような、この稀有な才能の少女ふたりを、このタイミングで、数年かかって映像に刻んだことが奇跡的。
この映画の観賞方法はというと販売用DVDだけなのですが、限定100部&イベント会場での販売のみでネット購入不可郵送不可、となかなかのハードルで、現場性が高いとも言えましょう。

『フラッシュバックメモリーズ3D』、言葉よりもまず感じること(の豊かさ)に重きをおいているように見せながらも、それに観客が寄りかかったうえでの言葉を誘発する、感想素・批評素のバラまきかたが巧妙というか悪質。松江監督の映画にはそういうの多い。

『甘い鞭』も『フィギュアなあなた』も、普通にみたら70点かそこらの映画に見えもしますが、石井隆監督は、そんな同時代的な尺度でははかれない、映画史に残る偉大な作家だという判断が揺るぎない。その根拠のでどころは不明ですが、濃密に漂う「不穏さ」も「エロス」も、"宿命"のようにして、今よりほんの少し先の未来にチロチロと瞬く、それが映画だというかのように。

これまでの石井隆映画では、滅びるのは男性で、愛する女はどこまで汚れようとどこまでも輝く存在だったのが、近作にある、(名美的な)特定の・「愛する相手の不在」と、「それでも生きてゆく主体に流れる時間」という関係性の更新が、興味深く思えるのは、僕個人の、ひとりの女性とそれなりに長い年月同居し、かつ子供のいないという人生の成りゆきに、これから自分の感情がどう向かいあってゆくのか、プロフィールのその部分では共通する石井隆を先達の人生モデルとして、気にしているという事情もあります。

さて、日付が更新されて今日2月22日は二木蒼生が地上波ゴールデン初登場する日。そのあと風景がすこし変わってみえるのか、どうか。

2012年日本映画ベストテン

〈2012年日本映画ベストテン〉

1.この空の花 長岡花火物語
2. playback
3.こっぴどい猫
4. ヴァンパイア
5. バビロン2
6. 聴こえてる、ふりをしただけ
7. 先生を流産させる会
8.アウトレイジ ビヨンド
9.骨壺
10.ほんとうにあった怖い話プレミアム

あまりにも観てないのに、そのことすら気にもならなくなってきたので、去年はついに、映画を観るひとの看板をおろしました。映画界の動向とかもまったく知りません。
いっそ映画以外の映像作品を並べようかとも思ったがそんなことにも別に大した意味もないし、普通に公開映画を並べました。映画のかわりに何にハマっていたかを微かに示すための9位&10位(どっちもヒドい映画)をおいて、残りの枠を印象のあった10本をいいかんじに並べたら『僕達急行』『 旧支配者のキャロル 』がなんか納めどころがなくてハミ出してしまいました。
映画太郎をはじめ、どこも足を運ぶと内輪的な閉塞感がすごくて本当に絶望する。それでも、そこにしか今の映画は無いから、そこに居場所をおくのか。嫌気がさしつつ、この先、もうひとつ別のフェーズがあるような気もします。
ベストにあげた映画でも、限定的なクラスタや特定の感性に向けて放たれた、射程の小さいものが多いと感じられ、そんななか、 『この空の花』は、異形の映画群『転校生 さよなら あなた』『 22才の別れ』 『その日のまえに 』あたりより作品的には下かも知れないが、自分とは違うものへ、違う時間に生きるものへ、強い言葉と、強い視線で、何かを届けるんだという意志は、党派的に閉塞した感性を突破するかもしれないという信頼がありました。

2010年日本映画ベストテン

<2010年日本映画ベストテン>

①『結び目』(小沼雄一監督)
②『堀川中立売』(柴田剛監督)
③『making of LOVE』(古澤健監督)
④『ランニング・オン・エンプティ』(佐向大監督)
⑤『ヘヴンズストーリー』(瀬々敬久監督)
⑥『愛するとき、愛されるとき』(瀬々敬久監督)
⑦『これで、いーのかしら。怒る西行』(沖島勲監督)
⑧『海炭市叙景』(熊切和嘉監督)
⑨『ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う』(石井隆監督)
⑩『アウトレイジ』(北野武監督)


さて、去年もさらにロクに観ることが出来ませんでしたが、2010年の日本映画の状況は、おおざっぱに言って、川村印の「オシャレ・シリアス路線」(『告白』『悪人』)や、小劇場センス・サブカル風味の「非モテ系あるある」(『サイタマノラッパー2』『さんかく』『ボーイズ・オン・ザ・ラン』、ドラマ『モテキ』等々‥)などが幅をきかせていて、「映画」は息も絶え絶え、という印象。
そういった、最適化を指向する「置きにいく映画」の受容が大勢を占めるなか、「エモーションの持続」の器としての映画の在り方に対して立ち止まっている映画(エモーションが持続しないこと/持続の射程に果てがあること)に、真摯さを感じた、2010年でした。
(つづく?)

09年秋~10年秋ドラ観了リスト

じつに5シーズン、一年分以上ノーリアクションで放置していたので以下リストアップだけ→


<2009年秋ドラマ>

①なし
②『ギネ 産婦人科の女たち』
③『小公女セイラ』
④『ライアーゲーム シーズン2』

⑤『オトメン(乙男)・秋』
⑥『傍聴マニア09』
⑦『JINー仁ー』
⑧『俺たちは天使だ!NO ANGEL NO LUCK 3D』
⑨『嬢王 Virgin』
⑩『リアル・クローズ』
⑪『アンタッチャブル』
⑫『サムライ・ハイスクール』
⑬『チャレンジド』
⑭『交渉人 THE NEGOTIATOR(第2シリーズ)』

⑮『東京DOGS』
⑯『おひとりさま』


<2010年冬ドラマ>

(①『侍戦隊シンケンジャー』)
②『マジすか学園』
③『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命2nd season』

④『曲げられない女』
⑤『木下部長とボク』
⑥『泣かないと決めた日』
⑦『特上カバチ!!』

⑧『卒うた』
⑨『記憶の海』
⑩『インディゴの夜』
⑪『エンゼルバンク・転職代理人』
⑫『ブラッディ・マンデイ(第2シーズン)』
(⑬『ウェルかめ』)
⑭『咲くやこの花』
⑮『とめはねっ!!鈴里高校書道部』
⑯『宿命1969-2010 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京』
⑰『まっすぐな男』
⑱『ヤマトナデシコ七変化』


<2010年春ドラマ>

①『大魔神カノン』
②『Mother』

③『プロゴルファー花』
④『三代目明智小五郎~今日も明智が殺される~』
⑤『怪物くん』
⑥『ヤンキーくんとメガネちゃん』

⑦『新参者』
⑧『タンブリング』
⑨『激恋~運命のラブストーリー~』

⑩『素直になれなくて』
⑪『女帝 薫子』
⑫『八日目の蝉』
⑬『月の恋人』


<2010年夏ドラマ>

①なし
②『熱海の捜査官』
(③『ゲゲゲの女房』)
④『ホタルノヒカリ2』

⑤『うぬぼれ刑事』
⑥『GM 踊れドクター』
⑦『美丘・君がいた日々』
⑧『ハンマーセッション!』
⑨『ジョーカー 許されざる捜査官』
⑩『GOLD』
⑪『モテキ』

⑫『夏の恋は虹色に輝く』
⑬『日本人の知らない日本語』
⑭『もやしもん』
⑮『土俵ガール!』
⑯『崖っぷちのエリー』


<2010年秋ドラマ>

①『Q10』
②『SPEC 警視庁公安部公安第五課未詳事件特別対策係事件簿』

③『流れ星』
④『医龍3』

⑤『霊能力者小田霧響子の嘘』
⑥『嬢王3』
⑦『ナサケの女~国税局査察官~』
⑧『闇金ウシジマくん』
⑨『フリーター、家を買う。』
⑩『クローンベイビー』

⑪『獣医ドリトル』
⑫『パーフェクト・リポート』
⑬『秘密』
⑭『フェイスメイカー』
⑮『ギルティ 悪魔と契約した女』
⑯『黄金の豚』

映画『私の優しくない先輩』その 1

『私の優しくない先輩』
(2010年、日本、102分)

監督:山本寛
原作:日日日
脚本:大野敏哉
音楽:神前暁
撮影:藤井昌之
コリオグラファー:夏まゆみ
出演:川島海荷、金田哲、入江甚儀、児玉絹世、小川菜摘、高田延彦


1.
2005年の夏。<家族で初めて渋谷へ行ったとき、スクランブル交差点で声をかけられた>小6の川島海荷は、スカウトされてレプロのジュニア部門に所属することになり、芸能活動を開始します。レプロ的には、ガッキーこと新垣結衣が、今まさに全国区になろうとしていた時期。
翌06年、夏ドラ『誰よりもママを愛す』において、田村正和ファミリーの小学生の次男が慕うことになる、転校してしまう影のある少女として川島海荷はデビューを果たしますが、ここでの彼女は、あくまでも(声の濁った、幾分大人びた)「印象のある子役」に過ぎず、「美少女=アイドル」という範疇にはいない存在、という印象でした。
つづく秋ドラ、『役者魂!』(「擬似家族モノ」の重要作)では、異父弟のチュータ/吉川史樹を連れて、藤田まことや松たか子と共に擬似家族を形成する、芯の強い少女・サクラコを好演。“子供であること”は、その「魂=人格システム」の何割かを身近な大人に依託しておくことであって、“大人であること”とは、「魂=人格システム」を他者に依託せず、自身にすべて宿らせることだということを、チュータとサクラコの、魂の有りようのコントラストが、鮮やかに示していました。ここで、自分に川島海荷の名前はインプットされた。わかり易い「美少女」では必ずしもない「印象のある」少女が、地道に子役→アイドル女優という路線をとりあえず歩みだしてみたという認識。

さて同じ時期、レプロには川島海荷より一学年上の、もうひとりの少女がいました。彼女の名は菅澤美月。2005年の4月には、王道アイドルの登竜門ともいえる『おはスタ』のおはガールとしての活動を開始し、川島海荷が芸能活動をスタートした頃にはすでに、その突出した美少女ぶりと稀有なトークスキルで(番組内ユニット・キャンディミントとしても)「美少女=アイドル」として常に輝きの中心としてあった彼女は、2年間の長期政権ののち、2007年3月、中2で『おはスタ』を卒業すると、レプロ内ジュニア部門からシニア部門へ異例ともいえる異動を果たしたことで、即戦力として、そしてポスト・ガッキーとして、事務所の期待を一身に背負っている存在だということを周囲に知らしめました。

一方の海荷といえば同じ頃(2007年1月)、事務所のジュニア部門のメンバーを寄せ集めたアイドルユニット・9nineに新メンバーとして加入。菅澤美月と同じくおはガール&キャンディミントであった下垣真香が、海荷と共に9nineに加入したことからも、菅澤美月の例外ぶり(推されっぷり)が窺われますが、ようするに即戦力ではない下積みの必要な人材としての(“その他大勢”な)活動を余儀なくされたのでした‥。
この9nineが、事務所が本気で勝負をかけたようなユニットならまだ話は別かもしれませんが、ルックスの好みはまあ人それぞれだとしても、歌及びダンスが近年ちょっと見かけないくらい酷いレベルのもので、ジュニア達の馴らし運転でしかないことがそのパフォーマンスからは露呈していました‥。

この年(2007年)、新垣結衣が遂に大ブレイクを果たしトップ中のトップアイドルにのぼりつめます(主演映画3本公開、歌手デビュー等々)が、その後継者としてのポジションを着実に得るべく、これまで多くのアイドルにとって全国区へのきっかけとなってきた『3年B組金八先生』に、菅澤美月が満を持して登場する。で、「印象のある」川島海荷はといえば、この年は9nineとしての地道な活動を行ったり連ドラにゲスト出演したりで経験を積みつつ、推されゆく「美少女」菅澤美月の背中(的なもの)を眺めていたのではないでしょうか‥。

しかし2008年になって、状況は一変します。放送期間半年に及んだ『金八』(3月で終了)において、単調なキャラクターを単調に演じた菅澤美月は輝きもせずブレイクもせず、さらに、前年暮れに流出した不用意なプリクラによるスキャンダルが表面化する。結局、6月末には事務所から登録を抹消され、その一週間後には荒れに荒れたブログも閉鎖、自滅に近いかたちで芸能界からその姿を消しました。
そこで急遽、ポスト・ポスト・ガッキーとして推されポジに座ることとなった川島海荷は、メディア露出が激増し、以降、「次世代の美少女アイドル女優」としての道を突き進みはじめます。連ドラ『ブラッディ・マンデイ』2部作(08、10)や『アイシテル~海容~』(09)等で「儚げ?で、けなげ?な美?少女」として、CM「カルピスウォーター」や「味の素クノールカップスープ」等で「透明感のある?爽やかな?美?少女」として、全国区的な知名度を得て?ブレイクして?ゆく‥‥。

(?)ばかりの煮え切らない文章になってしまいましたが、つまりは、「そうゆうテイで」ブレイクのストーリーが発信されているに留まっていることにいちいち躓き、納得しがたいものを感じているからで、受け手側の地熱が足りない(あるいは無視された)ままにプロデュース側の都合で提供されるサクセスストーリーが「そうゆうテイ」ばかりで先へ先へと進んでいってしまっているという印象が、川島海荷のここのところのブレイクぶりには付き纏っているように思われます。想定される消費者による「愛する」というフィードバックを抜きにして(「愛された、というテイ」で)「トップアイドル女優」というステップをあがってゆく川島海荷をみて、どこか居心地の悪いおもいを抱いているのは自分だけではないんじゃないかと思う(そもそも、「アイドル」とは「愛される」ことこそがその属性なのだから)。そして実際、川島海荷本人もこの現在の状況を政治的かつ偶発的なものだと、案外客観的に捉えているのではないでしょうか。その佇まいには、無条件に愛されて調子こく独特のイタい傲岸さがあまり感じられず、かといってヒネるわけ
でもないそのさまがかえって、ある種奇妙に新鮮な魅力に感じられもします。


2.
私見による、川島海荷を取り巻く環境の推移を、大急ぎで語ってきましたが、さて、そのようにして、川島海荷をある程度のスパンで眺めてきた文化圏に属するものの視点からすると、例えば『キネマ旬報』8月上旬号に載った直井卓俊による『私の優しくない先輩』評などには、だいぶ違和感があります。

そもそも冒頭の、<カルピスウォーターのCMなどでとびっきりの笑顔を振りまいている川島海荷。もちろん本名もわからない、ただひたすらにまぶしい美少女。>という粗雑な言いっぷりから、既にいろいろと苛つきますが(名前は、由来のエピソード込みで周知のように本名)、より錯誤があると思えるのは以下の文章。

<メジャー映画ではキャラクターが役者に勝っている映画が少ないように思える。例えば宮崎あおいはどの映画で見ても「宮崎あおい」で、演じたキャラクターを名を思い出せない。逆にインディーズ映画であれば大ヒット作「SRサイタマノラッパー」(08)の駒木根隆介という俳優名よりも「IKKU」という愛称が先に出て来るという例がある。そして本作は(略)まず第一にヤマコさんはもちろん、憧れの南愛治先輩、(略)天敵・不破先輩という映画の中のキャラクターの魅力が先行している(略)>

インディーズ映画のプロデューサーである直井氏は、メジャー/インディーズの区分を設けて、メジャー→キャラクターが役者に負けている/インディーズ→キャラクターの魅力が先行しているという図式(インディーズ映画のほうが魅力的!)を示してみせるのですが、自分に則していえば、『私の優しくない先輩』における川島海荷もはんにゃ金田も、ごくふつうに役名より先にその役者名が想起されますし、宮崎あおいの演じたキャラクターの名前も「宮崎あおい」という固有名に続いて、幾つも思い出すことが出来ますから、氏の言ってる“あるある”が前提として分からない。直井氏は、本作の高田延彦をみても「高田延彦」と認識せず、まず「西表誠」と認識するのでしょうか?‥よく分かりませんが、川島海荷(あるいははんにゃ金田)をそれほど知らない文化圏の人間にとっては「川島海荷」という認識で接している時間より『私の優しくない先輩』という映画で「イリオモテヤマコ」として接した時間の方が長い、というだけの話なのではないでしょうか?だとすれば、役者の認知度の低さをキャラクターの魅力と混同しての「だから、イ
ンディーズ映画は役者が輝いている」という論旨は成り立たない。そのように直井氏が知覚したのは、ただ単にキャストが氏の熟知した文化圏の人々でなかったという事実しか、指し示しはしません。
「(自分が)長いあいだ見知った役者だから、この作品の彼/彼女はキャラクターが役者に負けている」、「よく知らない役者だからこの作品の彼/彼女はキャラクターが役者に勝っている」というのは無茶苦茶な話で、そこ(メジャー映画に勝るキャラクターの魅力、を有する映画)を立脚点として、“だから”<少々の無茶は承知で>、<少女を刹那的に輝かせ、映画の中に永遠に生きさせることができる>、<すべて説得力のある映画の装置として輝かせてみせる>等々と続いてゆく肯定的な言葉群は、少々説得力に欠けるのではないでしょうか。

そして、その文化圏内に属する者として、デビューから今までたまたま(?)その出演作のほとんどをリアルタイムでみてきた自分の印象に基づく感想として言えば、『私の優しくない先輩』における川島海荷の「魅力」は、その資質に余りそぐわないのに繰り返し採用される「難病/病弱」=「儚い」要素や同じく数多く演じた「等身大」要素・等で構成された、それほど例外的なものではなく、これ位は有するだろうという想定の範囲内の「魅力」であって、個人的には、たとえば今年の春ドラ『怪物くん』(10)のウタコ役(怪物くんへの想いと、その関係性の微妙さが愉しい)のほうが輝いてたんじゃないかと素朴におもいますし(はんにゃ金田も、必要以上に「はんにゃ金田」で、もう少し「不破先輩」というキャラクターであったらな~とすら思う)、そうした印象を持っている自分からすると、「アイドルとはその魅力が実力を超えた存在」というあんまり面白くないテーゼを引用して<川島海荷は本作で実力以上の魅力が引き出された幸福な女優の1人であろう。>と断言する文章を読むと、“映画”は他の映像メディアより当然格上だという
前提が透けて見えて、映画のヒトはエラソーだなと不快に感じもします。
川島海荷は、新垣結衣や菅澤美月のように(実力とは無関係に、問答無用の属性としての)<ただひたすらまぶしい美少女>では有りえない自分を知っていますし、作品内で結晶させるべき「魅力」があるとしたら、手ぶらで臨むのではなく、努力や実力によってその水準の人物像を構築しようと作業(演技)をする、ごく普通の若手の演じ手であって、その意味では、万一上記のテーゼに則るのだとしたらアイドルではないとすら言えるでしょう。『私の優しくない先輩』における川島海荷は、ごく順当に、実力に相応の輝きを放っていると判断します。

が、しかし、そうは言いつのってみても、本編の物語が終わりをむかえ、エンドロールで披露される『MajiでKoiする5秒前』での川島海荷の「輝き」はやはり例外的なもので、多くの論者がその多幸感を肯定するこのシーンには、理屈抜きの<ただひたすらまぶしい>美しさが溢れています。
そして、自分の感触としては、ここでの感動の“質”は、映画(文化圏)的な、「目的を欠いた純粋な手段」としての《身振り》に由来する、というよりは、どうやら、アイドル文化圏における「ミュージックビデオ」(PV/MV)が齎す愉悦のありようと、正確に同じものだと感じられます。唯物論的な不断の更新としての輝き(=映画)ではなく、文脈からの逸脱が文脈依存でもある戯れとしての輝き(=アイドル)。

(つづく)
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